囚われのエクストリテ

猫パンチ三世

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第二話 聖者の行進

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 騒ぎの後、二人は気まずい雰囲気を漂わせながら昼食を取っていた。
 突き抜けるような青空だというのに、二人は工場内にある広場のベンチに座って黙々とパンを齧る。
 和弘はチラチラと真一の方を見て、どうやって先ほどの出来事の話をしようかと様子を伺っていた。

「……さっきの人、大した事なくて良かったよな」

「あ……ああ! 本当にな」

 和弘の視線にずっと気付いていた真一は、気を利かせて話を切り出した。
 彼の気遣いに気付いた和弘は、嬉しそうに声を上げる。

「なあ……真一、その……さっきはありがとな」

「気にしなくていいよ、大した事をしたわけじゃない」

「でもお前がいなかったら……俺……」

「俺がああいう風にしなくても、他の誰かがお前を庇ったさ。お前が正しいって事は、あそこにいた人みんな分かってたよ」

「……そうかな?」

「そうさ、間違いないよ」

 本当に良い奴だな、和弘は心の中で小さく笑う。
 彼は真一と知り合ってそれなりに長いが、まだ真一が誰かと争っている所を見た事がない。
 誰かの悪口も言わない、喧嘩もしない、仕事も真面目に卒なくこなす。あまりにできた人間のため、本当に同い年かと疑ってしまう時もある。

「ただ……一応友人として一つ忠告するなら……」

「忠告するなら?」

「謝って許してもらえる相手とは、戦うなって事かな。意地とか色々譲れないものはあると思うけどさ、さっきみたいに謝れって言われたら謝るのも手だよ」

「それで解決するかね? ああいうのは謝ったら調子乗って次から次へと要求されるぜ?」

「でも今回みたいな事もある、謝って許してもらえればそれが一番だよ」

「へえ、珍しく熱く語るな。なんかそれ関係であったのか?」

 パンを齧りながら話す和弘を見て、真一は静かに笑う。

「……昔さ、謝っても許してくれない相手に会った事があるんだよ」

「そりゃ災難だったな、ろくでもねえ奴だったろ? あいつみたいにさ」

「ああ、本当に……最低だったよ」

 真一は手に持っていたパンを、いつもよりも少し荒々しく噛みちぎると、強く噛み砕いだ。

 それからいつものような下らない話をし、二人は昼食を終え仕事場に戻るために歩き出した。
 
「そういや週末よかったらまた家に来いよ」

「さすがに悪いよ、先々週もお邪魔したばっかりだし」

「大丈夫だって、親父もお袋も喜ぶしよ。それに妹もお前に会いたがってる」

「いや……でもなあ」

 二人がそんな話をしている時だった。

 工場内にけたたましいサイレンが鳴り響く、尾を引く体の底に響くような音だ。

「な……なんだ? こんなサイレン今まで聞いた事ないぞ?」

「これ……は」

 響くサイレンの音、真一は以前その音を聞いた事がある。
 忌まわしい記憶、全てを失ったあの日にも同じ音が響いていた。

「なあ真一、お前このサイレンがなにか知ってるか?」

 そんな事を言いながら、和弘は真一の方を見た。
 真一の顔は青ざめ、体は恐怖に震えている。

「真一……?」

「来る……あいつが……あいつらが」

「あいつら? なあ……あいつらって……」

 風が吹いた。
 気持ちの良い強い風が、二人の間を吹き抜けた。

 そしては現れた。

 雪のように美しく白い四枚の羽、体表は緑と白が混ざり合った色をしており、両の手は胸の前で合わさっている。
 顔に当たる部分には凹凸は無く、つるりとした剥き出しの卵のようだ。
 
