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相性 ※C視点
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(息苦しい……)
指先に意識を向けてみるが、まるで動かない。
体は重く、まるで鉛のようだ。
(ゴブリン、の体じゃありませんね……。これは何でしょう……人間でしょうか……)
鑑定スキルを使ってみようにも、そもそも、今の状態で使えるのだろうか。視界がぼんやりしていて、意識も混濁しているし、やけに魔力の残量が少ない気がする。まるでAにエナジードレインされた後のようだ。
せめてもう少し回復しないと、肉体が耐えられないような気がした。
(私の魂と……肉体の相性は良さそうですが……)
とにかく、喉が灼けるように熱い。強い悪寒と頭痛が断続的に襲ってくる。それらは、以前母上に聞いた症状と一致していた。相性が悪ければ、耐えがたいほどの吐き気も襲ってくるらしい。
(……A……怒っているでしょうか……)
ふと思い浮かんだのがAだった。
護衛の息子達を守れなかったばっかりか、私自身が人質になってしまった可能性が高い。シュバルツを逃がせたことだけが救いだが、想定できる展開の中では、ここ数十年の内で最悪の部類だろう。
(まずは生き足掻く事……なんでしょうけど)
あの男の言葉を信じるなら、私を殺すことはしないだろう。ラストヘルムでは、相性の良い肉体は数年がかりで探すものだ。偶然、私と相性の良い肉体を用意していたようには思えない。おそらくは、何年も前から、私を狙っていたのだろう。
(魂の定着って……たしか……)
あの男は私を愛していると言った。そして、女の体に私の魂を移した、ということはきっと、Aのように私を抱いて、孕ませるつもりなのだろう。それが無理なく、効率的に魂を定着させる方法だった。ただ、この肉体に魂が定着してしまっても、父上なら私を元に戻す事が出来るはずだ。
(穴があったら入りたい、とはこの事ですか……)
何時もはAに苦言を呈している立場なのに、私の犯してしまった大きなミスで、Aの足を引っ張るような事態になってしまって、恥ずかしくてたまらなかった。
私とAの息子達は他と比べるとレアスキル持ちが多く、強いと有名だった。
エルサドに来てから、1か月に1回は産んでいたから、ネズミ算的に息子は増えていった。子はAだけで増やすことは出来ない。私は女王蟻のようなものだ。
私を生かしておけば、ゴブリンの勢力は増すばかりだ。
Aの伴侶であり、Aよりも劣る私を狙うことは理にかなっていた。
だからこそ、Aは私が襲われないように、傍に居たのかもしれない。エルサドの要を失うわけにいかないからだ。Aは不安を訴えていた。何時か私が居なくなりそうだと。その時は一笑に付したけど、まさに今の状況が、Aが危惧していた事なのではないだろうか。
(そういえば……父上でなくて、A……? なんだ……、私、Aの事、それなりに愛していたのですね……)
先ほどからずっと、Aの事ばかり考えている事に気が付いて、私は愕然とした。
(こんな時になって自覚するなんて、どれだけ鈍いのでしょう。伝えることも出来ない状態になってから、ようやく気が付かされるだなんて……)
きっとAにその事を伝えれば、顔をくしゃくしゃにして喜ぶだろう。ついその顔を想像してしまって、こんな絶望的な状況だというのに笑いそうになってしまった。
指先に意識を向けてみるが、まるで動かない。
体は重く、まるで鉛のようだ。
(ゴブリン、の体じゃありませんね……。これは何でしょう……人間でしょうか……)
鑑定スキルを使ってみようにも、そもそも、今の状態で使えるのだろうか。視界がぼんやりしていて、意識も混濁しているし、やけに魔力の残量が少ない気がする。まるでAにエナジードレインされた後のようだ。
せめてもう少し回復しないと、肉体が耐えられないような気がした。
(私の魂と……肉体の相性は良さそうですが……)
とにかく、喉が灼けるように熱い。強い悪寒と頭痛が断続的に襲ってくる。それらは、以前母上に聞いた症状と一致していた。相性が悪ければ、耐えがたいほどの吐き気も襲ってくるらしい。
(……A……怒っているでしょうか……)
ふと思い浮かんだのがAだった。
護衛の息子達を守れなかったばっかりか、私自身が人質になってしまった可能性が高い。シュバルツを逃がせたことだけが救いだが、想定できる展開の中では、ここ数十年の内で最悪の部類だろう。
(まずは生き足掻く事……なんでしょうけど)
あの男の言葉を信じるなら、私を殺すことはしないだろう。ラストヘルムでは、相性の良い肉体は数年がかりで探すものだ。偶然、私と相性の良い肉体を用意していたようには思えない。おそらくは、何年も前から、私を狙っていたのだろう。
(魂の定着って……たしか……)
あの男は私を愛していると言った。そして、女の体に私の魂を移した、ということはきっと、Aのように私を抱いて、孕ませるつもりなのだろう。それが無理なく、効率的に魂を定着させる方法だった。ただ、この肉体に魂が定着してしまっても、父上なら私を元に戻す事が出来るはずだ。
(穴があったら入りたい、とはこの事ですか……)
何時もはAに苦言を呈している立場なのに、私の犯してしまった大きなミスで、Aの足を引っ張るような事態になってしまって、恥ずかしくてたまらなかった。
私とAの息子達は他と比べるとレアスキル持ちが多く、強いと有名だった。
エルサドに来てから、1か月に1回は産んでいたから、ネズミ算的に息子は増えていった。子はAだけで増やすことは出来ない。私は女王蟻のようなものだ。
私を生かしておけば、ゴブリンの勢力は増すばかりだ。
Aの伴侶であり、Aよりも劣る私を狙うことは理にかなっていた。
だからこそ、Aは私が襲われないように、傍に居たのかもしれない。エルサドの要を失うわけにいかないからだ。Aは不安を訴えていた。何時か私が居なくなりそうだと。その時は一笑に付したけど、まさに今の状況が、Aが危惧していた事なのではないだろうか。
(そういえば……父上でなくて、A……? なんだ……、私、Aの事、それなりに愛していたのですね……)
先ほどからずっと、Aの事ばかり考えている事に気が付いて、私は愕然とした。
(こんな時になって自覚するなんて、どれだけ鈍いのでしょう。伝えることも出来ない状態になってから、ようやく気が付かされるだなんて……)
きっとAにその事を伝えれば、顔をくしゃくしゃにして喜ぶだろう。ついその顔を想像してしまって、こんな絶望的な状況だというのに笑いそうになってしまった。
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