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『薔薇の滴(2)』
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明日が、こなければいいのに。
私は兄の腕の中で、何度願ったことだろうか。私は兄を、兄ではなく、1人の男として愛していた。けれど、その望みが叶うことはなく、ただ時だけが過ぎていった。
「コーデリア。ここに居たのか」
「シグルド……」
これ以上、兄を見ていたくなかった。
だから、誰もいないところに身を隠していたのに、今、いちばん逢いたくない人が姿を現して、ギクリとした。
シグルドは私の婚約者だ。
もうすぐ嫁ぐ事になっている。
シグルドは何年も前から、私との縁談を進めようとしていた。
けれど、兄はその縁談が成立しないように、シグルドの悪評を広めていた。シグルドに直接問い正された時、その事を知っていた私は、ふと思いついてしまった。この絶好の機会を逃せば、もう2度と好機は訪れないかもしれない。
――それに、これなら、兄を救えるかもしれない。
私は咄嗟に、悲しげな表情で俯いた。
「本当は私、貴方の事を愛おしく思っているわ」
「それなら、なぜ」
「誰にも言わないと、誓ってくださるかしら?」
「勿論だ」
「シグルドはお兄様のご学友でいらっしゃいましたね? お兄様は……兄は……私を溺愛しているのです……。このままでは、貴方と結婚出来ないかもしれないわ」
演技は得意だった。
そうでなければ、とうの昔に兄と私の関係は世間の知るところになっていただろう。
「噂で聞いたの。貴方の家には魔女の作った秘薬があるって」
そして私は、シグルドの気持ちを利用したのだ。
私のために。
そして兄のために。
――嘘をついた。
真実は逆なのに。
シグルドなんて、これっぽっちも愛していない。
体の相性は良いかもしれないけど、それだけだった。
黒豹の様に美しく強い人。
けれど、私にとっては何の価値も見出せなかった。
――私は兄以外の人は愛せないだろう。
シグルドは、私こそが生涯添い遂げる相手だと思い込んでいる。
私を愛さなければ、幸せになれただろうに、何て不幸な人だろう。
良心の呵責に耐えかねて「私、貴方が愛するほどの価値はないかも」と言っても、シグルドは「俺には貴方だけだ」と手のひらに優しく口づけをする。
すべてをシグルドに告白してしまいたくなる時は、確かにあった。
けれど、兄を想うと躊躇してしまう。
何て卑怯な女なのだろう。
シグルトが、愛を耳に囁き、私の体を求める度に、心が軋んだ。
そのたびに私は、こう告げるのだ「私もよ」と。
だけれど、今はそんな気分になれなかった。
「泣いているのか」
シグルドは、私の手を掴んだ。
笑顔を作ろうとして、強張る。
ああ、いけない。
この嘘だけは守らなければいけないのに。
けれど、涙がぼろぼろと出てきた。
幸せそうに微笑む兄の姿が思い浮かぶ。
なにも考えられないぐらいに、めちゃくちゃにして欲しかった。
今、この瞬間だけでも。
私はシグルドに腕を伸ばした。
「シグルド。して欲しいわ」
シグルドは、私を抱きしめると、首筋に口づけた。
「んッ」
腰に回された逞しく鍛え抜かれた太い腕に、ビクリと体を震わせた。シグルドに組み敷かれた夜を思い出して、声が上ずる。
シグルドは、私のドレスの上から感触を確かめるように、胸を触った。しばらくすると手を中にいれて、撫でるように、ゆっくりと乳房を揉みくだす。
そしと、低いハスキーボイスで「愛してる」と囁き、深く口づけた。
その言葉に、絡みつく舌に、ぞわり、と肌が粟立つ。
兄は許してくれるだろうか。
他の男に抱かれる、私を。
私は兄の腕の中で、何度願ったことだろうか。私は兄を、兄ではなく、1人の男として愛していた。けれど、その望みが叶うことはなく、ただ時だけが過ぎていった。
「コーデリア。ここに居たのか」
「シグルド……」
これ以上、兄を見ていたくなかった。
だから、誰もいないところに身を隠していたのに、今、いちばん逢いたくない人が姿を現して、ギクリとした。
シグルドは私の婚約者だ。
もうすぐ嫁ぐ事になっている。
シグルドは何年も前から、私との縁談を進めようとしていた。
けれど、兄はその縁談が成立しないように、シグルドの悪評を広めていた。シグルドに直接問い正された時、その事を知っていた私は、ふと思いついてしまった。この絶好の機会を逃せば、もう2度と好機は訪れないかもしれない。
――それに、これなら、兄を救えるかもしれない。
私は咄嗟に、悲しげな表情で俯いた。
「本当は私、貴方の事を愛おしく思っているわ」
「それなら、なぜ」
「誰にも言わないと、誓ってくださるかしら?」
「勿論だ」
「シグルドはお兄様のご学友でいらっしゃいましたね? お兄様は……兄は……私を溺愛しているのです……。このままでは、貴方と結婚出来ないかもしれないわ」
演技は得意だった。
そうでなければ、とうの昔に兄と私の関係は世間の知るところになっていただろう。
「噂で聞いたの。貴方の家には魔女の作った秘薬があるって」
そして私は、シグルドの気持ちを利用したのだ。
私のために。
そして兄のために。
――嘘をついた。
真実は逆なのに。
シグルドなんて、これっぽっちも愛していない。
体の相性は良いかもしれないけど、それだけだった。
黒豹の様に美しく強い人。
けれど、私にとっては何の価値も見出せなかった。
――私は兄以外の人は愛せないだろう。
シグルドは、私こそが生涯添い遂げる相手だと思い込んでいる。
私を愛さなければ、幸せになれただろうに、何て不幸な人だろう。
良心の呵責に耐えかねて「私、貴方が愛するほどの価値はないかも」と言っても、シグルドは「俺には貴方だけだ」と手のひらに優しく口づけをする。
すべてをシグルドに告白してしまいたくなる時は、確かにあった。
けれど、兄を想うと躊躇してしまう。
何て卑怯な女なのだろう。
シグルトが、愛を耳に囁き、私の体を求める度に、心が軋んだ。
そのたびに私は、こう告げるのだ「私もよ」と。
だけれど、今はそんな気分になれなかった。
「泣いているのか」
シグルドは、私の手を掴んだ。
笑顔を作ろうとして、強張る。
ああ、いけない。
この嘘だけは守らなければいけないのに。
けれど、涙がぼろぼろと出てきた。
幸せそうに微笑む兄の姿が思い浮かぶ。
なにも考えられないぐらいに、めちゃくちゃにして欲しかった。
今、この瞬間だけでも。
私はシグルドに腕を伸ばした。
「シグルド。して欲しいわ」
シグルドは、私を抱きしめると、首筋に口づけた。
「んッ」
腰に回された逞しく鍛え抜かれた太い腕に、ビクリと体を震わせた。シグルドに組み敷かれた夜を思い出して、声が上ずる。
シグルドは、私のドレスの上から感触を確かめるように、胸を触った。しばらくすると手を中にいれて、撫でるように、ゆっくりと乳房を揉みくだす。
そしと、低いハスキーボイスで「愛してる」と囁き、深く口づけた。
その言葉に、絡みつく舌に、ぞわり、と肌が粟立つ。
兄は許してくれるだろうか。
他の男に抱かれる、私を。
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