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恋しい人
恋しい人 第155話
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受け止めきれない程の愛を与えられ、募るのは愛しさ。何度『大好き』と伝えても溢れる一方の想いに、虎君の傍にいたくて、虎君と愛し合いたくて堪らなくなってしまう。
沢山もらう触れるだけのキスは、与えられれば与えられるだけ僕から理性を削っていった。
「虎君、虎君……愛してる……」
「ああ……。俺も愛してるよ……」
触れるだけのキスじゃもう足りない。もっと深く触れて欲しい。もっと、もっと深く……。
焦らすようなキスに我慢できず自分から唇を開いて誘ってしまう僕。エッチしたくて堪らない自分を知られそうで恥ずかしかったけど、実際その通りだから仕方ない。
でも、虎君は僕の誘いにはのらず、触れるだけのキスを繰り返すだけ。身体が熱くなってるのは僕だけじゃないはずなのに、これ以上は進まないと決して踏み込んではくれなかった。
「なんで……? ねぇ、……どうして……?」
「言っただろ? 『葵を傷つけたくない』って……」
だからそんな可愛く誘わないで?
虎君が我慢してるってことは唇からも伝わって来てる。キスを落とす度名残惜しそうに離れるそれに、焦がれているのは僕だから。
愛して欲しい僕と愛し合う行為で僕を傷つけたくないと言う虎君。
僕が傷ついても良いと言っても、虎君はできないと悲し気に笑って願いを聞き入れてくれることは無い。
(そんな……僕はずっと虎君とエッチできないってこと……?)
こんなに恋焦がれているのに、こんなに愛されたいと望んでいるのに、この先ずっと深く愛し合えないなんてそんなの辛すぎる。
身体を重ねることだけが愛じゃないってことは分かってるけど、でも、愛し合ってるからこそ触れたいし触れられたいとも思うわけで……。
(僕が女の子なら、ちゃんと虎君のこと受け入れられたのに……)
身体の構造的に男の人を受け入れる事ができる女の子の身体がこの時ほど羨ましいと思ったことは無い。
虎君に好きになってもらうために『女の子になりたい』と願ったことはあったけど、その時よりも今の方がずっとずっと強い気持ちで女の子に生まれたかったと思っていた。
「ごめんね……僕が、男だから……」
「え?」
「僕が女の子だったら、ちゃんと虎君とエッチできたのに」
なんで僕、男なんだろう……。
そう言って悲壮感を滲ませていれば、突然ほっぺたに走る痛み。虎君が強い力でほっぺたを包み込んできたからだった。
「い、痛い……」
本当なら『酷い!』と怒るところだけど、僕より先に何故か虎君がムッとしていたから怒るに怒れなかった。
「よかった。俺が怒ってることは分かってくれたみたいだな」
「ご、ごめんなさい……。でも、なんで怒ってるの……?」
「分からない?」
「ごめんなさい……」
素直に謝れば虎君は諦めを含んだように息を吐き、「10分の1どころか100分の1も伝わってない気がしてきた」と呟いた。
一瞬何の話か分からなかったけど、昨日喋っていた内容を思い出し、これは『虎君の愛』の話だということは理解できた。
暗に虎君の愛は僕に全く伝わっていないと思われたんだと分かって心が痛くなる。
虎君に失望されたショックで、謝罪の言葉を口に出そうにも喉奥に引っかかって出てこない。
でも、それでも何とか謝らないとと必死に声を絞り出せば、それは掠れ、震え、実に情けない音だった。
「形だけの『ごめん』は聞きたくない」
「! ご、ごめっ」
拒絶するような冷たい声。僕はどうしていいか分からず、また謝ろうとしてしまった。
慌てて自分の口を塞ぎ、縋る思いで虎君を見つめれば、不機嫌な面持ちだった虎君は表情を変えず僕を見下ろしていて……。
(こ、怖い……。怖いよぉ……)
さっきまでの甘い雰囲気が嘘のように心が冷え切って、今にも凍り付きそうだ。
虎君の愛を失うかもしれない。その恐怖で、僕の頭がいっぱいだった……。
永遠に続くと思っていた幸せが消えるのは、驚くほど一瞬のことなのかもしれない。
(やだ……虎君、やだよぉ……僕のこと、ずっと好きでいてよぉ……)
絶望のあまり身体が震え、言葉にできない苦しみに大粒の涙が左目からボロっと零れ落ちるのを感じた。
今此処で泣くのは卑怯だと分かっていたけど、我慢できなかった……。
「……俺は、葵が男だから好きになったわけじゃないよ」
「とらく……」
「俺は『葵』だから愛してるんだ。男とか女とか、そんなこと正直どうでもいい。……受け入れて欲しいからセックスしたいわけじゃなくて、葵を愛したいから、俺がどれほど愛してるか少しでも伝えたいから、だからセックスしたいんだ」
だからさっきの言葉を取り消して欲しい。
そう言って虎君は大きな手で僕の涙を拭い、「心から愛してるから、許せない」と悲し気に笑った。
沢山もらう触れるだけのキスは、与えられれば与えられるだけ僕から理性を削っていった。
「虎君、虎君……愛してる……」
「ああ……。俺も愛してるよ……」
触れるだけのキスじゃもう足りない。もっと深く触れて欲しい。もっと、もっと深く……。
焦らすようなキスに我慢できず自分から唇を開いて誘ってしまう僕。エッチしたくて堪らない自分を知られそうで恥ずかしかったけど、実際その通りだから仕方ない。
でも、虎君は僕の誘いにはのらず、触れるだけのキスを繰り返すだけ。身体が熱くなってるのは僕だけじゃないはずなのに、これ以上は進まないと決して踏み込んではくれなかった。
「なんで……? ねぇ、……どうして……?」
「言っただろ? 『葵を傷つけたくない』って……」
だからそんな可愛く誘わないで?
