51 / 63
日本編
22、代理人
しおりを挟む僕たちがベッドに篭っている間に、櫻井家が弁護士をたててくれて爽の家に行き、飯田家の代理人としてすべての処理をしてくれた。
弁護士の先生が、どのように番解除という結論に辿り着いたのか、爽から聞き出してくれた。
あの二人は次の発情期が来る前に、オメガ治療最先端の岩峰総合病院に二人で来院した。
爽はヒートの時だけ陸斗と会っていたが、好きな気持ちは冷めて、ただ本能で抱けるというそれだけの関係に嫌気が差していたとのことだった。そこで番解除の画期的な治療法があると知った爽は、陸斗にその話を持ちかけて、陸斗も了承して二人で来院したらしい。
番解除の治療を始めるために、爽は岩峰先生から血液やら精液やらのサンプルの提出と、保健治療外という説明を受けて莫大な治療費を支払うという手続きをしただけで、後は陸斗一人で来院していたらしい。それ以来二人は会っていなかった。
ちなみに、番のアルファの消息が掴めない場合などのオメガ主体の治療は保険が効く。アルファからの番解除は保険外で、アルファが実費で治療費を払うことになっているらしい。それほどに、してはいけない行為なのだ。アルファがその治療を怠るようなら、法律で罰せられる。
爽は合法的に手続きをして、陸斗と終わったと言った。
岩峰先生が陸斗の意思を尊重したので、爽は陸斗の妊娠を知らない。爽は発情期に呼ばれないことに、治療がうまくいったのだろうと思っていたらしく、陸斗のことは考えてもなかったと。
だから今回、弁護士の話を聞いて驚いていたらしい。陸斗が番解除の影響で、記憶喪失になったことに、さすがに爽も罪悪感を持ったみたい。
陸斗は、爽が用意した家に住んでいて、本当にたった一人でずっと暮らしていたのだ。治療さえ始めれば、もう関係ないと爽は陸斗の住む家に行くことはなかったらしい。それまでも爽とはヒートの時だけ顔を合わせて、あとは一人。陸斗はどんなに寂しい思いをしていたのだろうと、胸が苦しくなった。今となっては陸斗のその時の気持ちを知ることはできなくなったけど、そんな思いは記憶とともに忘れられて良かった。
陸斗の住んでいた家は、所持品含めそっちで処理してくれと伝えた。そして治療のために、二人が番だったという事実を本人に伝えないこと。爽が引き取った子供の親が陸斗だと、誰にも言わないこと。たとえ子供にも実の母親の事実は言うなと約束させた。
出産経験があることを、陸斗自身が忘れているのだから、知らない方が今後の治療のためと言われれば、そうするしかない。そもそも嫁の子供として育てているから、子供も実の母親は一緒に暮らしている爽の嫁だと思っているとのことで、爽自身も都合が良かったのだろう。それはそれで凄く腹立たしかった。
陸斗との一切を誰にも言わない、そして飯田家との接触も禁止し、それをすべて書面で契約を交わす。
本来なら一生治療費を支払うというのが、法律で決まっているらしいが、向こう三年分の治療費を一括で病院に前払いすることを慰謝料とした。
お金でさえも、繋がっていたくない。飯田家は一切お金を受け取らないと決めた。櫻井家が治療費を払うと言ってくれているのもあるけど、陸斗くらい僕が養える。
とにかく、爽との関係の全てを清算できたのは嬉しかった。櫻井家の顧問弁護士さんという、最強の人のお陰ですんなりと片付いた。
爽は、別れたかった番が自分を忘れて、子供の存在すらも忘れてくれて、一生かかる治療費も三年分で済んでむしろラッキーだったみたい。弁護士の先生がそういう印象を受けたと言っていた。
最低だなって思うけど、もういい。いつまでも恨むだけ時間も、心ももったいない。完璧に縁が切れるなら僕にも、記憶はないけどきっと陸斗にとっても喜ばしいことだと思う。
そんなスッキリしたある日、類と司のホテルに来ていた。司に入籍の報告と、来年ここで結婚式をするための打ち合わせ。
それが終わったら、明日から類と沖縄に行くんだ。楽しみだな‼ その前に陸斗に会いに病院にも行って、今日も忙しいぞ。