 大きさ三十メートルの羽のあるのっぺらぼうの人間が、両手を合わせて空に浮かんでいる。
 それは形容しがたい不気味さと、抗いがたい神聖さを兼ね備えていた。

「なんだ? 見てみろ、第一工場の真上だ」

 近くにいた作業員たちは、物珍しそうに広場に集まって来た。
 それは、第一工場と呼ばれる建物の上で静止している。二人とそれの距離はおよそ三百メートルほどだった。

「なんか気味悪いな……」

 突如として現れた異形の存在に、和弘が顔をしかめると同時に、真一は彼の腕を掴んでその場を離れようとした。
 
「ちょ……おいどうしたんだよ!」

「早く、早くあいつから離れないと……!」

「離れないとって……お前あいつが何なのか知ってるのか? なんなんだよあれ、教えてくれよ」

「そんな事はどうでもいいんだよ! とにかく今はあいつからできるだけ離れないと駄目なんだ!」

 初めて聞く友人の怒鳴り声、それはあの宙に浮かぶ何かが恐ろしいものだと確信するには十分だった。

 その直後、それの後ろに黄金色の光輪が現れた。
 それを見た真一は、状況を飲み込めない和弘の手を強引に引き工場の入り口へ走る。

 黄金色の光輪は、じわじわと光を溜め込んでいるように見える。

「早く! 走れ!」

「わ……わかった!」

 二人が入り口まで十数歩という所で、その光輪からまばゆい光が放たれた。
 
 眩しく熱く、優しい光。
 光は建物の外にいた人間を、等しく照らした。

 二人の足は止まらない、彼らは野次馬の一人の横を駆け抜けた。

「なんだぁ……この光、はは……何かすげぇ……気持ちいい……」

 二人が駆け抜けた直後、その野次馬は光の中に溶けて行った。
 恍惚とした表情を浮かべ、人生の絶頂と共に消えて行った。

 二人は扉を開け、建物の中へ飛び込んだ。

 息を切らしながら、二人は地面にへたりこむ。
 真一が隣を見ると、和弘は体の震えを止めるように肩を手で押さえていた。
 
「なあ……真一、俺……おかしいんだ。あの光を浴びたら、なんかすげえ……気分がよくて……よすぎるくらい気分がいいんだ……」

 彼の口の端は、ひくひくと震えている。
 得体の知れない何かから放たれた光、それを浴びた事による恐怖。本来であれば笑う事など考えられなな状況で、和弘の口は何者かに歪められ、無理矢理に笑顔をつくらされそうになっている。

「……大丈夫、お前はおかしくなんかない。とにかく今は逃げないと」

「あ……ああ」

 真一は和弘の肩を叩き、立ち上がらせる。
 
 工場内は混乱に満ちていた。
 窓から見える異形の存在、突然の光。
 それに怯え、恐怖し、工場内の人間たちはパニックに陥っていた。

 怒声、悲鳴、何に祈るのか祈りの言葉も聞こえてきた。
 
 その混乱の中を二人が歩き続けると、何か大きなものが建物の上を通りすぎていった。
 建物全体が大きく震えた事からその何かはかなり大きく、そして速く動いていた事が分かった。

