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大切な人
大切な人 第31話
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最近覚えた気持ちよさを知らせる身体に心臓のドキドキは一層激しさを増した。
(このままだと、虎君に気づかれちゃうっ)
恥ずかしい身体の変化を、僕はまだ虎君に知られたくない。いやらしい奴だと思われたくない。
そう焦る僕は何とかバレないようにと身を捩った。けどそれが凄く不自然な動きだということは僕も分かってるし、虎君も気づいているのだろう。
唇から僕を愛してくれる虎君が、離れて行ってしまったから。
(虎君……)
離れた唇。僕は虎君の舌をまだ求めるように口を開いたままで、僕の舌と虎君の舌を透明な糸が繋いでいてとてもいやらしい気持ちになってしまう。
「……後悔、した?」
「してない……」
ぎゅっと抱きしめてくれる虎君の顔は優しい笑顔。僕が後悔していないって分かってて聞いてきたんだ。
意地悪な虎君。でも、そんな虎君も大好きだと思うから、愛とは偉大だと思う。
僕は身体の異変を隠しながらも虎君にひっつけば、虎君は僕の額にキスを落とすだけで抱きしめてはくれなかった。
「虎君……?」
「ごめん。今ちょっと、ヤバい……」
僕を引き離そうとする腕に不安を覚えるのは当然。
眉を下げ、あんなキスをしておいてどうして……? と涙目のまま訴えれば、虎君は僕の肩に手を乗せそのまま項垂れて謝ってくる。
(どうして謝るの? 僕とのキス、嫌だったの?)
まさか、僕が気持ちよくなってしまったことに気づいたから……?
青ざめる僕。虎君はそんな僕に気づいていないながらも安心する言葉をくれた。
「治まるまで待って。……今これ以上くっつかれたら、葵を傷つけそうなんだ……」
「? どういうこと……?」
「ん……、こういう事……」
尋ねた僕に、虎君は困ったような顔をして見せる。でも、僕が不安に泣かないようにちゃんと教えてくれた。
虎君は視線を下げてみせ、僕にも視線を下げるようにと言っているようだった。
促されるがまま視線を下げれば、僕は虎君の身体の異変を知ることになる。
月明かりと廊下の僅かな光しかないけれど、虎君の下肢が不自然にもりあがっている気がした。
その様子を見た僕は、カッと顔が赤くなったことを熱で知る。
狼狽えて言葉にならない声で虎君を見上げれば、苦し気に笑う虎君から「顔、真っ赤だぞ」と頬っぺたを撫でられた。
「だ、だって……、だってっ」
「うん。分かってるよ。……ごめんな? すぐ治まるから、怖がらないで……?」
口をパクパクさせていれば、無理に喋ろうとしなくていいと唇に指を添えてくる虎君。
その指がいつもよりも熱っぽいと感じるのは、気のせいじゃない。
虎君は、僕とのキスにエッチな気持ちになったんだから……。
(どうしよう……っ、嬉しいっ……)
僕も虎君と一緒で、エッチなキスにいやらしい気持ちになっちゃった。
それを恥ずかしいと思ったのは、虎君と違うと思ったから。
でも、虎君も一緒だと分かったら、いやらしい気持ちになっても恥ずかしいけど嬉しいと思ってしまう。
僕は何とかこの気持ちを伝えたいと思う。
だって、虎君は僕もそう言う気持ちになってるって知らないから。
だから僕が『怖がってる』って思っちゃうんだ。
「虎君っ、僕、怖くないよっ……!」
僕の唇に触れる虎君手を握りしめ、必死に伝える。虎君の気持ち、嬉しいよ。と。僕も虎君とキスして同じ気持ちになってるよ。と……。
「! 今そんなこと言うなよっ……」
「だって、言わないと虎君誤解するでしょっ?」
困ったような顔をする虎君に食い下がって詰め寄る僕。
虎君とすれ違うのはもう二度と嫌だから、だから恥ずかしくてもちゃんと伝えないと。
必死な僕に、虎君は頭を抱える。
けど次の瞬間、ぎゅっと力強く抱きしめられた。