虎君が我慢してるってことは唇からも伝わって来てる。キスを落とす度名残惜しそうに離れるそれに、焦がれているのは僕だから。
愛して欲しい僕と愛し合う行為で僕を傷つけたくないと言う虎君。
僕が傷ついても良いと言っても、虎君はできないと悲し気に笑って願いを聞き入れてくれることは無い。
(そんな……僕はずっと虎君とエッチできないってこと……?)
こんなに恋焦がれているのに、こんなに愛されたいと望んでいるのに、この先ずっと深く愛し合えないなんてそんなの辛すぎる。
身体を重ねることだけが愛じゃないってことは分かってるけど、でも、愛し合ってるからこそ触れたいし触れられたいとも思うわけで……。
(僕が女の子なら、ちゃんと虎君のこと受け入れられたのに……)
身体の構造的に男の人を受け入れる事ができる女の子の身体がこの時ほど羨ましいと思ったことは無い。
虎君に好きになってもらうために『女の子になりたい』と願ったことはあったけど、その時よりも今の方がずっとずっと強い気持ちで女の子に生まれたかったと思っていた。
「ごめんね……僕が、男だから……」
「え?」
「僕が女の子だったら、ちゃんと虎君とエッチできたのに」
なんで僕、男なんだろう……。
そう言って悲壮感を滲ませていれば、突然ほっぺたに走る痛み。虎君が強い力でほっぺたを包み込んできたからだった。
「い、痛い……」
本当なら『酷い!』と怒るところだけど、僕より先に何故か虎君がムッとしていたから怒るに怒れなかった。
「よかった。俺が怒ってることは分かってくれたみたいだな」
「ご、ごめんなさい……。でも、なんで怒ってるの……?」
「分からない?」
「ごめんなさい……」
素直に謝れば虎君は諦めを含んだように息を吐き、「10分の1どころか100分の1も伝わってない気がしてきた」と呟いた。
一瞬何の話か分からなかったけど、昨日喋っていた内容を思い出し、これは『虎君の愛』の話だということは理解できた。
暗に虎君の愛は僕に全く伝わっていないと思われたんだと分かって心が痛くなる。
虎君に失望されたショックで、謝罪の言葉を口に出そうにも喉奥に引っかかって出てこない。
でも、それでも何とか謝らないとと必死に声を絞り出せば、それは掠れ、震え、実に情けない音だった。
「形だけの『ごめん』は聞きたくない」
「! ご、ごめっ」
拒絶するような冷たい声。僕はどうしていいか分からず、また謝ろうとしてしまった。
慌てて自分の口を塞ぎ、縋る思いで虎君を見つめれば、不機嫌な面持ちだった虎君は表情を変えず僕を見下ろしていて……。
(こ、怖い……。怖いよぉ……)
さっきまでの甘い雰囲気が嘘のように心が冷え切って、今にも凍り付きそうだ。
虎君の愛を失うかもしれない。その恐怖で、僕の頭がいっぱいだった……。
永遠に続くと思っていた幸せが消えるのは、驚くほど一瞬のことなのかもしれない。
(やだ……虎君、やだよぉ……僕のこと、ずっと好きでいてよぉ……)
絶望のあまり身体が震え、言葉にできない苦しみに大粒の涙が左目からボロっと零れ落ちるのを感じた。
今此処で泣くのは卑怯だと分かっていたけど、我慢できなかった……。
「……俺は、葵が男だから好きになったわけじゃないよ」
「とらく……」
「俺は『葵』だから愛してるんだ。男とか女とか、そんなこと正直どうでもいい。……受け入れて欲しいからセックスしたいわけじゃなくて、葵を愛したいから、俺がどれほど愛してるか少しでも伝えたいから、だからセックスしたいんだ」
だからさっきの言葉を取り消して欲しい。
そう言って虎君は大きな手で僕の涙を拭い、「心から愛してるから、許せない」と悲し気に笑った。
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