 だが二人はそれの正体を探る余裕もなく、よろよろと歩き続けていた。

「これからどうする……?」

「とりあえずお前は家に行って、家族と合流するんだ。それからの事はそこで考えればいい」

「真一は……お前はどうするんだ?」

「俺の事は気にするな、どうせ俺の家族はもういない」

「それは……いや待て、まさか……あれに?」

「……ああ。でもそれは終わった話だ、とにかく今はお前が生き残って家族に会えればそれでいい」

「……そんな話、初めて聞いたよ」

「まあいい、とにかくこのまま建物の影に隠れて進もう。あの光はできるだけ浴びないほうがいい」

 その時だ。
 何か大きな物が落ちてくる音がし、やがてそれは工場の屋根の上にぶつかった。
 
「なんだ!?」

 天井を見上げた二人が見たのは、ひび割れていく天井と上から落ちてくる部品たちだった。

「危ない!」

 真一は和弘を突き飛ばす、崩れた天井が二人の間に降り注いだ。
 
「真一! おい! 大丈夫か!?」

 舞い上がった埃と、瓦礫の向こうから自分を呼ぶ声に気付き真一は声を上げた。

「こっちは大丈夫だ! 俺の事はいいから早く行け!」

「バカ野郎! お前を置いていけるか!」

「この瓦礫の山は越えられない! いいから早く行ってくれ!」

 和弘は自分の無力さに、思わず拳に力が入る。
 だが目の前の瓦礫がどうしようもないのは、誰の目にも明らかだった。

「絶対生き残れよ! また一緒に飯を食うんだ! 約束だぞ!」

「分かった! 約束だ!」

 真一は和弘の遠ざかっていく足音を聞いてから、元来た道を駆け出した。
 もう前には進めない、建物の崩落は想像以上には広範囲で起きたらしく元来た道を戻るしか彼に選択肢はなかった。

 最初に飛び込んだ扉を開けると、あれは最初にいた所から工場敷地内中央に移動していた。

 その姿を見て、激しい嫌悪感に駆られた彼の頭上を黒い影が飛び去っていた。
 それが移動したときに起きた風圧に思わず目を閉じ、再び開かれた彼の目に飛び込んできたのは、黒く大きな無機質の身体を持つ機体だった。

 機体は空を飛び、あの異形へと向かっていく。
 二・三回ほど通り過ぎ様に攻撃を加えているが、その攻撃が効いているようにはとても見えなかった。

「なんだ……あれ?」

 無意味な攻撃を繰り返す黒い機体を、まるでハエでも叩くように異形は吹き飛ばした。
 吹き飛ばされた機体は、そのまま真一のいた工場の隣の建物に突っ込む。
 異形は表情の作れない顔を、そちらに少し向けてから再び進みだした。

 真一は目の前で起きた事に呆然としていたが、はっと我に返った。
 そして恐る恐る黒い機体が堕ちた建物へと歩きだした。

 なぜそうしたのか、なぜすぐに逃げなかったのか。
 彼にもそれはよく分からなかった、ただ一つだけ言えるのは。

 彼がその黒い機体に出会う事は、一種の運命だったのかもしれない。 

 少し歪んだ扉を開けると、建物の中は機体が堕ちた時の衝撃で煙立っていた。
 真一が建物に入ってすぐは、人のうめき声のようなものがちらほらと聞こえていたが、それもすぐに聞こえなくなった。

 堕ちた機体の大きさはおよそ二十メートル、黒い装甲に覆われている。
 頭部は三叉槍のような形状をしており、三つの尖った部位には青色のバイザーが装備されている。
 胸部装甲の下には、赤く光る巨大なガラス玉のようなものが見えるが、今はその輝きを失っていた。
 人間でいう太ももから下が無く、歩行には向かない反面、足の部分がそのまま大型のスラスターになっている。これならば、先ほど見せた飛行能力もうなずけた。

 そして一際目を引くのが、その巨大な両腕だった。
 だらりと伸びた長く太い腕は、全長よりも長い。
 手の平には鋭く尖った五本の指があり、手の平には何に使うのか巨大な穴が開いている。

 全体として人型から大きくかけ離れたその黒い機体は、天を仰ぐようにその動きを止めていた。 
 
「なんだよ……なんなんだよ……これ」

 そんな呟きが漏れてすぐだった。
 凄まじい爆発音、初めの一回を皮切りに次々と音は続いた。

 外を見ると、あの異形に向かってミサイルや砲弾が次々と撃ち込まれている。
 撃ち込まれた兵器は、異形の下の建物をだけを破壊している。真一が見ただけでも数十発のミサイルや砲弾が撃ち込まれたが、それらが異形の身体に傷を付ける事はなかった。

 爆風は、彼がいる建物の中にまで吹き込んできた。
 その攻撃は、半ば意地になっているような、効かないと分かっていながら撃っているようなそんな投げやりさが感じられる攻撃だった。