司は、仕事ができる男みたい。まだ高校三年生なのに、もう国内のホテル事業を手がけているんだって! 正樹と過ごす発情期のための高級ヴィラまで建てたとか!? ネチ男なのは正樹関連だけらしく、ビジネスではかなり優秀なアルファということがわかった。僕に対しても別に変なところもないし、むしろ感じが良くて驚いた。
類と話が進んでいるみたいで、穏やかだった。
打ち合わせも終わった頃、ビリーからの連絡が類に入った。あれから類はビリーの話を受けた。ご両親も喜んでいた、そりゃラノキリアの日本支社の社長だよ‼ 凄いことだもんね。
「海斗、ごめん! 急にビリーが日本の物件確かめてこいって、青山と銀座に二軒抑えたから、俺の目で今日中に確かめろって、まだ俺ラノキリア入社したわけじゃないのに、もうこき使われている」
「ふふ、でも僕たちが日本にいる間に役に立てるならいいじゃない! がんばろう、僕も一緒に行くよ」
「いや、海斗はここ数日いろいろあって疲れているだろ? 西条、悪いけど部屋一つ空きない? 海斗をホテルに送る時間なさそうだから、いったん海斗をこのホテルで預かってくれない? 夜に迎えに来るから」
類が司に話を振った。
「ああ、いいよ。スイートはもう埋まっているから、ランク下がってもいいか?」
「ああ、海斗を一人休ませるだけだから助かる、ありがとな」
アルファ二人で話が進んだ?
「えっ、僕一人でホテル戻れるよ?」
「「ダメだ‼」」
あれ? 二人でハモった? なぜ他人の司まで僕にダメ出しするんだろ。
「いや、海斗は有名人だから一人はだめ」
「そうだ、カイに何かあったら、正樹に恨まれんのは俺だ。それから正樹が会いたがっているから、良かったらここにいてくれると助かる。正樹呼んでいいか?」
「ま、正樹? う、うん会いたいな。じゃあ、類は気をつけてね、司ありがとう」
そうして、司からキーを預かった。部屋まで送ると言われたけど、エレベーター前で大丈夫って言って断った。
41
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻本作品(オリジナル)の結末をif(運命の番)ルートに入れ替えて、他サイトでの投稿を始めました。タイトルは「一度目の結婚で愛も希望も失くした僕が、移住先で運命と出逢い、二度目の結婚で愛されるまで」に変えてます。
オリジナルの本編結末は完全なハッピーエンドとはいえないかもしれませんが、「一度目の〜…」は琳が幸せな結婚をするハッピーエンド一択です。
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
徒花伐採 ~巻き戻りΩ、二度目の人生は復讐から始めます~
めがねあざらし
BL
【🕊更新予定/毎日更新(夜21〜22時)】
※投稿時間は多少前後する場合があります
火刑台の上で、すべてを失った。
愛も、家も、生まれてくるはずだった命さえも。
王太子の婚約者として生きたセラは、裏切りと冤罪の果てに炎へと沈んだΩ。
だが――目を覚ましたとき、時間は巻き戻っていた。
この世界はもう信じない。
この命は、復讐のために使う。
かつて愛した男を自らの手で裁き、滅んだ家を取り戻す。
裏切りの王太子、歪んだ愛、運命を覆す巻き戻りΩ。
“今度こそ、誰も信じない。
ただ、すべてを終わらせるために。”
【本編完結】偽物の番
麻路なぎ
BL
α×β、オメガバース。
大学に入ったら世界は広がると思っていた。
なのに、友達がアルファとオメガでしかも運命の番であることが分かったことから、俺の生活は一変してしまう。
「お前が身代わりになれよ?」
俺はオメガの身代わりに、病んだアルファの友達に抱かれることになる。
卒業まで限定の、偽物の番として。
※フジョッシー、ムーンライトにも投稿
イラストはBEEBARさん
※DLsiteがるまにより「偽物の番 上巻・中巻・下巻」配信中
※フジョッシー小説大賞一次選考通過したよ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる