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復讐は蜜の味~ブラッドは復讐後に後悔する【R15】
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シェリルはブラッドにとって両親が没落するきっかけをつくった仇敵の娘であり、復讐を誓った相手だった。
復讐は叶った。
ブラッドは、結婚間近だったシェリルの婚約者に接触し、言葉巧みに婚約を破棄するように煽った。
「この結婚は、僕の意思など関係ないのだよ。所詮、親が決めた婚約者だしね」
当初は思い悩んでいた婚約者も、ブラッドの口車に乗せられ、婚約破棄を決意したようだった。
「僕は貴方を愛することが出来ない。だから、この婚約は破棄する」
シェリルは婚約者に告げられた一方的な別れの言葉に悲鳴を上げ、現実を受け入れることが出来なかったのか、失神した。
シェリルは失神した際に転倒し、後頭部を打った。打ち所が悪かったのか、昏睡状態に陥り、シェリルは眠り続けた。
(……今日も目を覚まさない、か)
翌日にでもなれば、目を覚ますだろうと楽観視していたが、1日経っても、2日経ってもシェリルは目を覚ますことはなく、一週間が過ぎようとしていた。
ブラッドは、当初の見通しが甘過ぎたことを認めるしかなかった。
婚約破棄など、ブラッドにとって復讐の序章でしかなかった。
ブラッドの両親が味わった苦悩は、こんなものではなかった。
もっと苦しませてシェリルに復讐をする計画だったが、どうやら思っていたより繊細な心の持ち主だったようだ。
ブラッドは両親からシェリルへの憎悪を聞いて育った。
ブラッドにとって復讐は必ず為さねば成らぬものだった。
思っていたよりも早く復讐の機会に巡りあったが喜びはなく、気持ちは晴れなかった。
(あんな浮気男、別れて当然なのに、なぜ目を覚まさないんだ!)
罪悪感と焦りが募る。
(このまま死んでしまうのか……?)
シェリルの痩せこけた頬を撫でるが、ピクリとも反応を示さない体に憂鬱な気持ちになった。
こんなに美しい女がいるのかと、初めてシェリルを見た時に思った。
豪奢な金色の髪を見れば近寄って触れたくなり、翡翠の瞳は見る者を魅了する輝きを放っていて、独占欲を掻き立てられた。
なによりブラッドが気に入ったのは笑顔だった。シェリルが微笑むと心が熱くなり、胸が高鳴った。
復讐する相手でなければ、恋に落ちていたかもしれない。
だからこそ、シェリルが思いを寄せる婚約者の男に嫉妬し、どのような人物なのか調べあげた。
その男は、シェリルという婚約者がいるというのに、他の女と情を交わし、複数の愛人がいた。
男のシェリルに対する裏切り行為はそれだけではなかった。
ブラッドは、シェリルへの復讐の駒として利用するために、婚約者の男に接触し、婚約を破棄するように唆した。
だが、その時に見たシェリルの涙と悲痛の声がはブラッドの心に苦痛と動揺をもたらした。
(復讐するのが当たり前だと思っていた。だが、シェリルがいったい何をしたと言うんだ? 親は選べないじゃないか)
ブラッドにとって、復讐が全てだった。だが、この時、初めて悪意を植え付けた親に疑問を抱いた。
(もう一度だけでいい。シェリルの瞳が見たい)
シェリルが目を覚まさないことで、じわじわと心がすり減っていくのを実感していた。
シェリルは願いとは裏腹に、日に日に衰弱し、死に近づいていった。
(……きっと、もう目を覚まさないだろう。それなら、最後に…)
このころにはシェリルを愛していることに、否応なしに気がつかされていた。
ブラッドはシェリルに口付けた。その唇は血色が悪く、ひんやりと冷たかった。
(こんなことになるなら、復讐なんてするんじゃなかった…)
ブラッドの人生の大半は復讐に彩られていたから、愛する女性と共に、穏やかな家庭を築くのが夢だった。