『もっとこっちへ来るんだ、そこは危ない』

 機体から声が聞こえた、男の声だ。
 真一は驚いたがその声が言う通り、彼が立つ場所よりも機体の近くの方が安全そうだった。

 彼が機体の腰辺りまで近づくと、胸の辺りの装甲が彼を誘うように開いた。
 
『手に乗るんだ』

 その言葉に従い真一は、手のひらに乗る。
 するとすぐに腕が動き、彼を胸元まで連れて行ってくれた。

「あなたは……」

 コクピットの中にいたのは、視察に来ていた白髪の軍人だった。
 真一は手の平から降りると、コクピットの入り口に近づいた。

「これを……あなたが動かしていたんですか」

「……まあ、な。だがもう……無理みたいだ」

 男がゴホゴホと咳き込むと、鮮やかな赤い液体が飛ぶ。

「だが……君を見つける事ができたのは幸運だった。最後の最後で俺はツイていたらしい」

 男はそう言って小さく笑う、真一には男の言葉の意味が分からなかった。

「どういう意味ですか?」

「俺はもうこいつに乗れない、だから代わりに君が乗るんだ」

「なっ……急に何を言い出すんですか!? 俺がこんなの動かせるわけないじゃないですか!」

「大丈夫、難しい事はなにもない。こいつは乗った人間の思考で動く、君でも十二分に動かせる」

 真一は全く状況が飲み込めなかった、なぜ自分がこれに乗らなければならないのか。
 そもそもなぜ目の前の男は、これに自分を乗せようとするのか。

「どうして……俺なんですか?」

「君が、俺と同じ目をしていたからだ」

 男はボロボロの身体をどうにか動かし、真一の前まで来た。
 手を伸ばせば届く距離まで。

「あの工場での一件の時、どうして君はああいう風に動いた? 他の誰もが軍人という立場に委縮し、拳銃に怯えていたにも関わらず、なぜ君は動けた」

「それは……あいつが友達だから……」

「それだけか? 友人だからという理由だけで、銃口の前に君は飛び出したのか?」

「それは……」

「君は恐れていた。だがそれは理不尽に屈する事でも、銃で撃たれる事でもない。自分の大切な人間が奪われる事を、何よりも恐れていたんだ。違うか?」

 真一はその言葉を否定できなかった。
 和弘が拳銃を向けられた時、彼は自分の背から嫌な汗が噴き出すのが分かった。
 脅しかもしれない、本当は撃つ気が無いかもしれない。

 そんな言葉は浮かびもしなかった。
 世の中には、理不尽に突然に命を奪う存在がいるという事を彼は知っていたのだか。

「これは俺の勘だが……君はあれに誰か……大切な人を奪われたんじゃないか?」

 その言葉は、真一の記憶の中にある一番触れたくない記憶を呼び覚ました。

 光に包まれ笑いながら消えていく両親と妹。
 父とはキャッチボールをするはずだった、母とは一緒に料理を作るはずだった。
 妹とは、喧嘩していたから謝ろうと思っていた。

 怒った、泣いた、そして最後はみんなで笑った。
 それはあんな偽物の笑顔じゃない、生きていたからこその自然な、人間としての『生きた笑顔』だ。

「両親と妹を……」

「俺も同じだ、俺も妻と息子を奪われた。だからこいつに乗った、だがもう無理なんだ。だから俺は君にこいつを託したい、同じ悲しみと絶望を知る君に」

「でも……だとしても……やっぱり俺には無理です……」

 その言葉を聞いた男は、真一の胸倉を強く掴み引き寄せた。
 男の目の色が、口元についた鮮やかな赤がはっきりと見える距離まで彼は引き寄せられた。

「無理じゃない、お前ならやれるはずだ! お前のその目は、何一つ許していない目だ。理不尽を、あいつらを、そして……無力だった……死に損なった自分を許し、受け入れていない目だ! 憎いだろ、許せないだろあいつらが! 大切な人を奪われたその日から、消えない憎しみと絶望の火を抱えて生きてきたんだろ!」

