上 下
99 / 112

信仰心※ミゲル視点

しおりを挟む
「これ以上、問題を起こしたくなりません。アイリーン、何とか出来ないんですか?」
「出来ないわね。天性の資質だもの。魂に根差しているから、死なない限り、どうしようもないわね。……こう見えても、私だって影響受けちゃってるのよ? ダーリンと主様以外で、こんなに惹かれるのは異常よ。スピカが男神じゃないのが残念ねぇ。もし男神だったら、神剣が産まれたかも」

スピカの影響を受けているのが俺だけじゃない事に、少し安堵する。アイリーンでも影響を受けるのであれば、俺が影響を受けても不思議ではないだろう。

「私が女神で良かったです……。この間、Aエイが聞いてきたのですが、女神に変化した状態でAエイの子を身籠ったら、どんな子供が出きると思います?」
「そうねぇ。相手がゴブリンだし……。運が良ければ神の系譜を継ぐ子が産まれるんじゃない? でも……もうちょっと神格上げないと、ゴブリンの本体が耐えられなくて、出産の時に母子共々死ぬかもしれないわねぇ?」
「……Aエイに言っておいたほうが良さそうですね……」

AエイCシーだから、このような場合は、確率が低いほうを引きそうな気がする。Aエイは強い子が欲しいのだろうが、Cシーが、最悪の場合死ぬかもしれないと言えば、Aエイも手を出すことはないだろう。
Cシーの魂がパヌトスに連れ去られた時は、見るからに元気を失くしていた。まだその時の心の傷が癒えていないように見える。Aエイは、伴侶であるCシーを失うことを、最も恐れているはずだ。

「今の貴女は穴の開いた袋みたいなものよ。とにかく神格レベルを上げて、力をコントロールする事ね」
「そういえば、神格レベルが何もしていないのに上がっているのは何故でしょう。今も神格レベルのレベルアップに必要なポイントが少しずつ上がっていっていますが……」
「おかしいわね。既に信奉者が居るってことなのかしら。どのくらい上がってるの?」
「8ですね」
「大分上がっているわね……。そのぐらい上がっていたら、その姿を維持するのも楽になってるんじゃない?」
「そう言われてみれば……そうですね。」

俺はアイリーンの言葉を聞いて、思い当たる節があった。

「もしかして、あれじゃないのか?」
「父上、心当たりがあるのですか?」
「ルナが持っていたから見せて貰ったが、スピカの絵が獣人の間で流行ってるらしい」
「……絵でも効果が出るんですか?」
「出るわね。いわば信仰心を数値化したものだから。何なら何もない場所で拝んでも、神格値はたまっていくわ」

スピカは、思い悩むような表情をした。
Cシー美里みさとの描く絵や漫画に関して、あまり良く思っていないように見えていたが、美里みさとの地道な布教活動が、思わぬ形で実を結んだので、複雑な心境なのかもしれない。

「――あぁ! 素晴らしいことを小耳に挟みました! 今日は何て素敵な日なのでしょう!」
美里みさと

美里みさとがひょっこりと顔を出し、話に首を突っ込んだ。Cシーだけだと思っていたが、美里みさとも付き添いで来ていたらしい。

「それって、手の平サイズの、小さな像みたいなものでも拝んでいたら、効果出るってことですか……?」
「そうゆう事になるわね」
「……と、言うことは……我が工房が産み出し、夢と希望の結晶……! 渾身のスピカ様フィギュアが陽の目を見たりしちゃいます……!?」
「見ません! 永久に封印して下さい!!」
「せめて御神体として祀りません!? 銅像を建てるよりは、お金もかからないと思いますけど!」
美里みさと。結論が出たら、後で俺にも報告してくれ。……じゃ、またな」

俺は、Cシーとアイリーンが美里みさとに気を取られている隙に、部屋から抜け出した。

(くそッ、ひどい目にあった……今度は俺の前でスピカに変化するなと、きつく言い聞かせておかないと……!)

……正直、愛の女神の資質とやらを甘くみていた。何時もなら、その時の気分で女を選ぶのだが、今は誰でもいい。
苛立ちながら、客間からいちばん近くにあった女の部屋の扉を蹴飛ばして、部屋に入った。

「ミゲル!?」
「エリーか。丁度いい。ちょっと体を貸せ」

そして、スピカの女神の資質に当てられ爆発寸前の性欲を、エリーで思う存分発散したのだった。






しおりを挟む

処理中です...