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「まったく、異世界に来たようだね。目移りするよ」
唐揚げ、ハンバーグ、串焼き、フライドポテトなどの斬新な食べ物は、食いしん坊な妖精の心を鷲掴みにした。
「もぐもぐ……これも美味しい! 次はあれを食べよ!」
「いいけど、お腹を壊さないでおくれよ」
妖精は人間の食べ物を気に入り、目を輝かせて、食べ歩きをした。
「えへへ……! 勇者ユウキの新作料理は、ボアの肉を使ったハンバーグかあ……! 楽しみだなあ。サマンサ、絶対に食べに行こうね……!」
妖精の言葉に、サマンサは嫌な予感がした。
「記憶に間違いがなければ、ボアの肉って高級食材だったような……」
妖精の食欲は底なしで、目新しい食べ物に目がなく、みるみるうちに減っていく所持金に、サマンサは嘆いた。
「あんたの食費で、所持金が底を尽きそうなんだけど!?」
「稼げばいいじゃん! 強い冒険者になりたいんでしょ? サマンサ、僕と契約しようよ! 協力するよ!」
サマンサは、妖精から教えてもらった古代魔法を使い、驚異的なスピードで冒険者ランクを上げていった。
「Sランク冒険者になったお祝いでもしようかね。ほら、あんたの好きなボアの肉獲ってきたよ。脂も乗った大物だよ。今夜はバーベキューにでもしよう。勇者ユウキも誘ったけど、来てくれるってさ」
「うっわあぁ~! サマンサ、大好き!!!」
妖精は上機嫌で、勇者ユウキが調理した肉を頬張った。
(……なんか思ってたのとは違うけど、ファビーが喜んでくれてるから、いっか)
サマンサは高給取りとなり、若い頃の夢を叶えた。妖精ファビーの助力と、毎日の鍛錬が実を結び、その名声は高まる一方だった。
「サマンサ。ボアのステーキが好評なんだよ。2頭ほど調達して欲しいんだけど、お願いできるかな?」
「お安い御用だよ」
勇者ユウキが出店する店の常連客だったことから、直接依頼されることも増えた。難易度の高い食材を調達するのは大変だが、やりがいのある仕事だった。
「これは……」
勇者ユウキの依頼で、故郷近くのギルドに立ち寄った時、依頼ボードの依頼書を見て、生き別れた息子が母親であるサマンサを探していることを知り、サマンサは居ても立っても居られなくなった。
意を決して、サマンサは息子に逢うことを決めた。
息子はすぐにサマンサが母親であることに気が付き、泣いてサマンサに許しを求めた。
「別に怒っちゃいないよ。あんたにも家長としての立場があるから、辛かったろう? ……それより、あの場所に戻ったって本当かい?」
「はい。やっぱり置いて帰ったら後悔すると思って、村に帰る前に戻ったんです。でも、あの大きな木が忽然と消えていて、母さんの姿もなかったんです……」
「私はずっとあの木の下にいたよ? ……ファビー?」
妖精ファビーはそっぽを向いて知らん顔をしていたが、とてもばつの悪そうな顔をしていた。それ以来、サマンサの息子は、定期的にサマンサの顔を見にくるようになった。
「げー!! お前、また来たのか!! 何しに来たんだ! 早く帰れよ!!」
ただし妖精との仲は最悪で、顔を合わせれば喧嘩ばかりした。
「こら、喧嘩しない。それに、今日は私が息子に依頼したんだよ」
「それって、あの籠に入っている薬草?」
「そうだよ。勇者ユウキのおかげで、食の都として有名になって、冒険者も増えた。だが冒険者が増えると、当然怪我する人間も増える。……あの村にはなにもないけど、使える薬草がわりとはえてるからね。薬草を畑で育てて、それを売ることが出来たら、冒険者にとってもあの村にとっても良いことだろう?」
サマンサは困窮する村の財政を立て直し、姥捨てという悪習を根絶することに貢献した。
