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初めての人
初めての人 第1話
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ふわふわと幸せな気持ちに満たされていた僕の耳に届くシャワーの音。
夢現なままゆっくりと目を開ければ漸く見慣れてきた天上が見え、幸せな気持ちのまま寝返りを打って枕に顔を埋めた。
息を吸い込めば胸を満たす安心する匂い。それは僕の大好きな人、虎君の匂いだ。
心が満たされているのを感じ、幸せだと自然と零れる笑み。
まだ覚醒していない頭で枕を抱き締めれば、虎君に抱き着いているような錯覚に陥れてこのまままた眠ったらこの上ないほど幸せだろうと思った。
(とらくん、すきぃ……)
ぎゅーっと枕に抱き着き、満たされた心で想いを呟く。すると聞こえないはずの『愛してるよ』って声が頭の中で聞こえて、嬉しすぎて頬が緩んだ。
寝惚けているつもりはないけど、きっとこれは寝惚けていると言われる状態。このまま時間が過ぎれば、物の数分でまた眠りについてしまうだろう状態だ。
でも、僕が再び眠りについてしまう前に聞こえてくる足音。気が付けばさっきまで遠くで聞こえていたシャワーの音は止んでいて、足音はすぐ傍まで迫っていた。
「葵、朝だよ」
囁くような甘く低い声と共にほっぺたに落ちてくる温もり。
温もりが離れたと思えば、今度は同じ場所を擽るように別のぬくもりが触れてきた。
「ん……」
「葵、起きて」
「んん……」
くすぐったいと訴えるように声を漏らせば、優しい笑い声。愛しむようなその音に瞼をゆっくりと持ち上げれば、大好きな笑顔を見ることができた。
「とりゃく……、おはょ……」
「おはよう、葵」
さっきまで幸せで満たされていると思っていたけど、今はさっきよりもずっとずっと幸せで『満たされる』って言葉がゲシュタルト崩壊しそうだ。
ぼんやりとしながらも幸せ過ぎて自然と零れる笑み。虎君はそんな僕に「寝惚けてる葵も可愛い」と額にキスを落としてくる。
唇が離れる際に零れるちゅっという音。その音にもう一度虎君を呼べば、次は僕が望んだ通り唇にキスをくれた。
「まだ眠い?」
「ん……、ねむぃ……」
「だよな。そんな顔してる」
可愛い可愛いと僕の頭を撫でてくる虎君。大きな手で優しく撫でられたら安心しきって本当にまた寝ちゃいそうだ。
昨日までならこのまま二度寝したいと言えば虎君はいいよと笑ってくれた。自分も少し休むと言ってベッドに入り、抱きしめてくれていた。
でもそれは昨日までの話で、今日からは二度寝を許しては貰えない。
「葵、寝ちゃダメだよ。明後日から新学期だからもう二度寝しないって言ってだろ?」
「うぅ……そ、だけどぉ……」
「こら、ダメだって。『絶対起こして』って言ったのは葵だぞ」
僕を起こすために頭を撫でていた手を退けてしまう虎君。僕は離れてしまったその手を求めて掴むと、ぎゅっと手を握り再び眠りにつこうとした。
虎君はそんな僕に苦笑を漏らすと、僕が握っていた手と反対の手で僕の鼻を摘まんでくる。
「そんな可愛い誘惑の仕方、何処で覚えてきたんだ?」
「んん、やめてよぉ」
「だーめ。葵が起きるまでやめてあげない」
早く起きないと窒息するぞ?
