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my treasure
my treasure 第6話
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暴走気味だった『愛』と言う名の『狂気』は葵が傍に居ないことで落ち着きを取り戻し、冷静になった虎は自分の理性の脆さに頭を抱えその場にしゃがみ込んだ。
校舎からは見えないとはいえ部外者が正門前に居座るべきではないということは理解しているが、しゃがみ込んだままため息を吐く虎。斗弛弥が隣に立って煙草に火を点けたため話があるのだろうと判断したためだ。
斗弛弥は煙草をふかして白い煙を吐ききった後、隣で自己嫌悪に苛まれている息子のような存在に薄笑いを浮かべて「いつもの仮面はどうした?」と尋ねてやった。
「此処で初めて見たぞ」
「何がですか?」
「『男』の顔、してただろ? いつもの『兄貴面』どうしたんだ?」
指摘に顔を上げればにやりと意地悪い笑みを浮かべた斗弛弥と目が合った。
その『全て分かっている』と言わんばかりの表情に、この人は一体何処まで知っているんだとある種の恐怖を覚えてしまう。
虎は一瞬誤魔化そうかと考えたが、斗弛弥を欺けたことがあったか? と自分自身に問いかけた。
「葵とヤったのか?」
「! ……分かってるなら確認しないでください」
「睨むな睨むな。ただの事実確認だ。お前の大事な葵の体調を注意するべきかどうか判断したかっただけだ」
養護教諭として。と斗弛弥は言うが、楽し気に笑っている姿を見ればそれが建前だということは一目瞭然だった。
虎は再び頭を抱え「よろしくお願いします」と喉奥から言葉を絞り出す。茶化してくる斗弛弥には腹立たしさを覚えるが、彼の医師としての腕は信頼しているから葵の為に文句は飲み込んだ。
「痛み止めは何時飲ませた?」
本当に優秀な医師だと内心驚きながらも虎は「2時間前です」と答えた。
男女のセックスでは女性の方が体への負担が大きいと言うが、男同士のセックスでも受け身であるボトムの方が負担が大きい。そして体の構造的に女性よりもその負荷ははるかに大きく、翌日身動きが取れないこともあるとも聞いていた。
おかげで葵が違和感と痛みを訴えた時に冷静に対応することができ、常備しておいた痛み止めを服用することで葵の両親が懸念していた『学校を休ませる』事態は避けられた。
薬が効いて痛みは随分マシになったと恥ずかしそうに笑っていた葵を思い出した虎は、その後に続けられた言葉も一緒に思い出して頬が緩みそうになってしまった。
(ダメだ。気を抜くとにやける……)
平静を装うために咳払いで誤魔化す虎だが、斗弛弥にはそれすらもお見通しなのか「反芻は家に帰ってからにしろ」と頭を小突かれてしまった。
「エロ餓鬼が」
「すみません」
「薬の効力が切れないことを祈っててやれ。服用間隔が短いと過剰摂取になりかねないからな」
「分かってます。痛みが出てきたら薬を飲む前に保健室に行くよう言ってあるんでよろしくお願いします」
頼みながらも不機嫌そうな虎に斗弛弥は「その面に免じて何も聞かず休ませてやるよ」と言いながら楽し気に笑った。
虎がどれほど葵を想っているか昔から知っているからこそ今こんなやり取りができるようになってよかったと柄にもなく親心を抱く斗弛弥の表情は珍しく優しいものだ。尤も、不貞腐れている虎はそれには気付かなかったが。
斗弛弥は携帯灰皿に吸殻を片すと時間を確認し、そろそろ仕事に戻ることを伝えてきた。
口では『面倒臭い』と言いながらも実は仕事熱心で生徒一人一人に真摯に向き合っていることを知っている虎は相変わらず天邪鬼だなと思った。思っただけで口にも態度にも出さなかったが、「言いたいことは素直に言っていいぞ」なんて言われてしまうから本当に怖い人だ。
「本当は人の心が読めるんでしょう?」
「そんな力があるなら今頃餓鬼相手にセンセイなんてやるわけないだろうが」
偉大な生物学者の孫がそんな非科学的な話をするなと苦笑され、虎はその言葉に祖母は関係ないでしょうと同じ笑みを返した。
非科学的な能力の存在を否定するわけではないが、信じているわけでもない。当然、先の言葉はただの軽口だ。
「ほら、さっさと帰れ。いつまでも敷地内に部外者が居ると他の先生が首を突っ込んでくるぞ」
「分かってます。……本当に葵のこと頼みますよ?」
「そんなに心配するならそもそも平日に盛るんじゃねぇ」
「! それは、分かってます……」
エロ餓鬼。と再び詰られ足蹴にされる。
まったくもってその通りだから言い訳のしようもなくて素直に己の非を認める虎は立ち上がると今一度「お願いします」と頭を下げた。
「分かった分かった」
いいからさっさと帰れと言わんばかりにあしらわれ、これ以上しつこく頼めば怒りを買ってしまうだけだと判断した虎は言われるがまま路肩に停車してある愛車へと足を進んた。
だが、いざ運転席に乗り込もうとした時、斗弛弥に「虎」と呼び止められた。
何故呼び止められたのかと訝しく思いながらも手を止め斗弛弥を振り返れば高校教師らしからぬ下世話な言葉がかけられて、ついつい感情的になってしまった。
