凌辱夫を溺愛ルートに導く方法

riiko

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第五章 溺愛夫と溺愛兄

31 弟腐妻の閨事情

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 セバスチャンが席を用意してくれたので、屋敷の中の応接室で皆が落ち着いた。
 俺の隣はもちろんガリアード、その向かいに兄。お誕生日席にはサリファス。そしてジュリとリックとセバスは入口際に立ち、控えていた。 
「小公爵が、兄上と王家の秘密の部屋から出てきたから、こっそり捕まえたんだよ。人を殺しそうな目をしていたから、もしかしてあの映像見せられたのかなって、てへっ」
 皆が席に座る。セバスが人数分のお茶を給仕すると、第二王子サリファスが一口お茶を飲む。そして皆も茶に口をつけた。ここはガリアードの屋敷だが、身分が一番高いのは王族なので、彼が動かなければ下の者は動けない。という貴族豆知識を考えながら、俺は彼のこれまでの行動について呆れていた。
 もちろん皆も、サリファスの取った行動に唖然としていたけど。
 殿下、それは拉致ですね。説明ないだけじゃなく、いきなり拘束されて瞬間移動みたいな感じで辺境まで連れて来られた。その目の前に「いたぶられていた」と聞いたばかりの弟がいれば助けるでしょ。
 兄はむすっとしている。
「と、とにかく、お兄様! 大変申し訳ありませんでした。お怪我は大丈夫ですか?」
 ガリアードの隣に座っていたので、テーブルを挟んだ向かいにいる兄には手が届かないが、手を伸ばす身振りをした。可愛いリリアン演出だ。兄は、さきほど一人でこけていたんだ。慣れない剣を使ったからそれを腰に戻すときにふらついて、豪快に転んだ。
「ああ、どこにも痛みはないよ、リリたん」
 あっ、機嫌がなおった。向かいに座る兄をガリアードがじっと見る。二人は初対面だ。
「小公爵様、私の友人である第二王子殿下が大変失礼いたしました。私はリリアン殿の夫になった、この辺境を治めるガリアード・オスニアンです」
「貴様っ! リリたんを騙せても、この私は騙せないぞ。よくも可憐で可愛い、最上級に可愛い、天使のように可愛い、とにかく可愛いしかでてこない我が弟の花を散らしてくれたなっ!」
 うわっ、可愛い四連発! その前に毎回、何かしらつけてきているし、このままじゃ、会話が始まらない。
「お兄様っ、僕のことをそんなに想ってくださり、とても嬉しいです。でも話を聞いていただけませんか? 僕は無理やりガリアード様に散らされてなどおりません。僕は、自分の意思でガリアード様に愛していただきました。今も、ずっと、毎晩、その、愛を、」
 言って恥ずかしくなるが、自分から求めているという事実は知ってもらわねばならない。このままじゃ、ガリアードが変態凌辱夫認定されてしまう。
 すると兄が耳を塞ぎだした。
「リリたん! 聞きたくない、聞きたくなーい! お兄ちゃんはリリたんのそんな破廉恥なこと、聞きたくないよぅ。ぐすん。いまだ処女だと思いたいお兄ちゃん心をわかってくれ」
「えっと……?」
 無理でしょ、貴族の結婚は初夜後の精液確認あるって、あなたも嫁を抱いたなら知っているだろう。この世界のエロ設定を!
「もう止め! とにかく話を聞け、アンディ。二人は変態プレイをするほど愛し合っている。間違いなくリリアンの処女はガリアードが貫いた」
「殿下、言い方!」
 サリファスのセリフに、リックがかぶせた。マジで本当に、言葉選べよ。身内のアンアンなんて聞きたくないし知りたくないだろう。
「あ、ああ、そうだね。すまない」
 壁際に立つリックを見て、サリファスはにっこりと紳士の笑みを見せる。そして兄に――
「アンディ、お前が兄上と部屋で何をしたか言ってみろ」
 兄は貴族社会に生き、身分を弁えている公爵令息なので、王子の言葉は絶対だ。
「は、はい。第一王子殿下より、リリアンのことで秘密の話があると言われ、王族しか入れないという部屋に連れていかれました。そこには大きな鏡があり、殿下が何か道具を向けるとリリアンが映りました。それは、それは美しい妖精のように愛らしい姿をしたリリアンが、そこの大男に、脱げと命令されてから……うう、う、りょ、凌辱が……」
 ああ、お兄ちゃんまた泣いちゃった。可哀想に。愛する弟が政略結婚をして、その夜に凌辱された。それを他人から知らされたどころか、映像まで見せられたんだ。盗撮だけではなく、録画機能も兼ねそろえていたのね。
 俺っち、ちょっと涙ぐんじゃった。そこでサリファスが兄に問う。
「その映像、どこまで見た?」
「リリアンがそいつに押し倒されて、そこからは音声だけでしたが、酷い扱いでした」
 そいつと言いながら、兄はガリアードをきつく睨んだ。ガリアードはきっと気まずいだろうが、黙って目を見返すだけだった。とりあえず兄のターンを見守ってくれるらしい。ガリアード、できた夫だ。サリファスが続ける。
「それを兄上が見せたのだな。おかしいと思わなかったのか?」
「それどころではありません。私の可愛いリリアンが、悲痛な声で泣いて助けを求めていた!」
 良かった、兄に見られたのは良くないが、第一王子がなんにもしかけてこないから、ストーリーが変わって手鏡こちらを見るのを止めたのかと思ったよ。あんな恥ずかしいことをしたんだから役にたってもらわなくてはむしろ困る。
 そこでサリファスが、泣きじゃくる兄に今までの話を伝えた。
