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恋しい人
恋しい人 第3話
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「ざまあないわね。いい気味よ」
「煩い。お前は黙ってろ」
項垂れていた虎君だけど、姉さんの楽しげな声に低く押し殺した声を返すと初めて見ると言っても過言じゃないぐらい怖い顔をしていた。
「おねーちゃん、とら、おこってるよ?」
「怒ってるわね。これ以上茶化したら物が飛んできそうだからめのうはお姉ちゃんとママを探しに行こうか?」
「! いくー! ママにおひめさまみせるの!」
場にそぐわないほわほわしためのうの声。
姉さんはめのうを抱いたまま立ち上がると、いつの間にかいなくなっていた母さんを探すためにリビングから出て行ってしまった。
残されたのは僕と不機嫌な虎君で、間違いなく僕が怒らせたから気まずい思いをしてしまう。
でも、それでも僕は申し訳ないと思うよりもさっきの言葉を否定して欲しい気持ちが強くて、謝るよりも「どうなの?」って聞いてしまう。
「『どうなの?』って……、俺がどうしてへこんでるか分からない?」
「わ、分かってるけど……」
一転して悲し気な眼差しを向けられ、不覚にも胸がきゅんとしてしまう。そんな場合じゃないって分かってるけど、虎君をまた好きになることを止められない。
(そんな頼りない顔しないでよ……。ドキドキしちゃうじゃない……)
僕は高鳴る心臓の鼓動に胸が苦しくなるのを感じながら、虎君へと手を伸ばした。
「でも、虎君に『違う』って言って欲しいよ……。僕だけって、言って欲しい……」
僕が伸ばした手を虎君は手を伸ばし返し握り締めてくれる。
そして、「狡いぞ」と苦笑い。
「そんな可愛い顔してお願いされたら怒れないだろ?」
「ごめんなさい……」
人差し指をなぞるように触れる虎君の手は、いつもよりも熱い気がした。
僕は少しの不安と大きな期待を込めて頼りない眼差しを向け、僕の欲しい言葉を求めた。
「俺が愛してるのは葵だけだよ。好きなのも、大好きなのも、葵だけだ」
「でも、めのうは『世界一可愛いお姫様』なんでしょ?」
真っ直ぐ僕を見つめて想いを伝えてくれる虎君。
それが嬉しすぎて顔がにやけそうになってしまう僕だけど、少しの引っ掛かりも残しておきたくなくて意地悪な言葉を投げかけてしまう。
いや、虎君がめのうに言った言葉は本心だろうけど、でも、ちゃんと僕は特別な存在だよって言って欲しかったんだ。
「確かにめのうちゃんは世界一可愛いお姫様だけど、俺はお姫様よりも王子様の方が好きだよ」
「……『王子様』って?」
「俺の宝物のことだよ」
「! 『宝物』って何っ?」
ドキドキが止まらない。
僕は焦らす虎君に早くちゃんと言葉にしてよとせっついた。
虎君はそんな僕の手を離すと、椅子から立ち上がり僕の隣に立つとそのまま片膝をついて僕の左手を手に取った。
「俺の宝物は、葵だよ。……葵は俺の世界一可愛い王子様だよ」
「ほ、んとう……?」
「生まれた時から愛してる。……俺は葵を幸せにするためならなんだってするよ」
だから信じて?