「童貞卒業おめでとう。今度盛大に祝ってやるよ」
「! 結構です!!」
「遠慮するな。ちゃんと絃凉達にも報告しといてやるから」
「ちょ! マジで止めてくださいよ!?」
「あいつらも息子の成長に大喜びするさ」
「斗弛弥さん!!」
顔を赤くして声を荒げる虎に愉快だと笑いながら斗弛弥は「気を付けて帰れよ」と言葉を残し校内へと戻っていった。
校舎からは見えないとはいえ部外者が正門前に居座るべきではないということは理解しているが、しゃがみ込んだままため息を吐く虎。斗弛弥が隣に立って煙草に火を点けたため話があるのだろうと判断したためだ。
斗弛弥は煙草をふかして白い煙を吐ききった後、隣で自己嫌悪に苛まれている息子のような存在に薄笑いを浮かべて「いつもの仮面はどうした?」と尋ねてやった。
「此処で初めて見たぞ」
「何がですか?」
「『男』の顔、してただろ? いつもの『兄貴面』どうしたんだ?」
指摘に顔を上げればにやりと意地悪い笑みを浮かべた斗弛弥と目が合った。
その『全て分かっている』と言わんばかりの表情に、この人は一体何処まで知っているんだとある種の恐怖を覚えてしまう。
虎は一瞬誤魔化そうかと考えたが、斗弛弥を欺けたことがあったか? と自分自身に問いかけた。
「葵とヤったのか?」
「! ……分かってるなら確認しないでください」
「睨むな睨むな。ただの事実確認だ。お前の大事な葵の体調を注意するべきかどうか判断したかっただけだ」
養護教諭として。と斗弛弥は言うが、楽し気に笑っている姿を見ればそれが建前だということは一目瞭然だった。
虎は再び頭を抱え「よろしくお願いします」と喉奥から言葉を絞り出す。茶化してくる斗弛弥には腹立たしさを覚えるが、彼の医師としての腕は信頼しているから葵の為に文句は飲み込んだ。
「痛み止めは何時飲ませた?」
本当に優秀な医師だと内心驚きながらも虎は「2時間前です」と答えた。
男女のセックスでは女性の方が体への負担が大きいと言うが、男同士のセックスでも受け身であるボトムの方が負担が大きい。そして体の構造的に女性よりもその負荷ははるかに大きく、翌日身動きが取れないこともあるとも聞いていた。
おかげで葵が違和感と痛みを訴えた時に冷静に対応することができ、常備しておいた痛み止めを服用することで葵の両親が懸念していた『学校を休ませる』事態は避けられた。
薬が効いて痛みは随分マシになったと恥ずかしそうに笑っていた葵を思い出した虎は、その後に続けられた言葉も一緒に思い出して頬が緩みそうになってしまった。
(ダメだ。気を抜くとにやける……)
平静を装うために咳払いで誤魔化す虎だが、斗弛弥にはそれすらもお見通しなのか「反芻は家に帰ってからにしろ」と頭を小突かれてしまった。
「エロ餓鬼が」
「すみません」
「薬の効力が切れないことを祈っててやれ。服用間隔が短いと過剰摂取になりかねないからな」
「分かってます。痛みが出てきたら薬を飲む前に保健室に行くよう言ってあるんでよろしくお願いします」
頼みながらも不機嫌そうな虎に斗弛弥は「その面に免じて何も聞かず休ませてやるよ」と言いながら楽し気に笑った。
虎がどれほど葵を想っているか昔から知っているからこそ今こんなやり取りができるようになってよかったと柄にもなく親心を抱く斗弛弥の表情は珍しく優しいものだ。尤も、不貞腐れている虎はそれには気付かなかったが。
斗弛弥は携帯灰皿に吸殻を片すと時間を確認し、そろそろ仕事に戻ることを伝えてきた。
口では『面倒臭い』と言いながらも実は仕事熱心で生徒一人一人に真摯に向き合っていることを知っている虎は相変わらず天邪鬼だなと思った。思っただけで口にも態度にも出さなかったが、「言いたいことは素直に言っていいぞ」なんて言われてしまうから本当に怖い人だ。
「本当は人の心が読めるんでしょう?」
「そんな力があるなら今頃餓鬼相手にセンセイなんてやるわけないだろうが」
偉大な生物学者の孫がそんな非科学的な話をするなと苦笑され、虎はその言葉に祖母は関係ないでしょうと同じ笑みを返した。
非科学的な能力の存在を否定するわけではないが、信じているわけでもない。当然、先の言葉はただの軽口だ。
「ほら、さっさと帰れ。いつまでも敷地内に部外者が居ると他の先生が首を突っ込んでくるぞ」
「分かってます。……本当に葵のこと頼みますよ?」
「そんなに心配するならそもそも平日に盛るんじゃねぇ」
「! それは、分かってます……」
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「分かった分かった」
いいからさっさと帰れと言わんばかりにあしらわれ、これ以上しつこく頼めば怒りを買ってしまうだけだと判断した虎は言われるがまま路肩に停車してある愛車へと足を進んた。
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「遠慮するな。ちゃんと絃凉達にも報告しといてやるから」
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