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第26話 ポーカー対決は大洪水らしい
しおりを挟む神経衰弱の噂は瞬く間に町中に広がった。やっぱりこの世界の娯楽が少ないからかな。
私が置いてきたトランプを模して作ったカードで子供達も遊んでいる光景をよく見る。
そしてこの間ギルドから私宛ての依頼がありトランプを5組ほど納品した。
今やギルド内は小さな子供から屈強な体の冒険者さん、現役を引退した元冒険者のおじいさんまで文字通り老若男女が暇な時間を見つけては神経衰弱で遊んでいる。
「神経衰弱すごい人気っすね!」
「そうですね…」
「危険な依頼も多いっすからね、お酒以外に楽しみがある事は良い事っすよ」
みんなが楽しんでくれるのは嬉しいけどまさかここまで広がるとは思ってなかった。
しかし神経衰弱だけがトランプじゃないんだよね。
「リンさん、実はトランプってまだまだ遊び方あるんですよ」
「まじっすか?やってみたいっす!」
私はトランプを一組交換して机に置く。その様子を不思議そうに見るリンさん。
「カエデさんのそれってどうやって出してるんすか?錬金術にしては高度すぎるっす」
「えーっと…私の故郷ではみんな出来ますよ?」
「へぇ…まあ良いっすけど…秘密は誰にでもあるっす!それで?どうやって遊ぶんすか?」
自分でも原理とか知らないからね。肌を露出したり誘惑して貯まる魔力で作りますとか言ったら頭おかしい痴女だもの。
今回はポーカーをやってみる。ひと勝負早いし戦略性もある。なかなか奥が深いのだ。
ルールはシンプルなファイブカード・ドロー。テキサスなんちゃらはやった事ないんだよね。
簡単に言えば五枚配られたカードから不要なカードを一回だけ交換して出来た役で勝負するタイプ。
……………。
「なるほど!簡単っすね!やってみるっす!
役も簡単だしルールも簡単。あとは駆け引きだけである。駆け引きというからには何か賭けないといけないのだが…まぁ今回はお遊び。
プライドでも賭けておくか。たまには性的な事から離れよう。
さて…カードをお互いに五枚引き勝負開始。
さぁ…ゲームを始めよう…!
………………。
「カエデさん手加減してるっすか?」
リンさん強すぎ!全然勝てない!ナチュラルに煽られる!
賭けたの私のやっすいプライドで良かった。性的なヤツだったらきっと全裸で土下座するレベルで負けてるよ。この人の前ではツーペアレベルは無意味、ゴミだよゴミ。
「純粋にリンさんが豪運なんですよ…」
「マジっすか!?ちょっと他の人ともやってくるっす!」
そう言ったリンさんは徐にスタスタと歩いて行ったかと思ったら神経衰弱中のおじさんに話しかけた。
「ギルマス!勝負っす!ポーカーってゲームっす!」
あの神経が衰弱してそうな爺さんがギルマス?このギルド大丈夫?
リンさんはギルマスにルールを説明して早速勝負を始める。私はお茶を飲みながらのんびり待っている事にした。
お爺さんとはいえギルマスでしょ?なんか失礼があったら怖いもん。
……………。
最初は二人でポーカーをしていたが…いつの間にかリンさん達の周りには人だかり、まるでコロシアムにでもいるかのような相当盛り上がりを見せている。
そろそろ帰ろうかと席を立つとリンさんが見送りに来てくれた。律儀な人だなぁ。
「カエデさん!ギルドマスターの許可を得ました!3日後、ここでポーカー大会を開きましょう!」
ん?
「何の話ですか?」
「何ってポーカーっすよ!カエデさんが主催者っす!頑張るっすよぉ!!」
何がどうなって…急に大会が開かれて私が主催?主催者が開催を後で知るって事あんの?
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そして大会当日。
「いやぁすごい人数っすね!」
やけにノリノリなリンさん。ノリリンさんの提案で大会告知の張り紙をいろんな場所に貼った。
突発大会なこともあって10人集まればいい方かなとか思ってたけど見たところ50人くらい集まった。中には見知った顔もちらほら。
「みなさん!今日は集まってくれてありがとうっす!楽しい大会にしましょう!では、主催のカエデさんから一言お願いします!」
え?私?何も考えてないんですけど!?一言って何言えばいいの?こういう時校長先生ならなんていうかな!