 なんでサリファスって? それは兄がガリアードをずっと睨んでいたのでガリアードの言葉を今は聞けないだろうということと、俺は上手く話せる気がしなかったからだ。腐っても王子だ、プレゼンがとても上手だった。全てが事後報告で、人から聞いた話なのによく纏まっている。それこそが主人公の気質なのだろうか。
 俺が感心していると話が終わった。兄がほっとしたような落胆したような、複雑な表情を浮かべていた。
「そ、そんなことが……。では、リリアンは辺境伯に凌辱されていない? すべて演技だというのか? 父上からはそんな話、聞かされていなかった」
「はい、僕は一度もガリアード様から乱暴をされたことがありません。むしろありえないくらい丁寧に大事に扱われております。愛情しか感じたことはないくらい、とても、毎日が幸せです。あとお父様には演技の内容まで言っていなかったから、そこまで話が大きくなるとは思ってなかったのかと思われます」
 そう言ってから、ガリアードを見た。
 俺たちは隣同士で座ってずっと手を繋いでいた。別に兄に仲良いアピールしているつもりはなく、それが俺たちの通常運転だからだ。そしてガリアードも俺を見て微笑む。
 めちゃ仲良しだろう?
「小公爵様、そのシナリオはうちの家令がいかに第一王子を騙せるかを考えて作ったもの。ただただ二人で仲良く読み上げただけです。ですから、私はリリアから血を流すような乱暴なことは一切しておりませんし、これからも真綿に包むように大事に守っていきます。まさかその劇を身内に見せるような野蛮なことを第一王子がするとは思っていなくて、配慮が足りず申し訳ありませんでした」
 ガリアードが兄に頭を下げる。なんてカッコいいのだろうか、俺の旦那。
「そ、そうか。そうだったのか。それにしてもやけに上手すぎるが、本当に演技か? 君は変態プレイを、私の可愛い弟に強いることはしないと約束できるか?」
 変態、どの辺をもって変態プレイというのだろうか。というかお兄さん、ナニを聞いているのですか?
 ガリアードが握る手に力を込める。
「もちろんです。あのときの演技では、私のモノをリリアンの小さくて可愛らしい口に咥えさせるという行為を表現しましたが、リリアンの口はまだ私の唇しか味わったことはありませんし、どんなに強請ねだられても私のモノを咥えさせるなど、そんなリリアンを汚す行為は絶対にいたしません!」
「ガ、ガリアードさまぁっ!?」
 いったいなんの宣言だよ。
 皆が無言だったが、リックとジュリは驚いた顔をしていた。
 こんなにラブラブで、リックがどう咥えると旦那が喜ぶかまで三人の会話でレクチャーしてくれていたから、てっきり俺がガリアードに口淫くらいしたと思っていたらしい。
 おい、そこの二人、顔に出しすぎだろう! ガリアード残念だねって顔を見せるな、俺の旦那を憐れむな! 俺だってやってあげたいけど、拒否られたんだ。リリアンの可愛いお口を汚せないって言われたら、もう仕方ないだろ。
 そこで空気読めない男。
「えっ、マジで!? こんな可愛い嫁を捕まえて、口淫の一つもしてもらえないなんて可哀想だな」
「殿下こそ、まだ彼女を抱くことすらできなくてお可哀想ですね。私は毎晩妻を めめでておりますから、特別なプレイなどなくても絶頂を経験しております」
 貴族の結婚は処女が基本。
 サリファスは今、危ない時期で結婚どころじゃない。王太子になって安全を確保できなければ彼女と結婚できないので、ずっとお預け状態。しかもセフレは全員解消。溜まっていらっしゃるようですね。    
 ちなみに第一王子は国王陛下からの信用を得られなくて、王太子に指名されていない。王太子の地位は空白だった。それもあり、第一王子はなんとしても王太子になりたいのだった。ワインバーグ公爵家を味方につけるために頑張っているところでリリアンに目を付け、次に兄をけしかけ、最後に公爵を味方につける――そういう流れの真っただ中。
 勘弁してほしい。ガリアードもサリファスに対抗するなよ! 絶頂するほど、リリアンが名器だって実の兄に言うなよ……俺的には旦那に喜んでもらえるのは嬉しいけど。
 ほら見ろ。リリ兄、絶句。
 普通のプレイだとしても、それを毎晩しているってさ、聞いて嬉しいと思うの? バカでしょ、変態プレイしてないっていうのは大前提の話であって、可愛い弟が毎晩旦那とヤっているのは知りたくない事実ですから!
「お二人とも。失礼ながら話が脱線しておりますし、奥様が真っ赤な顔して困っていらっしゃいます。閨でのことを他人に言うなど、貴族がそんなタブーいかがなものでしょうか。ガリアード様は、小公爵様のお気持ちもお考えください」
 セバスチャン! あなたは天使か!? ここに来て語り出すセバスに俺は感動した。バカな男二人を止めてくれた。
「セバス、すまない。アンディ悪かった。とにかくリリアンは幸せだということだ」
「そうです。リリアンを大事に扱っているので、無理強いは決して致しておりません」
 この変態二人が言っても説得力ないだろう。
「お兄様、聞きたくないことを知らせてしまい、申し訳ありません。でもリリアンはこの通り元気ですし、幸せですよ?」
「……リリアン」
 兄は寂しそうな顔をしたけれど、不器用に微笑んだ。
「君がそう言うなら、信じよう。でも彼が少しでも変態の片鱗を見せたらすぐに奪いに来るからね。無理強いされても抵抗するんだ。リリたんはいつでも公爵家で迎え入れるから」
「ありがとうございます。お兄様」
 ちょっとまだわだかまりある言い方だが仕方ない。ガリアードにも非はあるからな。
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