そんな笑い声を掛けてくる虎君に僕は愚図りながらも仕方ないから二度寝の誘惑を振り切り、目を開ける。
何度か瞬きを繰り返せば起きる意志が伝わったのか、虎君は鼻を摘まんでいた手を放し、ほっぺたを指の背で撫でてきた。
「おはよう。寝坊助さん」
そう言って満面の笑みを向けてくる虎君。その笑顔が眩しすぎて、こんなカッコいい人が僕のことを大好きだなんて信じられないと思ってしまう。
「おはよう、虎君」
「よし。呂律もしっかりしてるな」
「虎君が意地悪するから目が醒めちゃったんだもん」
上体を起こせば、偉い偉いと褒められる。大きな手で頭を撫でてくれるのは嬉しいけど、まるで小さな子どもをあやしてるような雰囲気にちょっぴり不満を覚えてしまう。
でも、ちゅっと髪にキスを落とした後に向けられる恋人の顔に不満はすぐに無くなっちゃうから僕って単純だと思う。
「朝飯用意しておくから顔洗っておいで」
「うん。分かった」
僕の返事に虎君は立ち上がり、キッチンへと向かうため足を進める。と、寝室を出る直前、振り返った虎君はまだベッドにいる僕に着替えたらカーテンを開けといてとお願いしてきた。
僕はそれに分かったと頷くんだけど、何故か着替える前に開けちゃダメだと釘を刺されてしまった。
「? なんで着替える前に開けちゃダメなの?」
虎君のお父さんとお母さんは芸能人だし、誰かが窓の外でこちらの様子を窺ってると考える気持ちは分からないでもない。でも、警戒してるならそもそもカーテンを開けたりしない気がする。
(あ、まさか僕がカーテンを開けっぱなしで着替えると思ってる?)
女の子じゃないけど、流石にカーテンを開け放して着替えたりしないよ?
男でも羞恥心はあるんだから大丈夫だと心配性の虎君を笑えば、そこは心配してないと苦笑いが返ってきた。
「ならなんで?」
「その格好の葵を見ていいのは俺だけだからだよ」
そう言った虎君の言葉が理解できず、僕は首を傾げてしまう。すると虎君は理解できていない僕が今着ているのは誰の服? と尋ねてきた。
「え? 虎君のだけど……」
「だろ?」
「えぇ? 分かんないよ……」
はっきり言ってくれないと分からないよ!
そう言って拗ねそうになる僕に、虎君は苦笑交じりに「だから」とハッキリ言ってくれた。
「可愛い恋人が自分の服を着てる姿なんて誰にも見せたくないに決まってるだろ?」
と。
夢現なままゆっくりと目を開ければ漸く見慣れてきた天上が見え、幸せな気持ちのまま寝返りを打って枕に顔を埋めた。
息を吸い込めば胸を満たす安心する匂い。それは僕の大好きな人、虎君の匂いだ。
心が満たされているのを感じ、幸せだと自然と零れる笑み。
まだ覚醒していない頭で枕を抱き締めれば、虎君に抱き着いているような錯覚に陥れてこのまままた眠ったらこの上ないほど幸せだろうと思った。
(とらくん、すきぃ……)
ぎゅーっと枕に抱き着き、満たされた心で想いを呟く。すると聞こえないはずの『愛してるよ』って声が頭の中で聞こえて、嬉しすぎて頬が緩んだ。
寝惚けているつもりはないけど、きっとこれは寝惚けていると言われる状態。このまま時間が過ぎれば、物の数分でまた眠りについてしまうだろう状態だ。
でも、僕が再び眠りについてしまう前に聞こえてくる足音。気が付けばさっきまで遠くで聞こえていたシャワーの音は止んでいて、足音はすぐ傍まで迫っていた。
「葵、朝だよ」
囁くような甘く低い声と共にほっぺたに落ちてくる温もり。
温もりが離れたと思えば、今度は同じ場所を擽るように別のぬくもりが触れてきた。
「ん……」
「葵、起きて」
「んん……」
くすぐったいと訴えるように声を漏らせば、優しい笑い声。愛しむようなその音に瞼をゆっくりと持ち上げれば、大好きな笑顔を見ることができた。
「とりゃく……、おはょ……」
「おはよう、葵」
さっきまで幸せで満たされていると思っていたけど、今はさっきよりもずっとずっと幸せで『満たされる』って言葉がゲシュタルト崩壊しそうだ。