「あ…えっと…」
すっかり忘れていたけど元の世界の私はただのインキャオタク!人前で喋るとかむりむり!校長先生はポーカー大会とか主催しないし!
「どうしたんすか?大丈夫っすか?」
大丈夫っすか?いや、大丈夫じゃないっすよ。
しかし何も言わない訳には…。
「きょ、今日は精一杯頑張って、そして楽しみましょう!あとは…えーっと…なな、なんと!優勝者には豪華景品も用意してます!ぜひ一位目指して頑張ってください!」
うおー!と湧き上がる会場。そして勢いで言ってしまったが豪華景品なんて用意してない!どうしよう!
そんなことを考えてる私を無視して大会は始まった。
ルールは簡単、星の形のブローチをそれぞれに三つ配る。
あとは好きな人と勝負して星を獲得し、上位四名が勝ち上がり、決勝へと進む。
ポーカーは勝負が早いからね、会場は熱狂に包まれみんな楽しんでいるようだ。
一気に星を全部賭ける人もいれば一個一個着実に増やす人もいる。
大人から子供まで一喜一憂して…なんかいいなぁこの感じ…。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
そしてなんやかんやあって決勝戦。
なんか知ってる人ばっかりだな…ここまで露骨だと賄賂とか忖度が疑われそうなんだが…。
決勝戦に勝ち上がったのは、手ぶら大好きソーマさん。私のお姉ちゃんことフィーリアさん。ちゃっかり参加してたリンさん。そしてオルランドゥ姐さん。
姐さん…意外と頭が切れるタイプなのかな。星集めすぎて服が国旗みたいじゃん。
「こんなにワクワクするのは久しぶりだね。正々堂々戦おう!」
「ここまで来たからには負けられないわねぇ…」
「やってやるっすよ!豪華賞品は私が貰うっす!」
「申し訳ないけど優勝はこのあたしってわけぇ!」
みんなやる気満々だ。そう言えば豪華賞品どうしよっかな…。
決勝戦は四人の真剣勝負、コインは10枚。誰が勝つかによって賞品変えたりしないとだめかも。
「それでは決勝戦…開始っす!!」
リンさんの掛け声と共に歓声が上がり灼熱のバトルフィールドの幕が開けた。
しっかしテーブルを囲む人だかりでゲームの様子が全く見えない。
椅子を持ち出し上に立つがオルランドゥ姐さんの頭しか見えないよ…。
ゲームが始まって今最初のベットタイムくらいかな?
優勝賞品考えないといけないし…今のうちにトイレに行っておこう。
……………。
トイレから戻ると異様な雰囲気、会場は静まり返り空気が澱んでる…。
「ふふっ…リンさん…今動揺しましたね…?僅かに唇が震えてますよ…?」
「なっ…!適当な事言わないで欲しいっすね!こ、コールっす!」
「俺はフォールドだな、場の流れが悪い」
「レイズよぉん!こんなに興奮したのは魔王軍と戦った時くらいかしらぁん!!!」
は?
色々突っ込みたいのだけど…命とか血液賭けてるの?顔は見えないけど玄人みたいな空気出てるよ?
「ふふっ…コール…勝負と行きましょう」
「ぐっ…フォールドっす…」
「コールよぉん!勝負だわぁん!!」
私がトイレに行ってる間に何があった?とりあえずショーダウン。フィーリアさんとオルランドゥ姐さんの一騎打ちだ。
「フルハウスよ」
「フォーカードぉおお!!!私の勝ちってわけぇええ!!」
一瞬の静寂から歓声が湧き上がる。オルランドゥ姐さん強いな。リンさんも豪運だったけどフィーリアさんも強そう。
ソーマさんはちょっと出遅れてる?
次のゲームが始まりまた静寂に包まれる。
喋ったらオルランドゥ姐さんあたりからぶん殴られるとか?みんなもっと元気だしていこうよ。
「ふぅ、コールね」
「コールっすね」
「コールだな」
「レイズだわぁん!」
オルランドゥ姐さん飛ばすなぁ…勝ってるんだから様子見ても良いのに。
「あらあら、オルランドゥ姐さんは強気ねぇ…早すぎると満足できませんわよ?」
「言うじゃないのぉん!イケる時にイク!常識よぉん!!」
「焦らしも大事っすよ?焦らして焦らして反応を楽しむのが良いんすよ。そこから一気に責め立ててあげるんす」
「俺は素直に流れに任せる」
何の話してんの?ポーカーだよね?その囲んでるのはテーブルだよ?ベッドじゃないよ?やってるのはベットだけど。
でもベットするのをベッティングって言うんだっけ?なんかペッティン……さぁ次のドローに行こう!