(俺はシェリルのことを……)
だが、その夢がもう叶わないことに、ブラッドは絶望した。
復讐は叶った。
ブラッドは、結婚間近だったシェリルの婚約者に接触し、言葉巧みに婚約を破棄するように煽った。
「この結婚は、僕の意思など関係ないのだよ。所詮、親が決めた婚約者だしね」
当初は思い悩んでいた婚約者も、ブラッドの口車に乗せられ、婚約破棄を決意したようだった。
「僕は貴方を愛することが出来ない。だから、この婚約は破棄する」
シェリルは婚約者に告げられた一方的な別れの言葉に悲鳴を上げ、現実を受け入れることが出来なかったのか、失神した。
シェリルは失神した際に転倒し、後頭部を打った。打ち所が悪かったのか、昏睡状態に陥り、シェリルは眠り続けた。
(……今日も目を覚まさない、か)
翌日にでもなれば、目を覚ますだろうと楽観視していたが、1日経っても、2日経ってもシェリルは目を覚ますことはなく、一週間が過ぎようとしていた。
ブラッドは、当初の見通しが甘過ぎたことを認めるしかなかった。
婚約破棄など、ブラッドにとって復讐の序章でしかなかった。
ブラッドの両親が味わった苦悩は、こんなものではなかった。
もっと苦しませてシェリルに復讐をする計画だったが、どうやら思っていたより繊細な心の持ち主だったようだ。
ブラッドは両親からシェリルへの憎悪を聞いて育った。
ブラッドにとって復讐は必ず為さねば成らぬものだった。
思っていたよりも早く復讐の機会に巡りあったが喜びはなく、気持ちは晴れなかった。
(あんな浮気男、別れて当然なのに、なぜ目を覚まさないんだ!)
罪悪感と焦りが募る。
(このまま死んでしまうのか……?)
シェリルの痩せこけた頬を撫でるが、ピクリとも反応を示さない体に憂鬱な気持ちになった。
こんなに美しい女がいるのかと、初めてシェリルを見た時に思った。
豪奢な金色の髪を見れば近寄って触れたくなり、翡翠の瞳は見る者を魅了する輝きを放っていて、独占欲を掻き立てられた。
なによりブラッドが気に入ったのは笑顔だった。シェリルが微笑むと心が熱くなり、胸が高鳴った。
復讐する相手でなければ、恋に落ちていたかもしれない。
だからこそ、シェリルが思いを寄せる婚約者の男に嫉妬し、どのような人物なのか調べあげた。
その男は、シェリルという婚約者がいるというのに、他の女と情を交わし、複数の愛人がいた。
男のシェリルに対する裏切り行為はそれだけではなかった。
ブラッドは、シェリルへの復讐の駒として利用するために、婚約者の男に接触し、婚約を破棄するように唆した。
だが、その時に見たシェリルの涙と悲痛の声がはブラッドの心に苦痛と動揺をもたらした。
(復讐するのが当たり前だと思っていた。だが、シェリルがいったい何をしたと言うんだ? 親は選べないじゃないか)
ブラッドにとって、復讐が全てだった。だが、この時、初めて悪意を植え付けた親に疑問を抱いた。
(もう一度だけでいい。シェリルの瞳が見たい)
シェリルが目を覚まさないことで、じわじわと心がすり減っていくのを実感していた。
シェリルは願いとは裏腹に、日に日に衰弱し、死に近づいていった。
(……きっと、もう目を覚まさないだろう。それなら、最後に…)
このころにはシェリルを愛していることに、否応なしに気がつかされていた。
ブラッドはシェリルに口付けた。その唇は血色が悪く、ひんやりと冷たかった。
(こんなことになるなら、復讐なんてするんじゃなかった…)
ブラッドの人生の大半は復讐に彩られていたから、愛する女性と共に、穏やかな家庭を築くのが夢だった。
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だが、その夢がもう叶わないことに、ブラッドは絶望した。
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