ぼんやりとしながらも幸せ過ぎて自然と零れる笑み。虎君はそんな僕に「寝惚けてる葵も可愛い」と額にキスを落としてくる。
唇が離れる際に零れるちゅっという音。その音にもう一度虎君を呼べば、次は僕が望んだ通り唇にキスをくれた。
「まだ眠い?」
「ん……、ねむぃ……」
「だよな。そんな顔してる」
可愛い可愛いと僕の頭を撫でてくる虎君。大きな手で優しく撫でられたら安心しきって本当にまた寝ちゃいそうだ。
昨日までならこのまま二度寝したいと言えば虎君はいいよと笑ってくれた。自分も少し休むと言ってベッドに入り、抱きしめてくれていた。
でもそれは昨日までの話で、今日からは二度寝を許しては貰えない。
「葵、寝ちゃダメだよ。明後日から新学期だからもう二度寝しないって言ってだろ?」
「うぅ……そ、だけどぉ……」
「こら、ダメだって。『絶対起こして』って言ったのは葵だぞ」
僕を起こすために頭を撫でていた手を退けてしまう虎君。僕は離れてしまったその手を求めて掴むと、ぎゅっと手を握り再び眠りにつこうとした。
虎君はそんな僕に苦笑を漏らすと、僕が握っていた手と反対の手で僕の鼻を摘まんでくる。
「そんな可愛い誘惑の仕方、何処で覚えてきたんだ?」
「んん、やめてよぉ」
「だーめ。葵が起きるまでやめてあげない」
早く起きないと窒息するぞ?
そんな笑い声を掛けてくる虎君に僕は愚図りながらも仕方ないから二度寝の誘惑を振り切り、目を開ける。
何度か瞬きを繰り返せば起きる意志が伝わったのか、虎君は鼻を摘まんでいた手を放し、ほっぺたを指の背で撫でてきた。
「おはよう。寝坊助さん」
そう言って満面の笑みを向けてくる虎君。その笑顔が眩しすぎて、こんなカッコいい人が僕のことを大好きだなんて信じられないと思ってしまう。
「おはよう、虎君」
「よし。呂律もしっかりしてるな」
「虎君が意地悪するから目が醒めちゃったんだもん」
上体を起こせば、偉い偉いと褒められる。大きな手で頭を撫でてくれるのは嬉しいけど、まるで小さな子どもをあやしてるような雰囲気にちょっぴり不満を覚えてしまう。
でも、ちゅっと髪にキスを落とした後に向けられる恋人の顔に不満はすぐに無くなっちゃうから僕って単純だと思う。
「朝飯用意しておくから顔洗っておいで」
「うん。分かった」
僕の返事に虎君は立ち上がり、キッチンへと向かうため足を進める。と、寝室を出る直前、振り返った虎君はまだベッドにいる僕に着替えたらカーテンを開けといてとお願いしてきた。
僕はそれに分かったと頷くんだけど、何故か着替える前に開けちゃダメだと釘を刺されてしまった。
「? なんで着替える前に開けちゃダメなの?」
虎君のお父さんとお母さんは芸能人だし、誰かが窓の外でこちらの様子を窺ってると考える気持ちは分からないでもない。でも、警戒してるならそもそもカーテンを開けたりしない気がする。
(あ、まさか僕がカーテンを開けっぱなしで着替えると思ってる?)
女の子じゃないけど、流石にカーテンを開け放して着替えたりしないよ?
男でも羞恥心はあるんだから大丈夫だと心配性の虎君を笑えば、そこは心配してないと苦笑いが返ってきた。
「ならなんで?」
「その格好の葵を見ていいのは俺だけだからだよ」
そう言った虎君の言葉が理解できず、僕は首を傾げてしまう。すると虎君は理解できていない僕が今着ているのは誰の服? と尋ねてきた。
「え? 虎君のだけど……」
「だろ?」
「えぇ? 分かんないよ……」
はっきり言ってくれないと分からないよ!
そう言って拗ねそうになる僕に、虎君は苦笑交じりに「だから」とハッキリ言ってくれた。
「可愛い恋人が自分の服を着てる姿なんて誰にも見せたくないに決まってるだろ?」
と。
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