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第二章 学園生活
18、友人カップル
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学園の前から馬車に乗り、舗装された道をゆっくりと進んだ。
王都の道はとても快適で、俺の住んでいた田舎町とは全くと言っていいほど見える景色も道も違う。歴史ある建物も、城下町の店も、とても新鮮で目新しくて、いつ通っても楽しかった。
それなのにレイは景色を楽しむことなく、彼女……エリザベス嬢についてずっと話していた。レイは王都から少し離れた領土に住んでいる伯爵家の三男だ。だからといって、俺の田舎と同じだとは限らない。レイを見ていたら洗礼されているし、こないだの観劇の施設の豪華さに驚いた様子はなかった。だからレイの実家も、ここと同じように舗装された美しい街なのだろう。俺くらいな田舎者でなければ、この感動は分からないらしい。
そんなレイはとにかく彼女のことが好きなんだそうだ。話を聞いている限り、エリザベス嬢は普通のご令嬢には思えなかった。
ひとつ年下の彼女は学園通いの他に、すでに父親の仕事も手伝っていて、王宮へも出入りをしているとか? それから格闘技に興味があって、身体能力の高い俺に会いたくてしかたなかったって……俺に興味あるところって、そこ? なんていうか、貴族のご令嬢って凄いところに興味持つんだね。
とまぁ、こんな感じでレイの話を一方的に聞いていると、途中思わず驚いたのでレイに聞き返した。
「えっ、エリザベス嬢って同じ学園だったの?」
「ああ、そうだよ。でもほら、エリザベスは公爵令嬢だろう。だから今まで婚約者がいたんだよ。そんな中、俺達は恋におちたんだ。それで相手と婚約を解消するために時間もかかったし、おおっぴらに次の男が現れるわけにいかないから、俺達の仲は秘密だったんだ」
略奪愛の婚約なんて、さすがレイだ。
「そうだったんだ。お前も苦労したんだな」
「いや、そんなことないよ。それにエリザベスにはご令嬢たちと貴族社会があるだろう。だから学園では会わないことにしているんだ。無事に婚約発表をするまでは秘密の仲ってわけだ、燃えるだろ? 先日、王家には申請したけど、正式なお披露目はまだなんだ」
「なんか、お前らしいわ」
貴族同士の結婚は王家の承諾がいるらしい。それにしても、秘密の恋か。俺の場合は、秘密の閨係だ。同じ秘密でも偉い違いだな。
エリザベス嬢の話を聞いていると、しばらくして馬車が停まった。レイは先に出て、自然に俺に手を差し出してくる。ああ、こういうところが貴族の男だよな。完璧なエスコートに笑った。
到着したのは、王都で一番おしゃれなサロンだった。
クラスメートから、あのサロンは凄いという話を聞いたことがあるから分かった。こいつはさすが伯爵家のお坊ちゃんだ。こないだの観劇といい、このサロンといい、高級なところに行き慣れている雰囲気といい、そしてタレ目で目の下にあるホクロが妙にセクシーで甘い見た目、とにかくイケてる男という容姿。
いくら公爵令嬢とはいえ、婚約者と発表をしないなら、独身で婚約者のいないと世間に思われているこの男を野放しにしておくのは心配だよな。俺に虫除けを頼む気持ちも分かる気がする。
「シン、どうした?」
「いや。この間といい、今といい、俺こんな豪華なところ慣れてなくて」
「はは、お前は堂々としていたら綺麗だし、大丈夫だよ」
「お前は……そういう歯の浮くセリフを友人に言うな」
「いっちょまえに、照れるなよ!」
「照れてねぇわ、むしろムズムズするから俺をオメガ扱いするのはほんとやめろ。お前が自然すぎて、思わず腕をとっちゃったじゃないか! 天然のタラシは危険だ、彼女に同情する」
「なんだ、それ。とにかく来いよ」
レイが俺を誘導する腕をといた。
俺も自然にされるままにレイの手を取ってしまったけど、危ないところだった。慣れている男は怖い。というかこんなところをまた殿下に見つかったらもっと怖いことになる。世間には危険が満ちている。気を引き締めないと自分の首を絞めることになると思った。
ひとつの部屋に通されると、そこはよく自然光が入る明るい部屋だった。華美なテーブルセット、そこに座るひとりの令嬢。大きな木がある手入れの行き渡った庭園が見える窓の前にあるテーブルセットには、すでにたくさんの甘いお菓子が用意されていた。近くには侍女らしき女性が控えて、ちょうど紅茶を淹れていた。仲良く話している親密な感じから、彼女の専属侍女なのだろう。
令嬢と侍女、まるで絵画かと思う景色だった。
均整のとれた美しいカールを作った長い金の髪には、花の形をした控えめな髪飾りが揺れている。座っているので身長は分からないが、小柄に見える。見た目からは甘やかされた柔らかい雰囲気のご令嬢だった。レイの話に聞いた激しめなやり手女性というようなエリザベス嬢とは一致しない。一瞬の見た目でそう思っていたら、彼女は俺とレイに気が付き、こちらを見た。そして隣に立っていたレイが甘い声を出した。
「エリザベス、お待たせ」
「レイ!」
うわっ、立ち上がったと思ったら走り出して、思いっきり勢い良く、俺の隣に立つレイに抱きついてきた。
「はは、ベスは相変わらずお転婆だね。はあ、とてもいい香りだ、今日もとても可愛いよ、愛しのエリザベス」
「会いたかったわ、レイもいつも以上にかっこいい! 私のレイノルド、大好きよ」
俺は固まった。二人は挨拶という愛のことばを交わすと、キスを始めた。初めて見たよ、人のキスシーン。マジで恥ずかしい……俺はどうしたらいいの? というかエリザベス嬢、あなた本当に公爵令嬢ですか?
