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浸食 ※アイリス視点
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体の傷は、すぐに癒える。私は賢者。あのぐらいの傷なら、スキルを使えばすぐに治る。だが、心の傷は癒えなかった。
じくじくと痛むそれは、心身に影響を及ぼした。
(動けない……動きたくない……)
それからの私は、抜け殻のようになった。起き上がることが出来ず、寝床に転がり、手持ち無沙汰にクリスタルを見て過ごした。
(あ、笑ってる。……意外にミゲルって、子煩悩よね……)
あのゴブリンの王を見ることで、沈んだ気持ちが和らぐ気がした。
(ミゲル……。ミゲルかぁ……)
認めたくなかったが、きっとその気持ちに言葉を付けるのなら、恋、それに片思い。そういったものが該当するのだろう。
まさかゴブリンにそんな感情を抱くなんて思いもしなかったけれど、自分の気持ちに嘘は付けない。
娼婦の女の、幸せそうな笑顔を思い出す。あの娼婦の女がゴブリンの伴侶になったあの時、私は怒りがこみあげてきた。
それは、きっと自分の不幸せな状況と比較してしまったからだろう。私には婚約者がいる。悪い人ではない。だけどずっと好きになれなかった。親に言われるがまま、結婚するのが嫌で、家出同然に冒険者となったようなものだった。
冒険者となってからも、婚約者は私を追いかけてきた。私には出来の良い妹がいたから、そちらと結婚すればいいと言ったのに、あきらめる事はなかった。婚約者から逃れるために、僻地を転々として魔物を倒していたら、いつの間にか人々に敬われ、賢者という称号が付いて来た。
自由になりたくて家を捨てたのに、枷は増えるばかりだった。
――私は羨ましかったのだ。
すべてのしがらみから抜け出し、愛する者を手に入れた、あの女が。
もう人間のためには戦えない。
その気持ちは、村人に暴行された時に、消し飛んでしまった。賢者として正しいのは、この地を去り、生き延びてゴブリンを凌駕するほど強くなることなのだろうけど、最早どうでもいい。
私はゴブリンが、この隠れ家を見つける前に、自害するつもりだった。
でも、気持ちが変わった。
どうせ死ぬなら、ミゲルというゴブリンに殺されたい。
数日後、私は用意を整えると、ゴブリンの王のところへ空間転移をした。精神支配は、悪意がなければ反応しないため、ゴブリンの王の唇を盗むぐらいは容易であった。
――もちろん、心臓は破裂しそうなぐらいドキドキしたのだが。
「……物好きな女だな。自ら俺に囚われようとするとは」
寝込みを襲ったので、ゴブリンの王ミゲルも驚いてたみたいだが、杖すら持たず、裸一貫で来た覚悟を受け止めてくれた。
「本当に俺でいいのか? 今なら、見逃してやってもいいんだぞ?」
ミゲルは女に不自由していないからなのか、それとも私に女としての魅力がないのか、思ったよりも、すごく優しく抱いてくれた。
でも、本物のほうが何百倍も凄かったし、良かった。
「はぁッ、あっ、ああああ、しゅごい!!! こ、これよこれ!! ああああああ!!!!」
何度も何度も抱いてもらったけど、体の疼きは静まらなかった。彼に触れると、もっと彼が欲しいと、欲が沸いてくるからだ。
私はミゲルのハーレムの1人になった。他の女の部屋に、ミゲルが通っているのをみると嫉妬はするが、満足だった。
あんな素敵な男の愛を独占するなんて、私1人じゃもったいないから。ルシーが言う通りに、たくさんの女が、幸せを貰ったほうが良い。
ミゲルは私を愛してくれたし、そして私は愛するミゲルの子を何匹も産んだ。不満など、あるわけがなかった。穏やかな生活は続き、私の心は満たされていった。
「驚いた。アイリス、お前の笑顔なんて、初めてみたな」