そう言って指にキスを落としてくる虎君に、僕は感極まって椅子からずり落ちるように抱き着いてしまう。
「僕も虎君を幸せにするためならなんだってするよっ」
「なら、俺の想いを疑わないでくれよ。……ずっと俺の傍で笑ってて?」
「うんっ……、うんっ……!」
チュッと目尻に落ちてくるキス。
僕は目尻じゃヤダ。と虎君の唇を求めて願う。ちゃんとキスして。と。
「僕のこと一番好きなら、ねぇ」
「そんなこと言われたらキスしないわけにはいかないだろ?」
焦らしちゃヤダとワガママを重ねてしまう僕。
虎君はそんな僕の頬っぺたを両手で包み込むと触れるだけの優しいキスを唇にくれた。
柔らかなキスだけど、僕の唇に吸い付くように触れた虎君の唇は甘くて僕の心を蕩かしてしまう。
ずっとこのままキスしていたい。
そう願ってしまうほど、虎君とのキスが僕は大好きだと思った。
「煩い。お前は黙ってろ」
項垂れていた虎君だけど、姉さんの楽しげな声に低く押し殺した声を返すと初めて見ると言っても過言じゃないぐらい怖い顔をしていた。
「おねーちゃん、とら、おこってるよ?」
「怒ってるわね。これ以上茶化したら物が飛んできそうだからめのうはお姉ちゃんとママを探しに行こうか?」
「! いくー! ママにおひめさまみせるの!」
場にそぐわないほわほわしためのうの声。
姉さんはめのうを抱いたまま立ち上がると、いつの間にかいなくなっていた母さんを探すためにリビングから出て行ってしまった。
残されたのは僕と不機嫌な虎君で、間違いなく僕が怒らせたから気まずい思いをしてしまう。
でも、それでも僕は申し訳ないと思うよりもさっきの言葉を否定して欲しい気持ちが強くて、謝るよりも「どうなの?」って聞いてしまう。
「『どうなの?』って……、俺がどうしてへこんでるか分からない?」
「わ、分かってるけど……」
一転して悲し気な眼差しを向けられ、不覚にも胸がきゅんとしてしまう。そんな場合じゃないって分かってるけど、虎君をまた好きになることを止められない。
(そんな頼りない顔しないでよ……。ドキドキしちゃうじゃない……)
僕は高鳴る心臓の鼓動に胸が苦しくなるのを感じながら、虎君へと手を伸ばした。
「でも、虎君に『違う』って言って欲しいよ……。僕だけって、言って欲しい……」
僕が伸ばした手を虎君は手を伸ばし返し握り締めてくれる。
そして、「狡いぞ」と苦笑い。
「そんな可愛い顔してお願いされたら怒れないだろ?」
「ごめんなさい……」
人差し指をなぞるように触れる虎君の手は、いつもよりも熱い気がした。
僕は少しの不安と大きな期待を込めて頼りない眼差しを向け、僕の欲しい言葉を求めた。
「俺が愛してるのは葵だけだよ。好きなのも、大好きなのも、葵だけだ」
「でも、めのうは『世界一可愛いお姫様』なんでしょ?」
真っ直ぐ僕を見つめて想いを伝えてくれる虎君。
それが嬉しすぎて顔がにやけそうになってしまう僕だけど、少しの引っ掛かりも残しておきたくなくて意地悪な言葉を投げかけてしまう。
いや、虎君がめのうに言った言葉は本心だろうけど、でも、ちゃんと僕は特別な存在だよって言って欲しかったんだ。
「確かにめのうちゃんは世界一可愛いお姫様だけど、俺はお姫様よりも王子様の方が好きだよ」
「……『王子様』って?」
「俺の宝物のことだよ」
「! 『宝物』って何っ?」
ドキドキが止まらない。
僕は焦らす虎君に早くちゃんと言葉にしてよとせっついた。
虎君はそんな僕の手を離すと、椅子から立ち上がり僕の隣に立つとそのまま片膝をついて僕の左手を手に取った。
「俺の宝物は、葵だよ。……葵は俺の世界一可愛い王子様だよ」
「ほ、んとう……?」
「生まれた時から愛してる。……俺は葵を幸せにするためならなんだってするよ」
だから信じて?
そう言って指にキスを落としてくる虎君に、僕は感極まって椅子からずり落ちるように抱き着いてしまう。
「僕も虎君を幸せにするためならなんだってするよっ」
「なら、俺の想いを疑わないでくれよ。……ずっと俺の傍で笑ってて?」
「うんっ……、うんっ……!」
チュッと目尻に落ちてくるキス。
僕は目尻じゃヤダ。と虎君の唇を求めて願う。ちゃんとキスして。と。
「僕のこと一番好きなら、ねぇ」
「そんなこと言われたらキスしないわけにはいかないだろ?」
焦らしちゃヤダとワガママを重ねてしまう僕。
虎君はそんな僕の頬っぺたを両手で包み込むと触れるだけの優しいキスを唇にくれた。
柔らかなキスだけど、僕の唇に吸い付くように触れた虎君の唇は甘くて僕の心を蕩かしてしまう。
ずっとこのままキスしていたい。
そう願ってしまうほど、虎君とのキスが僕は大好きだと思った。
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