煉獄の蝶~月夜の秘め事~【短編集】

ちゃむにい

文字の大きさ
12 / 38

『鏡の檻(1)』 

しおりを挟む

「ただいま~」 

学校から帰宅し、靴を脱いで、何時ものように家に入る。 
曲がりくねった階段を上がって、自分の部屋に入ろうとしたら、見知らぬ男が居た。
私はビクリとして、そっと部屋の扉をしめた。 

「おばあちゃん、私の部屋に不審者がいる!」 

カバンを持つたまま、階段を下りると、祖母が振り返りもせずに、こう言った。 

「ああ、家庭教師をお願いしたのよ」 

私の両親は、戦争で死んでしまったから、今は祖父母の世話になっている。野菜をリズミカルに切る祖母の回答に、私は目を丸くした。 

「か、家庭教師?」 

祖母が言うには、私の志望校に現役で合格させたいらしい。先生には粗相のないようにしてね、と言われて私は頷いた。 

生活も楽でないのに、家庭教師を雇ってくれるだなんて、感謝しないといけない。 
本当は進学自体、渋々認めてくれているので、すごくありがたい。 
実際、伸び悩みというやつなのか、いくら勉強しても、あまり成果がなくて悩んでいた。 

もうすぐ期末テストだし、わかりやすく教えてもらえるなら、これ以上に助かることはない。 

「あ、ミコト。これを、先生に持って行って頂戴」 
「は~い」 

ジュースが乗ったお盆を手に、自分の部屋に戻ろうとしたら、廊下の突き当たりにゴソゴソとした怪しい物体がいた。 
何時もは何事もないふりしてスルーするのに、私は、うっかりソレを見てしまった。 

それは双子の妹が、男とセックスしているところだった。 

「あっ、あっ、あんッ! ……セベルの、すごぉい!」 

それは目を覆いたくなる光景で、まさに無法地帯だった。 頭頂部分の寂しい、中年太りの男にズンズンと突かれて、妹は喘いでいた。 

「出してぇ! ミユの中に、出しちゃってぇ!」 

ズプンズプンと男は激しく腰を使って、妹と交わる。 

「出る! ミユちゃんの中に、出るぞぉ!」 
「ああぁぁぁぁ!」 

妹の身体が、魚のように、ビクビクと跳ね上がった。この近辺で、妹にお世話になっていない中年男性はいないんじゃないだろうか。 
何しろ、小学生の頃から淫行を重ねている、筋金入りのビッチだ。 
この間は公園でホームレスと合体しているのを目撃してしまって、飲んでた牛乳を吹き出してしまった。 
しかし、こんなところでも盛るとは。流石はビッチだ。 

なんか床に、男の精液っぽいのが落ちてるんだけど、ちゃんと掃除してよね。 

まる。 

「……って、何してるのよぉぉ!」 

この件について、何度、妹と話し合いをしても平行線のままだった。誰と寝ようと、個人の自由だというのは分かっているが、私と同じ顔の妹がアヘ顔晒して男に抱かれているのを見るのはキツい。 

それに、こんなとこでやっていたら、家庭教師にも聞こえてしまっているかもしれないじゃないか。 

それは、顔から火が噴くほど恥ずかしいことだった。 

「え? 何って、セックスに決まってるじゃん。お姉ちゃん、視力悪いの?」 

ビッチの明瞭な回答に、私は言葉を失った。 
腰振りマシーンと化していた男の肉棒に、チュッチュッとキスをするビッチに頭が痛くなってきた。 
やめろ、私に汚いものを見せるんじゃない。 

妹は幼い頃に父を失ったからかもしれないが極度の年上好きで、あちこちで男を作っては持ち帰る。
というか、どこかで見たことのある顔だと思ったら、校長先生じゃないか。 
こんなところで何してるんだ、このハゲ。

「何がいけないっていうの? こんなに気持ちいいのに、お姉ちゃん、人生損してるよぉ」 

呆気にとられていると妹は、校長に抱きついてベロチューする。おい、そこの生徒に手を出しているエセ教育者。

スケベな顔をするんじゃない。 

「今夜は寝かせないよ……」 
「あん、やだ、せんせったら」 

イケメン限定な事を口走りながら、校長は妹のスカートを捲り、腹を押し付けて性行為に励む。 

もちろん、この校長は、妻子ある身の上だ。 

今すぐ、この破廉恥野郎を家から追い出したいところだが、この国では恐るべきことに浮気は合法だ。 
祖母が家に入れたということは、公認ってことだろう。 
そりゃそうだ、誰とわからない子を産むよりも、せめて社会的地位のある男を望むに違いない。 

だから、私が出来ることと言えば、勢い良く自分の部屋の扉を閉めることぐらいなものだ。 

「お姉ちゃん、ほんっと奥手で、心配になるわぁ」 
「お姉さんの分も、君が頑張ればいいんだよ」 
「そうね、私はエッチ大好きだもん」 

聞こえてる。聞こえてるからな。 

ビッチから心配されるなんて世も末だ。 
そりゃ、この世界では貞操観念が軽くて、私の持つ価値観とは異なるというのは知っている。 
それにも、ちゃんとした原因があるから尚更だ。 
長く続いた戦争で、人間は絶滅危惧種になってしまった。 

人口が激減したから、それを取り戻そうとしているのだ。自然の摂理と言えば、そうかもしれない。例え、妊娠したとしても、国から手厚い保護があるから、国民は子作りに励む。 
むしろ、どんどん産まないと、非国民と言われて、肩身が狭くなる。そのため、出生率は異常に高く、私の友人も、半数近くが既にお腹を大きくしている。 

だから、私は進学したいのだ。 
この世界の負のループから離脱するためには、エリートになるしかない。幸いにも、この国でも合意のない性行為は犯罪だ。
たとえ級友が授業中に性行為をしていても、そっと目を伏せてればいいだけの話だ。 
この計画が失敗すれば、お見合い妊娠コースは免れない。 
だから、私は必死になって勉強をしていた。

それしか、私の生き残る道は、ない。 

「すみません、お待たせしました」 
「いや、そんなに待ってないし」 

視線が合う。 

家庭教師は、金髪金目の見目麗しい青年だった。不審者扱いをしたことを、心の中で詫びる。 
私が目指す学校に通う学生は、貴族のお坊ちゃんかお嬢さんが多い。そのため美男美女が多いと聞くが、確かに私の同級生とは違うようだ。 
こんなのが同じ教室にいたら、速攻で玉の輿狙いの痴女に襲われていると思う。 

「ここは、こうすればいいんだよ」 
「あっ、そうか……」 

そして、家庭教師と勉強をしていると祖父が入ってきた。 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

👨一人用声劇台本「寝落ち通話」

樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
彼女のツイートを心配になった彼氏は彼女に電話をする。 続編「遊園地デート」もあり。 ジャンル:恋愛 所要時間:5分以内 男性一人用の声劇台本になります。 ⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠ ・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します) ・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。 その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

処理中です...