凌辱夫を溺愛ルートに導く方法

riiko

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エピローグ

57 凌辱夫を溺愛ルートに導く方法

 あの日の激しい交わりを最後に、ガリアードは落ち着いた。
 といっても、凌辱監禁コースに突入して、あの日から十日間閉じこもりっぱなしで、ガリアードは全ての仕事を放り出した。
 初めての夫妻のお籠りに、辺境伯の屋敷の皆は慌てたが、今までの俺たちの関係を知っていたからついに目覚めたか。くらいの反応で放置してくれた。リチャードが必死に屋敷を回してくれて、騎士たちも休暇を貰えたと喜ぶくらいだった。
 みんなぁー。君たちの奥様、凌辱されておりますよーぉっ!
 ここの人たち、主たちが籠りっぱなしなのに余裕過ぎだろう。君たちの領主を、どんな変態夫妻だと思っているんだよ。
 俺としても、初めての扉が開こうとしていた。初めて受けたこの体は、凌辱コースもありじゃね!? と思ってしまうほど元社畜の順応性に感謝した。
 凌辱といいつつ、言葉責めがほとんどで大体が優しかった。たまに激しすぎて気を失うが、それも気持ちよすぎてのフェードアウトだし、心が常に満たされているし、なんなら幸せすぎた十日間だった。
 これはもう凌辱夫の溺愛ルート確定だ。
 凌辱しつつ溺愛するという、素晴らしいスキルを持った夫に感謝。どちらも体験することができて、それでいて幸せならもうなんでも良くね? 日頃は本職に励み、疲れたときは趣味の副業を楽しむ。好きなときにジョブチェンジできる方が長く働ける、これ社畜の憧れ!
 なにか極限を感じると、凌辱夫の面が出てきてしまうのだろうか。あの初日の交わりだけは怖かった。自分が壊れそうになるし、後半もうどうなっているのかわからない。あれは殺人行為だ! あそこまで行くとさすがの俺も、ただただ辛いだけ。
 それなら今後も社畜スキルを発動して、あそこまでならない程度の凌辱夫を楽しむ努力を惜しまず邁進するしかねぇな!
 俺の日本でのスキルが、この世界で役立った! これまで黒い企業に勤め上げた成果が、やっとこの世界で報われた。
 そんなことを思いながら、ガリアードの帰りを執務室で待っていた。
 俺はここの女主人もとい辺境伯夫人として領地経営を任されていたので、元社畜の事務仕事スキルをフル活用してこなしていた。心は愛おしい旦那のことを思っても、仕事は必要以上にこなす。元社畜の意地に、ガリアードのなんでも係のリチャードがめちゃ喜んでいるよ! 
 奴はリリアンの意外な特技に驚いていたが、これで仕事からやっと解放されるって喜びの方が強かったらしい。
 ふふ、そう思うのも今のうちだ! 俺は社畜の鏡として、オスニアン企業に属するお前を徹底的に社畜二号に育てるからな。いつまでのただの変態家令でいられると思うなよぉ。それで俺は、こんどこそ辺境伯夫人をして優雅に過ごしてやるんだ。
 第二の人生、社畜から解放だぁーい!
 執務室でリチャードと仕事をしていると、そこに愛しい旦那が帰ってきた。
「リリアン、ただいま」
「ガリアード様! おかえりなさい! お会いしたかったです。お仕事お疲れ様でした」
 帰ってすぐ俺に会いに来るなんて、可愛い夫だ。
「私もだ。久々に離れて過ごすとキツイな」
「ふふ、ガリアード様とずっと一緒だったから、数時間とはいえ僕も辛かった……寂しかったです。会えて嬉しいっ!」
 ガリアードに抱きつくと、無言で俺を抱きあげる。安定のお姫様抱っこをして、執務室を出て寝室に入る。ベッドへ体を置かれ、優しくキスがくる。
「んん」
「リリアン」
 ほら見ろ、俺たちラブラブだろ? 会えば溺愛が始まる。
「ガリアード様、好き」
「くっ、可愛すぎる。リリアン、今夜も寝られると思うなよ」
「……嬉しいです」
 おっと、今夜もまだ凌辱コースですか? 仕事後で疲れているからできれば溺愛ルートでお願いします。心の中でそう言い思いながら、彼をじっと見て伝える。
「今夜は、優しいのがいいな?」
「うっ、善処する」
 ふふふ、可愛い旦那だ。俺の好きなようにしてくれようと努力してくれる。
「ガリアード様、いつもリリアンの望むように可愛がってくださりありがとうございます。優しい旦那様に出会えた僕は幸せです」
「私こそ、可愛い妻を娶れて幸せだ」
 適度に凌辱プレイをさせることで、夫を無事に溺愛ルートに導くことができました!
 たまに変態プレイも入るけど、そこは仕方ない。夫を満足させるも妻の手腕だしな。なにせ辺境伯ならぬ変態伯だからね! 
 あのときの凌辱劇の間、扉の向こうで待機していた国王陛下や、数人の近衛騎士にはバレているからね――またの名をオスニアン変態伯夫妻だということを。
 もうそれはいいの。だって本当のことだから。夫夫ふうふが円満に過ごすためのプレイって大事でしょ?
 リリアンに転生したと思ってから、たびたび公爵家で過ごしたことを思い出したり、アニメには出てこなかったオスニアン家の事情を知っていたのは、こういうことだった。
 ――そう、俺は、俺だった。
 俺は初めからリリアン。いつかの前世では、日本の社畜として生を受けて三十二で命を散らした。それをたまたまガリア―ドに出会う日に思い出しただけ。俺のリリアンとしての人生はとぎれることなく続いていたんだ。
 社畜時代にあのアニメを見たのはなぜだかわからないが、こここそがまぎれもない真実の世界。この世界こそ、俺の生まれた場所。リリアンが十八歳で命を散らし、その後のガリア―ドが苦しみ続けた世界ではない。
 彼と出会い、恋をして、そして家族になる。儚く散ってしまった時間軸のリリアンがずっと望んでいた世界をやり直すために、ここにもう一度来た。
 ――思い出したことがある。
 たしかにもうひとつのエンディングも、俺は経験した。死亡エンドのリリアンだった頃のは、彼と打ち解けられなかったことを悔やみ、いつか夫に愛される夢をずっと見ていた。彼は決して凌辱夫ではなく、最初の出会いが悪すぎて、俺が彼のことを怖すぎて受け入れられないだけだった。
 彼の武勇伝を聞き、いかに領民に慕われているかを知ったとき、彼が屋敷の人たちを大切にしている姿を見たとき、俺も彼に愛されたいと思った。密やかに、彼を見つめていた俺があの頃存在していた。
 素直にと伝えたかった。
 弱い自分が、全てを悪い方向に変えてしまった自覚があった。もう少し強かったら、もう少し自分のことを伝える勇気があったら……
 それを叶えるために、俺は社畜を一回挟んで彼と出会い直したのかもしれない。だからこそ、こんな素敵なハッピーエンドを迎えることができたんだ。
 ようやく俺の物語が幸せを迎えて終わるときがきた。
 そう、社畜という俺がこの世界に現れて、オスニアン辺境伯夫人リリアンは、末永く幸せになったんだ! ちょっとエッチで凌辱好きな、溺愛旦那様を添えて。

 おわり。
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