「そう……? ……きっと、ミゲルのおかげね」
今までになく、幸せな生活を送っていたが、その数年後、私の婚約者と師匠が押しかけてきた。
じくじくと痛むそれは、心身に影響を及ぼした。
(動けない……動きたくない……)
それからの私は、抜け殻のようになった。起き上がることが出来ず、寝床に転がり、手持ち無沙汰にクリスタルを見て過ごした。
(あ、笑ってる。……意外にミゲルって、子煩悩よね……)
あのゴブリンの王を見ることで、沈んだ気持ちが和らぐ気がした。
(ミゲル……。ミゲルかぁ……)
認めたくなかったが、きっとその気持ちに言葉を付けるのなら、恋、それに片思い。そういったものが該当するのだろう。
まさかゴブリンにそんな感情を抱くなんて思いもしなかったけれど、自分の気持ちに嘘は付けない。
娼婦の女の、幸せそうな笑顔を思い出す。あの娼婦の女がゴブリンの伴侶になったあの時、私は怒りがこみあげてきた。
それは、きっと自分の不幸せな状況と比較してしまったからだろう。私には婚約者がいる。悪い人ではない。だけどずっと好きになれなかった。親に言われるがまま、結婚するのが嫌で、家出同然に冒険者となったようなものだった。
冒険者となってからも、婚約者は私を追いかけてきた。私には出来の良い妹がいたから、そちらと結婚すればいいと言ったのに、あきらめる事はなかった。婚約者から逃れるために、僻地を転々として魔物を倒していたら、いつの間にか人々に敬われ、賢者という称号が付いて来た。
自由になりたくて家を捨てたのに、枷は増えるばかりだった。
――私は羨ましかったのだ。
すべてのしがらみから抜け出し、愛する者を手に入れた、あの女が。
もう人間のためには戦えない。
その気持ちは、村人に暴行された時に、消し飛んでしまった。賢者として正しいのは、この地を去り、生き延びてゴブリンを凌駕するほど強くなることなのだろうけど、最早どうでもいい。
私はゴブリンが、この隠れ家を見つける前に、自害するつもりだった。
でも、気持ちが変わった。
どうせ死ぬなら、ミゲルというゴブリンに殺されたい。
数日後、私は用意を整えると、ゴブリンの王のところへ空間転移をした。精神支配は、悪意がなければ反応しないため、ゴブリンの王の唇を盗むぐらいは容易であった。
――もちろん、心臓は破裂しそうなぐらいドキドキしたのだが。
「……物好きな女だな。自ら俺に囚われようとするとは」
寝込みを襲ったので、ゴブリンの王ミゲルも驚いてたみたいだが、杖すら持たず、裸一貫で来た覚悟を受け止めてくれた。
「本当に俺でいいのか? 今なら、見逃してやってもいいんだぞ?」
ミゲルは女に不自由していないからなのか、それとも私に女としての魅力がないのか、思ったよりも、すごく優しく抱いてくれた。
でも、本物のほうが何百倍も凄かったし、良かった。
「はぁッ、あっ、ああああ、しゅごい!!! こ、これよこれ!! ああああああ!!!!」
何度も何度も抱いてもらったけど、体の疼きは静まらなかった。彼に触れると、もっと彼が欲しいと、欲が沸いてくるからだ。
私はミゲルのハーレムの1人になった。他の女の部屋に、ミゲルが通っているのをみると嫉妬はするが、満足だった。
あんな素敵な男の愛を独占するなんて、私1人じゃもったいないから。ルシーが言う通りに、たくさんの女が、幸せを貰ったほうが良い。
ミゲルは私を愛してくれたし、そして私は愛するミゲルの子を何匹も産んだ。不満など、あるわけがなかった。穏やかな生活は続き、私の心は満たされていった。
「驚いた。アイリス、お前の笑顔なんて、初めてみたな」
「そう……? ……きっと、ミゲルのおかげね」
今までになく、幸せな生活を送っていたが、その数年後、私の婚約者と師匠が押しかけてきた。
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