「葵、愛してるっ」
感極まったような声が耳元に聞こえて、僕の気持ちも溢れちゃうのは仕方ない。
(このままだと、虎君に気づかれちゃうっ)
恥ずかしい身体の変化を、僕はまだ虎君に知られたくない。いやらしい奴だと思われたくない。
そう焦る僕は何とかバレないようにと身を捩った。けどそれが凄く不自然な動きだということは僕も分かってるし、虎君も気づいているのだろう。
唇から僕を愛してくれる虎君が、離れて行ってしまったから。
(虎君……)
離れた唇。僕は虎君の舌をまだ求めるように口を開いたままで、僕の舌と虎君の舌を透明な糸が繋いでいてとてもいやらしい気持ちになってしまう。
「……後悔、した?」
「してない……」
ぎゅっと抱きしめてくれる虎君の顔は優しい笑顔。僕が後悔していないって分かってて聞いてきたんだ。
意地悪な虎君。でも、そんな虎君も大好きだと思うから、愛とは偉大だと思う。
僕は身体の異変を隠しながらも虎君にひっつけば、虎君は僕の額にキスを落とすだけで抱きしめてはくれなかった。
「虎君……?」
「ごめん。今ちょっと、ヤバい……」
僕を引き離そうとする腕に不安を覚えるのは当然。
眉を下げ、あんなキスをしておいてどうして……? と涙目のまま訴えれば、虎君は僕の肩に手を乗せそのまま項垂れて謝ってくる。
(どうして謝るの? 僕とのキス、嫌だったの?)
まさか、僕が気持ちよくなってしまったことに気づいたから……?
青ざめる僕。虎君はそんな僕に気づいていないながらも安心する言葉をくれた。
「治まるまで待って。……今これ以上くっつかれたら、葵を傷つけそうなんだ……」
「? どういうこと……?」
「ん……、こういう事……」
尋ねた僕に、虎君は困ったような顔をして見せる。でも、僕が不安に泣かないようにちゃんと教えてくれた。
虎君は視線を下げてみせ、僕にも視線を下げるようにと言っているようだった。
促されるがまま視線を下げれば、僕は虎君の身体の異変を知ることになる。
月明かりと廊下の僅かな光しかないけれど、虎君の下肢が不自然にもりあがっている気がした。
その様子を見た僕は、カッと顔が赤くなったことを熱で知る。
狼狽えて言葉にならない声で虎君を見上げれば、苦し気に笑う虎君から「顔、真っ赤だぞ」と頬っぺたを撫でられた。
「だ、だって……、だってっ」
「うん。分かってるよ。……ごめんな? すぐ治まるから、怖がらないで……?」
口をパクパクさせていれば、無理に喋ろうとしなくていいと唇に指を添えてくる虎君。
その指がいつもよりも熱っぽいと感じるのは、気のせいじゃない。
虎君は、僕とのキスにエッチな気持ちになったんだから……。
(どうしよう……っ、嬉しいっ……)
僕も虎君と一緒で、エッチなキスにいやらしい気持ちになっちゃった。
それを恥ずかしいと思ったのは、虎君と違うと思ったから。
でも、虎君も一緒だと分かったら、いやらしい気持ちになっても恥ずかしいけど嬉しいと思ってしまう。
僕は何とかこの気持ちを伝えたいと思う。
だって、虎君は僕もそう言う気持ちになってるって知らないから。
だから僕が『怖がってる』って思っちゃうんだ。
「虎君っ、僕、怖くないよっ……!」
僕の唇に触れる虎君手を握りしめ、必死に伝える。虎君の気持ち、嬉しいよ。と。僕も虎君とキスして同じ気持ちになってるよ。と……。
「! 今そんなこと言うなよっ……」
「だって、言わないと虎君誤解するでしょっ?」
困ったような顔をする虎君に食い下がって詰め寄る僕。
虎君とすれ違うのはもう二度と嫌だから、だから恥ずかしくてもちゃんと伝えないと。
必死な僕に、虎君は頭を抱える。
けど次の瞬間、ぎゅっと力強く抱きしめられた。
「葵、愛してるっ」
感極まったような声が耳元に聞こえて、僕の気持ちも溢れちゃうのは仕方ない。
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