 男の口から赤い飛沫が飛ぶ、真一の胸元を掴む手の力は弱弱しくも強かった。

「……奪ってやるんだ、今度はあいつらから。尊厳を、存在を、命を奪え。こいつはそのための力なんだ!」

 男は息を切らしうなだれた、ずるりと手は真一の胸元から離れていく。

「すまない……少し長く……乗りすぎたらしい」

 真一は呆然と、ただ機体の顔を眺めていた。
 心の奥にあった、どす黒い炎が燃え上がっていく。

 視界は鮮明に、頭は晴れやかに。
 男の言葉は彼にとって、天啓だった。

「乗ります……俺が乗ります」

 彼ははっきりと、自分の中の絶望と向き合った。

「よし、ここに座って。操縦幹を握るんだ、握るだけでいい」

 男は真一をコクピットに座らせると、機体内部に備え付けられていたタブレット端末を使い、機体の設定を彼に移すための作業を始めた。
 コクピットの中はかなり狭く、中で立ち上がればすぐにでも天井に頭をぶつけそうだ。

「悪いがあまり時間がない、操作しながら色々とかいつまんで説明する」

「分かりました」

「まずあれについてだ、あれの正式名称はプレケス。偽りの救済と祈りの塊、人類の敵だ。そしてこいつがそれに対抗するための機動兵器、エクストリテだ」

「どうしてわざわざこんなものを?」

「さっき見ただろう、プレケスに対して通常兵器は効果が薄い。足止め程度がいいとこだな」

「ならこんなものを造っても意味がないんじゃ?」

「こいつにはタルタロスが搭載されている」

「タルタロス?」

「詳しい話は省くが、噛み砕いて言えば搭乗者の憎しみや恨みの感情を増幅しエネルギーに変換するシステムだ。そういった負のエネルギーを纏った武器は、あいつらに効くんだ」

「負のエネルギー……」

「よし、これでこいつはもうお前のものだ。しかしすごいな、融合係数がテスト段階で七十を超えてる。こんな数値を見たのは二回目だよ」

 男はタブレット端末を元の場所に戻し、真一の肩に手を置いた。

「いいか、こいつに乗っていればあの光は無効化できる。あれは人間にしか効かないからな、だが光が効かないとなればあいつらは槍を使う。超高熱の光の槍だ、エクストリテの特殊装甲でもまともに食らえば三秒で装甲が融解する、必ず避けろ。それからあいつらとはまともに組み合うな、近くにいすぎれば希望に食われるぞ」

「わかりました」

「よし……最後だ、俺の絶望を君に託す。あいつらを……一匹残らず……」

「分かってます……」

「ならいい……後は……任せた」

 男はゆっくりと立ち上がった、彼の手がコクピットの入り口に触れた時だ。

「なあ、君は笑って死ねればそれで良いと思うか? 苦しい人生を生きるくらいなら、光に包まれて笑って死んだ方が良いと思うか?」

「それは……」

「すまない、忘れてくれ。ただふと、聞きたくなっただけだ」

 男はそう言って悲し気に笑う。

「あの! あなたの名前は……!?」

「そういう時は、最初に名乗るべきだろう?」

「俺は、真一。草壁真一《くさかべしんいち》です、あなたは?」

「……俺の名前か、さて……なんだったかな」

「え?」

 男はそう言って笑うと、真一の前から消えた。
 それと同時に、コクピットの扉が閉まった。

 暗闇に一人残された真一は、驚くほど冷静だった。
 
 ひんやりとした空気、透き通った頭。

 胸に燃えるは、憎しみの炎。くべる薪は絶望。

 彼はさきほどの質問への答えを、すでに持っていた。

『笑って死ねればそれで良いか?』

 彼は一人、静かに呟いた。

 笑って死ぬ事に意味なんてない、人は笑って生きる事に意味があるのだろうと。
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