運命を知らないアルファ

riiko

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本編

45、プロポーズ

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 正樹は俺に抱きついて、俺の首すじをクンクンと嗅いでいる。くすぐったいけど、幸せだ。

「司、好き。司の匂いずっと近くで嗅ぎたかった、俺もう我慢しなくていいか? お前の匂いに欲情しても嫌にならない? まだ運命憎むなら、そう言って」
「正樹、俺っ」
「やっぱいい! 何も言わないで、お願い。今だけでいいから抱いて欲しい」

 正樹は今までにないくらい妖艶に誘う。俺はきちんと言葉を交わして、誤解を解いてもう一度告白してやり直したいから、抱きつく正樹を引き離した。

 正樹は一瞬悲しそうな顔をしたけど、すぐにその手を振り払って、腕を俺の首にまきつけキスをしてきた。

「ふへっ、んんん、ま、正樹?」
「ふっ、んっ、つ、つかさぁ」

 くちゅくちゅと唾液を交わる音が響く、正樹はいつも俺にされっぱなしなのに、今は正樹から俺の口の中に舌を一生懸命入れてきている、うまく動かないのか、唾液は唇からこぼれていく。

 俺はそれを全て吸い取り、今度は俺から仕掛けた。息もできないくらいのキスを交わすと、正樹は微笑んだ。

 これは、俺の知っている正樹? テクニックがない時点で正樹だけどこんな妖艶な表情は初めて見た。照れることなく、俺との口づけを楽しむ正樹。

 なし崩し的に抱いてしまいそうだ。

「正樹、正樹っ、んん、ん? ちょっと、ちょ、待って。止まって!」
「ふはっ、ん? なんだよ、キスもっとしようよ」

 キスをもっとしようよ? 

 正樹が言ったの? したいよ、したい、唇が真っ赤に腫れるくらい吸い付きたいよ!! だけど俺、このままなし崩しはだめだ。いつもそうやって正樹ならわかってくれると自分本位な考えを押しつけて、なんの解決もなんの話し合いもしてこなかった。

 こいつは、斜め上いく思考の持ち主だ。今俺が抱いたら愛しているからとかじゃなくて、最後の記念とか思われなくもない。悲しいけど、正樹なら素直に行動を受け取らない、変な考えを持つはずだ。

 せっかくの正樹からのはじめてのお誘いを、俺は断腸の想いで諦めた。

「正樹、キスはする。この先一生、俺は正樹としかキスしない」
「えっ?」
「この先一生、俺は正樹しか抱かない。この意味、わかる?」
「それって……どういうこと?」

 きょとんとする正樹。だめだ、正樹はこんな周りくどい口説き方で理解できる人種じゃない。俺はプロポーズには、お前の味噌汁を飲みたいって言う言葉に憧れていたけど、この言葉は使うことはないだろう。なにせ、相手は正樹だ! 正攻法で行くしかない。

「正樹を愛している、俺のつがいになって欲しい」
「えっ!? なんで? 俺、お前の運命だよ。お前運命とはつがいにならないって言っていたじゃん、この後俺との最後のエッチを楽しんだら、お前はどこぞのアルファに俺をつがわせるんだろ、いいよ。お前と最後に触れ合えるなら俺はそれでいいよ。お前の大嫌いな運命を一生見ることなんて、俺はさせられないから、俺、お前が好きだからそんなこと、させられない」

 正樹!! まさかそこまでの覚悟で俺を誘った? 巣作りまでして本気で俺に向かってきた。しかも、最後だとわかって? どうして! どうして、お前はそこで諦めるんだよ。本当に好きなら奪いにきてよ!

「俺、あの時運命を他のアルファにつがいにさせるって言ったのは、正樹じゃない運命ならそんなの要らないって意味だったんだ。俺、強い薬飲んでいて運命に気づかなくて、正樹には相当辛い思いさせたって思う。本当にごめん、謝ったって正樹のその時の時間は戻らないけど、でも本当に俺は出会った頃から正樹だけなんだ、正樹だけしか見ていない。だから、この先も正樹を他の誰かになんてやれない、愛しているんだ。俺は生涯正樹しか要らない!! 俺をまだ好きって言ってくれるなら、俺と正式に付き合って欲しい。そして家庭を築いて一緒に年を取ろう」

 俺の言葉を聞いて、正樹は泣いている。どういう涙? ごめんね、どんなに泣いてももうお前を手放してやらないんだ。

 二人向かい合って触る。正樹はホテルのパジャマを着ていて、俺はパンツ一枚。

 そんな格好でプロポーズは致し方ない、俺はそっと正樹の頬に伝わる涙を手で拭った。

「愛している、俺とつがいになってください」
「お前は、お前は馬鹿だ」
「うん」
「俺がどんなにお前を好きか、一生かかって知っていけ!」
「うん!」
「俺をお前の、司のつがいにして」
「正樹っ!! ありがとう。俺の愛も一生かかって受け止めて」
「ああ、受け止めてやるよ。好きだよ司」

 もう一度言う、俺はパンイチ。世界で一番恥ずかしいプロポーズだが、愛する人の巣の中で二人抱き合い、つがいの約束をした、世界で一番幸せなプロポーズだ。
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