ゴブリン転生【完結】

ちゃむにい

文字の大きさ
20 / 52

謁見 ※人間視点

しおりを挟む
王都が陥落して数日が経った頃。

私は新たな支配者となったゴブリンの王に謁見を許された。
精巧な金細工と宝玉に彩られた優美な玉座には、足を組んだ無表情のゴブリンの王が座っていた。その太い腕には上機嫌な女が、しなだれ掛かっている。
レースが贅沢に使われた、ゴージャスな深紅のドレスを装う、妖艶な女だ。大胆にも、ドレスは太ももが大きく見えるデザインになっている。睫毛は長く、唇の斜め下にほくろがある。

ため息をつきたくなるほどの美貌だ。これほどの美しさがあれば、王都でも話題になっていてもおかしくないが、聞いたことがない。育ちの良さそうな、品の有る顔立ちからして、深窓の令嬢なのか、それとも誰かの愛人となっていた貴族崩れの娼婦なのか。
どこからか遠い場所からゴブリンが攫ってきた女だろうか。思わず想像を掻き立てるような、神秘性が女にはあった。

「ご苦労だったな、楽にするがいい」

ゴブリンの王は視線が合うだけで射抜かれるかのような威圧感がある。
王は喋ることを好まないらしく、謁見する際には王の右腕と名高いCシーという名前の幹部が代弁することが常だ。
慇懃丁寧で柔らかい物腰の男なのだが、これがまた厄介なことにゴブリンにしては知略に長ける。腹の底まで見透かれるような慧眼を持つのだと、つい先日、友人であるギルドマスターが舌を巻いて帰ってきたのが記憶に新しい。

ただし、私がCシーというゴブリンを見るのも、王を見るのも初めてである。戦場で垣間見えたのは圧倒的な力で城壁を破壊して突破した、その姿だけだった。

「王はお前が剣の師をなる事を所望されている。拒否権はないが、質問があれば応じよう」
「…なぜ私が選ばれたのでしょうか。他にも、私以上の剣の使い手はおります」
「この国の騎士たちは、護衛対象である王を玉座に縛り、それを囮にして、国から逃げ出そうとしたのだ。忠誠心はどこに行ったのだろうか?」

ひどい話だ。
ふだんから高給取りの我らであるが、その分責任も付きまとう。しかし土壇場になって、彼らは命が惜しくなったのか、身を翻したした。だが、そうする理由が私には痛いほど分かった。みな親もいれば妻も子供も、家族がいる。人間である以上、誰でも死にたくはないだろう。
しかもあの時、王は「私のために死ね」と言って私たちを盾にして、女子供を連れて逃げようとしていた。積年のつもりに積もったものが決壊し、堪忍袋の緒が切れたのだろう。
これは命を懸けて守る価値のある王なのだろうか。私でさえ迷った。王よりも、何の罪もない民を逃がしたかった。

「王の拳は勇者が持つ光の剣すら破壊する。肉体も鋼を通さないほど頑丈なものだ。剣も盾も不要であるが、宝物庫で喋るクソ女――いや、失敬、自称神器に気に入られ、憑りつかれてしまわれたのだ。何度も封印しようとしたのだが、破壊される始末でな」
「宝物庫? 自称神器? まさか国宝のアイリーンですか……?」

国の守り神として宝物庫に安置されていたはずだ。
あの剣は数百年ぐらい前に、英雄ヴァンサが所有していたものだ。意思のある剣で、主は自ら選ぶと言われていたのだが、何十代も前から鞘から出ようとしないので、ただの伝説ではないだろうかと言われていたぐらいだ。
鞘だけでも絢爛豪華な拵えなので、最近では、祭事の時にのみ使われていたはずだ。

「一目惚れだったんだもの。ねぇ、我が主様」
「お前の主になった覚えはない」
「アイリーンってお呼びくださいって言ったでしょう? ふふッ、わらわを手にしたら、契約は完了しているのよ?」
「とんだ災難だ。説明を怠った宝物庫の管理者は肉にしてやる」
「彼は功労者よ? わらわに免じて許してあげて」

うっとりとした表情で王を見ていたアイリーンは、不意に目の色を変えた。

「……あらあら、これは……」

王の下腹部を覆っている毛皮を捲り、膨れ上がった肉棒にキスをした。

「は!? お前、何をする!?」
「主様の状態は何もせずとも手に取るように分かるのよ。わらわが抜いて差し上げますわ」

狼狽するゴブリンの王を襲う国宝アイリーンの構図に頭が痛くなってくる。Cシーがクソ女と表現するのも頷けた。
おそらくは昨夜からこの状況に頭を悩ませていたのだろう。
恋に狂ったアイリーンの愚行を見ていると、まるで王がまともに見えてくる。口で王の肉棒を愛おしそうに奉仕していたアイリーンだが、考えが変わったのか口を離した。急遽その胎内に、太く膨張した王の肉棒を埋め込み、いやらしくも巧みな腰使いで快楽を貪り始めた。

「――はぁん! あぁんッ! ……見込んだ通りだわ! やっぱり主様、素敵ぃ!」

さすがの王も理性の限界になったのか、アイリーンの腰を掴むと激しく腰を動かし、その肉体を蹂躙した。王はアイリーンの中に何度も中出しをし、アイリーンの感極まった嬌声が響いた。女と男の、ぶつかり合うような濡場が続く。
性に淡泊な私は目のやり場に困り、視線を床に落とした。
奔放な女であったとは歴史書の一節で読んだことがあるが、まさか万年発情期の痴女であったとは。そんな女を国宝として我らは日夜崇めていたのか。

失意の余り、無神論者になる考えさえ浮かんできた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

処理中です...