運命を知りたくないベータ

riiko

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番外編

2、幸せの真ん中で 1 ~ルイ視点~

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 ラノキリアジャパンも軌道に乗って、モデルを休んでいた海斗かいとと一歳になったそらと家族三人楽しく暮らしていたので、心にも余裕があった。穏やかなそんな日のことだった。

 海斗の弟の陸斗りくとは、あきらが大学生になると仕事を始めたいと言った。社会に出すのも不安そうだった海斗と明は、陸斗のやる気を信じることにして精一杯見守ることにした、そんな経緯の話。

 ある日、陸斗が花屋でバイトをしてみたいと明に相談した。そして明が俺に相談してきた。

「陸斗の元つがいって、たしか花関係だったよな? 華道家とかなんとか? なぜか陸斗が花に興味を持っていて仕事にしたいって言いだしたんだけど、どう思う?」
「どうって……記憶に関係するかとか?」
「そう。今いい具合に過去を忘れて俺と向き合ってくれているからさ、ちょっと不安なんだよ。陸斗の実家って、いつも行くと花が沢山あるだろ? あれって陸斗が活けていたんだって。陸斗の母親が感心していたし、それくらいの趣味なら問題ないと思ってさせていたって言っていたんだけど、まさか仕事にしたいとはさ」
 
 そう言って、明は陸斗が活けた花の写真を見せてきた。スマホに沢山写るそれはとてつもなく豪華で、とても素人が活けたようには見えなかったし、家庭に飾る花というよりは、パーティーなどに出してもおかしくないような、フラワーアーティストが作ったような仕上がりだった。

「す、凄いな」
「ああ、俺も驚いてお義母さんに聞いたんだよ。お花習っているんですかって。そうしたら陸斗が独学でやったって言うし」

 そこに俺たちの可愛い一人息子の空を抱っこした海斗がやって来た。

「それなんだけど。もしかして陸斗は、一人の家であのつがいを待っている間、花の勉強でもしていたんじゃない? つがいでいた……記憶を失くした五年間は、あの憎きアルファのことを好きだったみたいだし。あいつの家には迎え入れてもらえなかったなりに、陸斗は認めてもらえるように一人で勉強していたのかなって」
「えっ、なんだかそれは、健気というか……切な過ぎる」

 記憶がない過去の陸斗を受け入れたとはいえ、明にはキツイ話だったと思う。だけどこれからの陸斗を受け入れていくつもりなら覚悟を持って聞いてもらいたいと思って、海斗なりに話を進めていた。

「陸斗にいつから花に興味があったのって聞いても、覚えてないから記憶失くした時の趣味だったのかなって言って。そのことは、僕とお母さんとで陸斗から聞いていたんだ。ごめん明、言っていなくて」
「そういうことか。いいよ、海斗さん。俺に気を使わなくても、なんだか納得した。記憶を失くしてもその時に覚えたことは好きになっていたってことね。それって凄いことじゃん! 陸斗が一人で孤独に耐えていた時に救いがあったって知れて俺は少し嬉しいよ。だったら俺、陸斗を応援する」

 明は凄いな、っていうかその話は俺、初耳だった。

「海斗、俺に秘密を持ったの?」
「えっ、違うよ、秘密じゃない。ただの親子の会話で想像の話だから真実かは分からないし、僕とお母さんもそんなに深刻に考えていなかったから、類、ごめん。全て話していなくて」
「俺にとっては、海斗の全てを知っていたい。深刻な話じゃなくても、して?」
「うん、分かった」

 海斗が俺の唇に軽くキスをした。ああ、嫁が素直で可愛い。

「おえっ、お前っ、糖度マシマシじゃねぇか! 友達の前で気持ち悪い理不尽な嫉妬みせるなよ。これだからアルファは……」
「明もこれくらいの執着を陸斗に見せて欲しいな。いいでしょ、僕の旦那様は!」

 海斗は俺に寄り添って明に見せつけていた。俺は海斗の胸に抱える空と海斗を抱きしめた。海斗は俺の嫉妬を喜ぶという、とっても出来た嫁だった。

「うわっ、嫁まで執着の塊とか……。陸斗の教育に悪いからあまり二人がゲロイチャなのは見せるなよ、俺たちはクリーンに健全に愛し合っていくんだからな。俺と陸斗にバースのネチネチはいらないんだよ」
「はいはい、明には感謝しているよ。陸斗を深く想ってくれていて」

 海斗の言ったことは本当だった。海斗はいつも明には頭が上がらないって言っている。兄では出来ないことを、恋人である明がスマートにこなしてくれて、いつもそばにいてくれて助かっていると。俺だって、海斗を喜ばせてくれる明に感謝をしている。

 そんな感じで明が陸斗のバイトの面接に立ち会うという、なんとも過保護なサポートの元、陸斗は仕事を始めた。それがとても楽しいらしく、二年すると正社員として雇われた。明はまだ大学生で、陸斗は社会人。そんな二人は穏やかに時間を重ねていき、当初高校卒業してから結婚というのも、陸斗の社会人慣れを待つことにした。休日デートを重ねて、明が大学を卒業してから結婚をした。

 そしてそんな二人の出会いから数年経ち、空も成長して四歳になった。いまだ陸斗は空のことを産んだことは思い出していないようで、俺たち櫻井家は変わらず幸せに暮らしていた。海斗はモデルの仕事を再開して、なんと空がこの間初めてモデルの仕事を海斗としたんだ。俺は感動で目から水が零れた。俺たちの未熟児だった空が、こんなに立派になって。

 そんな俺を見て妻と子供は笑っていた。そして俺の実家からは怒られた。可愛い孫の初モデルがなぜサクラジュエリーのモデルじゃないんだと。それほど空は俺の両親からも愛されていたけれど、過剰な愛情が少し重い。実家に行くたびに空が甘やかされているが、まぁ仕方ない。空は飯田家の良いところだけを受けついだ天使だからな。

 そんな穏やかな幸せの途中経過だった。
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