唐揚げ、ハンバーグ、串焼き、フライドポテトなどの斬新な食べ物は、食いしん坊な妖精の心を鷲掴みにした。
「もぐもぐ……これも美味しい! 次はあれを食べよ!」
「いいけど、お腹を壊さないでおくれよ」
妖精は人間の食べ物を気に入り、目を輝かせて、食べ歩きをした。
「えへへ……! 勇者ユウキの新作料理は、ボアの肉を使ったハンバーグかあ……! 楽しみだなあ。サマンサ、絶対に食べに行こうね……!」
妖精の言葉に、サマンサは嫌な予感がした。
「記憶に間違いがなければ、ボアの肉って高級食材だったような……」
妖精の食欲は底なしで、目新しい食べ物に目がなく、みるみるうちに減っていく所持金に、サマンサは嘆いた。
「あんたの食費で、所持金が底を尽きそうなんだけど!?」
「稼げばいいじゃん! 強い冒険者になりたいんでしょ? サマンサ、僕と契約しようよ! 協力するよ!」
サマンサは、妖精から教えてもらった古代魔法を使い、驚異的なスピードで冒険者ランクを上げていった。
「Sランク冒険者になったお祝いでもしようかね。ほら、あんたの好きなボアの肉獲ってきたよ。脂も乗った大物だよ。今夜はバーベキューにでもしよう。勇者ユウキも誘ったけど、来てくれるってさ」
「うっわあぁ~! サマンサ、大好き!!!」
妖精は上機嫌で、勇者ユウキが調理した肉を頬張った。
(……なんか思ってたのとは違うけど、ファビーが喜んでくれてるから、いっか)
サマンサは高給取りとなり、若い頃の夢を叶えた。妖精ファビーの助力と、毎日の鍛錬が実を結び、その名声は高まる一方だった。
「サマンサ。ボアのステーキが好評なんだよ。2頭ほど調達して欲しいんだけど、お願いできるかな?」
「お安い御用だよ」
勇者ユウキが出店する店の常連客だったことから、直接依頼されることも増えた。難易度の高い食材を調達するのは大変だが、やりがいのある仕事だった。
「これは……」
勇者ユウキの依頼で、故郷近くのギルドに立ち寄った時、依頼ボードの依頼書を見て、生き別れた息子が母親であるサマンサを探していることを知り、サマンサは居ても立っても居られなくなった。
意を決して、サマンサは息子に逢うことを決めた。
息子はすぐにサマンサが母親であることに気が付き、泣いてサマンサに許しを求めた。
「別に怒っちゃいないよ。あんたにも家長としての立場があるから、辛かったろう? ……それより、あの場所に戻ったって本当かい?」
「はい。やっぱり置いて帰ったら後悔すると思って、村に帰る前に戻ったんです。でも、あの大きな木が忽然と消えていて、母さんの姿もなかったんです……」
「私はずっとあの木の下にいたよ? ……ファビー?」
妖精ファビーはそっぽを向いて知らん顔をしていたが、とてもばつの悪そうな顔をしていた。それ以来、サマンサの息子は、定期的にサマンサの顔を見にくるようになった。
「げー!! お前、また来たのか!! 何しに来たんだ! 早く帰れよ!!」
ただし妖精との仲は最悪で、顔を合わせれば喧嘩ばかりした。
「こら、喧嘩しない。それに、今日は私が息子に依頼したんだよ」
「それって、あの籠に入っている薬草?」
「そうだよ。勇者ユウキのおかげで、食の都として有名になって、冒険者も増えた。だが冒険者が増えると、当然怪我する人間も増える。……あの村にはなにもないけど、使える薬草がわりとはえてるからね。薬草を畑で育てて、それを売ることが出来たら、冒険者にとってもあの村にとっても良いことだろう?」
サマンサは困窮する村の財政を立て直し、姥捨てという悪習を根絶することに貢献した。
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