淑女の恥じらいは?
王都の道はとても快適で、俺の住んでいた田舎町とは全くと言っていいほど見える景色も道も違う。歴史ある建物も、城下町の店も、とても新鮮で目新しくて、いつ通っても楽しかった。
それなのにレイは景色を楽しむことなく、彼女……エリザベス嬢についてずっと話していた。レイは王都から少し離れた領土に住んでいる伯爵家の三男だ。だからといって、俺の田舎と同じだとは限らない。レイを見ていたら洗礼されているし、こないだの観劇の施設の豪華さに驚いた様子はなかった。だからレイの実家も、ここと同じように舗装された美しい街なのだろう。俺くらいな田舎者でなければ、この感動は分からないらしい。
そんなレイはとにかく彼女のことが好きなんだそうだ。話を聞いている限り、エリザベス嬢は普通のご令嬢には思えなかった。
ひとつ年下の彼女は学園通いの他に、すでに父親の仕事も手伝っていて、王宮へも出入りをしているとか? それから格闘技に興味があって、身体能力の高い俺に会いたくてしかたなかったって……俺に興味あるところって、そこ? なんていうか、貴族のご令嬢って凄いところに興味持つんだね。
とまぁ、こんな感じでレイの話を一方的に聞いていると、途中思わず驚いたのでレイに聞き返した。
「えっ、エリザベス嬢って同じ学園だったの?」
「ああ、そうだよ。でもほら、エリザベスは公爵令嬢だろう。だから今まで婚約者がいたんだよ。そんな中、俺達は恋におちたんだ。それで相手と婚約を解消するために時間もかかったし、おおっぴらに次の男が現れるわけにいかないから、俺達の仲は秘密だったんだ」
略奪愛の婚約なんて、さすがレイだ。
「そうだったんだ。お前も苦労したんだな」
「いや、そんなことないよ。それにエリザベスにはご令嬢たちと貴族社会があるだろう。だから学園では会わないことにしているんだ。無事に婚約発表をするまでは秘密の仲ってわけだ、燃えるだろ? 先日、王家には申請したけど、正式なお披露目はまだなんだ」
「なんか、お前らしいわ」
貴族同士の結婚は王家の承諾がいるらしい。それにしても、秘密の恋か。俺の場合は、秘密の閨係だ。同じ秘密でも偉い違いだな。
エリザベス嬢の話を聞いていると、しばらくして馬車が停まった。レイは先に出て、自然に俺に手を差し出してくる。ああ、こういうところが貴族の男だよな。完璧なエスコートに笑った。
到着したのは、王都で一番おしゃれなサロンだった。
クラスメートから、あのサロンは凄いという話を聞いたことがあるから分かった。こいつはさすが伯爵家のお坊ちゃんだ。こないだの観劇といい、このサロンといい、高級なところに行き慣れている雰囲気といい、そしてタレ目で目の下にあるホクロが妙にセクシーで甘い見た目、とにかくイケてる男という容姿。
いくら公爵令嬢とはいえ、婚約者と発表をしないなら、独身で婚約者のいないと世間に思われているこの男を野放しにしておくのは心配だよな。俺に虫除けを頼む気持ちも分かる気がする。
「シン、どうした?」
「いや。この間といい、今といい、俺こんな豪華なところ慣れてなくて」
「はは、お前は堂々としていたら綺麗だし、大丈夫だよ」
「お前は……そういう歯の浮くセリフを友人に言うな」
「いっちょまえに、照れるなよ!」
「照れてねぇわ、むしろムズムズするから俺をオメガ扱いするのはほんとやめろ。お前が自然すぎて、思わず腕をとっちゃったじゃないか! 天然のタラシは危険だ、彼女に同情する」
「なんだ、それ。とにかく来いよ」
レイが俺を誘導する腕をといた。
俺も自然にされるままにレイの手を取ってしまったけど、危ないところだった。慣れている男は怖い。というかこんなところをまた殿下に見つかったらもっと怖いことになる。世間には危険が満ちている。気を引き締めないと自分の首を絞めることになると思った。
ひとつの部屋に通されると、そこはよく自然光が入る明るい部屋だった。華美なテーブルセット、そこに座るひとりの令嬢。大きな木がある手入れの行き渡った庭園が見える窓の前にあるテーブルセットには、すでにたくさんの甘いお菓子が用意されていた。近くには侍女らしき女性が控えて、ちょうど紅茶を淹れていた。仲良く話している親密な感じから、彼女の専属侍女なのだろう。
令嬢と侍女、まるで絵画かと思う景色だった。
均整のとれた美しいカールを作った長い金の髪には、花の形をした控えめな髪飾りが揺れている。座っているので身長は分からないが、小柄に見える。見た目からは甘やかされた柔らかい雰囲気のご令嬢だった。レイの話に聞いた激しめなやり手女性というようなエリザベス嬢とは一致しない。一瞬の見た目でそう思っていたら、彼女は俺とレイに気が付き、こちらを見た。そして隣に立っていたレイが甘い声を出した。
「エリザベス、お待たせ」
「レイ!」
うわっ、立ち上がったと思ったら走り出して、思いっきり勢い良く、俺の隣に立つレイに抱きついてきた。
「はは、ベスは相変わらずお転婆だね。はあ、とてもいい香りだ、今日もとても可愛いよ、愛しのエリザベス」
「会いたかったわ、レイもいつも以上にかっこいい! 私のレイノルド、大好きよ」
俺は固まった。二人は挨拶という愛のことばを交わすと、キスを始めた。初めて見たよ、人のキスシーン。マジで恥ずかしい……俺はどうしたらいいの? というかエリザベス嬢、あなた本当に公爵令嬢ですか?
淑女の恥じらいは?
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