「ふふ…気持ち良い所に入りました…身体が火照ってしまいますね…レイズ」
「レイズっす!脳みそがバカになるくらい責めてあげるっすよ!明日は足腰立たないかも知れないっすねぇ!」
「俺は体力には自信があるのだが…コール」
「洪水よぉぉおおん!ブッシャブッシャの洪水よぉぉおおん!!レイズ!!!」
オルランドゥ!?大丈夫かオルランドゥ!ソーマさんは無理して合わせてない?
あとリンさんとフィーリアさん!えーっと…私もそういうの好きです!
何か不健全な流れが出来上がってしまった。私が敏感に反応してるだけ?観客達は真剣に見てるし…。
「そろそろイカせて貰おうかしら…コール」
「そうっすね!もうおヘソの下あたりの疼きが止められそうにないっす。コール」
「大丈夫かみんな…具合が悪いなら病院に…コール」
「はぁん!!ビシャビシャの濡れ濡れにしてあげるわぁん!!!コォォオル!!」
何度かのレイズを挟み火照った顔の三人と気まずそうなソーマさん達はショーダウンを迎える。
一体何がどうなったらこうなるのだろうか。脱衣ポーカーとかしたらもうオルランドゥ姐さんの言うように洪水よぉん!になるのでは…。
…それはそれで見てみたいな。
「ふふっ…フォーカードよ。どうかしら?満足できた?」
「甘いっすねぇ!!ストレートフラッシュっす!勝利の女神は私にイカせて欲しいらしいっすよぉ!!」
「な…俺はフルハウスだ…土壇場でこれか…」
「はぁん…」
おや、オルランドゥ姐さんの様子が…もしかしてブラフだったのか?ここまではしゃいでおいて…。
「どうしたんすか?オルランドゥ姐さん?もしかしてブラフだったっすか?そんなんじゃ少しも濡れないっすよ?」
リンさん急に下品だなぁ…。でもベッドの上ではこんな感じなの?うーん…良い!!!
「そぉねぇん…じゃあ…」
パサっとカードをテーブルに出したオルランドゥ姐さん…その手札は…
ロイヤルストレートフラッシュ…!
「はっはぁん!!!ロイヤルよぉん!ほら拝みなさぁい!見てるだけでもう洪水かしらぁん!?替えの下着ならちくちくマーメイドまでぇん!!」
下品に煽りながら店の宣伝を!?抜け目が無いというか節操が無い!あとちょっと怖い!
「やられましたねぇ…流石オルランドゥ姐さんといったところかしら…」
「マジっすか!!くっそぉ…やられたっす…」
「すごいものを見た…流石としか言いようがないな」
「ありがとぉん!これが私の実力ってわけぇん!!カエデちゃああん!豪華賞品は私の物よぉん!!」
勝負が終わって少し落ち着いたのかな、姐さん以外は。
オルランドゥ姐さんはステージに上がり私も急いで上がる。
「優勝はオルランドゥ姐さんっす!主催のカエデさんから優勝賞品の贈呈っす!!」
リンさんのアナウンスで私は小包とトロフィーをオルランドゥ姐さんに渡す。
「オルランドゥ姐さん、おめでとう御座います。これはトロフィーって言って…うーん、勝者の証です!あとこれお菓子なんですけど…私の故郷で作ってて…えーっと…高級品です!」
「いやぁん!すっごい綺麗ねぇん!このトロフィー?お店に飾らせて貰うわぁん!あとお菓子?黒いけど…見た事ないわぁん」
私が用意したのはトランプの形をしたトロフィーとチョコレート。トイレの中でトロフィーとチョコと念じたら出てきた。淫魔力20も消費したんだけど…。
オルランドゥ姐さんは何も恐れる事無くチョコを口に放り込む。
「こ…これは…革命よぉん!!カエデちゃん!もっと!もっと無いのかしらぁん!美味しすぎるわぁん!!全部買い取っても良いわよぉん!!」
「いや…そうそう手に入る品では無いんです…」
「残念ねぇん…でも良い経験になったわぁん!残りはみんなで食べましょう!」
そう来るか…結局流れには逆らえずに淫魔力を大量消費し全員にチョコを振る舞ったのだった…。
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