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本編
38、運命を知ったアルファ
しおりを挟む「正樹ごめんね。すぐに西条を追い出すから、もうヒート始まっちゃったね、辛いだろうけどすぐに抱いてあげるから」
「うん。もう待てない、はやく、抱いて?」
正樹が自ら櫻井にもたれかかった。俺はイッタイ何を見ている? 俺は櫻井に騙されたお前を救いに来たのに、どうして正樹自ら櫻井にくっついているんだ。
「なに、そんな顔で見ているの? 司、残念だったね、せっかく運命を知らずに葬ってあげようとしたのに……」
「運命……」
「知ってしまったんだろう、運命を。認めたくないだろうけど、ここまできたらもう無理だよ、司」
正樹が妖艶な顔で俺に言う……運命と。
正樹は俺のもとに歩み寄り、俺の手をとると、その指を自分の顔に擦り付けた。今は一体なにが起こっている? 正樹は何をしようとしている? 俺は頭が空っぽになって、ひたすら正樹の香りに酔っていた。
「正樹?」
「でも安心して、運命は司じゃないアルファに抱かれるから、願いが叶って良かったね」
運命は司じゃないアルファに抱かれる。
どういう意味だ、俺がお前の運命なら、どうしてそれを抗おうとする? そんなに櫻井が好きだったのか、いつから? 俺はお前が友達にレイプされるのを阻止したのに、そこから俺の行動は間違えていたのか!? 俺達の歩んできた日々は?
いや、ちょっと待て。
願いが叶って良かったねと言ったか? 願いってなんだ? 俺の願いは正樹と番になることだけだった。正樹は何を勘違いしている? 正樹が取った俺の手を首輪の指紋認証の場所に当てた。ぴぴっ、首輪の外すことのできる電子音が響く。
「さよなら、司、俺の運命だった人……」
だめだ、だめだ、正樹!! 俺の思考戻れ!!!!
俺が呆然としている中、正樹だってヒートに入っているくらいのオメガの香りを出しているのに、どうして冷静に行動をしているのだろうか。俺だけが正樹を運命と認識しているのか? ラットは確実に起こされている、俺の思考が止まる、そして正樹の細い首は風に晒された、俺のうなじが無防備になった。
「櫻井、終わったよ。俺を番にして」
「ああ正樹、よく頑張った、おいで」
ガシャンって首輪が音をたてて床に転がった。正樹は櫻井に抱きつく。
いろんなことがスローモーションで動いていく、その時俺の本能が目覚めた。俺のオメガが他の男にすがり付くなどユルスコトハデキナイ。
こいつは、俺のだ。俺のオメガだ、俺の運命の番!!!!
考えるより、体が動いた。
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