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第1章
第四話
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赤髪赤目の、幼いながらもガタイのいい男の子。同じく赤髪赤目の、年相応の普通の女の子。男の子の方が、兄のルビオ。女の子の方が、妹のアルファン。ルビオが十歳で、アルファンが八歳。彼らは、俺がこのまま向かう先であるベズビオに居を構える、薬師の一家の生まれだそうだ。
なぜこんな危険な所に子供だけで来たのかを聞いたら、母親が病気にかかってしまい、忙しい父親の代わりに、母親を癒すための薬草を求めて、ここまで二人で来たそうだ。
「大人に見つからずに、よく町を抜け出せたな」
俺がそう言うと、恐怖でまだ身体を震わせている幼き兄妹は、ほんの少しだけ自慢げになった。
「俺たちだけが知ってる、秘密の抜け道があるんだ!!」
「城門からも遠い所に抜け道があるの。だから、大人には見つからないの!!」
そう言った兄妹だが、結果的にこうして危ない目にあってしまった事を思い出し、再び恐怖で身体を震わせる。俺は両手で、そんな幼い兄妹の頭を撫でて、恐怖和らげて安心させてやる。そんな俺たちの無防備な姿を見ていた魔物や魔獣たちが、息を潜めて近づこうとして来たので、放つ威圧の格をさらに一段階上げる。近づこうとしていた魔物や魔獣たちは、どの個体もそれぞれの方向に向けて、我先にと逃げていく。
命の危機を感じ、死にかけた事で動けなくなってしまった二人をそれぞれの腕で抱えて、ベズビオの城門に向かって駆ける。ルビオとアルファンの母親の病の事も気にはなるが、まずは二人を安全圏に連れて帰る事の方が、最優先で行うべき事だ。幼いルビオとアルファンの事を考えて、安全面を気にしながら、速度を出して移動し続ける。
ベズビオの城壁の門にたどり着いたのは、丁度日が昇り切った、お昼時の時間帯だった。俺はゆっくりと速度を緩め、ベズビオの城壁の門に並ぶ、町に入りたい者たちの列の最後尾に並んで、順番が来るのを待つ。幸いにも、列に並んでいる者たちの数はそこまで多くなく、暫くすると、俺と兄妹の順番が来た。
「身分を証明するものと、銀貨を………ルビオ!!アルファン!!ああ、良かった!!無事だったんだな!!何処にも怪我はないか?」
人族の衛兵のおっちゃんが、俺に身分証と入場料である銀貨を求めようとしたが、ルビオとアルファンを見て、心底安堵した様に笑顔になって二人問いかけた。
「う、うん。シャルル兄ちゃんが危ない所を助けてくれたんだ」
「そうか、そうか。……すまんが話が聞きたい。こっちに付いてきてもらえるか?」
「分かりました」
おっちゃんは他の衛兵に声をかけてから、付いてくるように身振りをして先を歩いていく。俺は再び二人を抱えて、先を歩くおっちゃんに付いていく。付いていった先は、城壁の門近くにある衛兵たちの詰所だ。おっちゃんは、扉を開いて俺たちを招き入れ、詰所の中にある休憩場所に座るように促す。俺はルビオとアルファンを降ろし、三人で横並びになって椅子に座る。
「今他の奴に言って、父親を呼びに行ってもらった。父親が来るのを待ちながら、ここに来るまでの経緯を教えてくれ」
「はい、分かりました。俺は…………」
まずは、身分証と入場料をおっちゃんに渡す。色々と隠したり、誤魔化したりしながら、ルビオとアルファンに出会った経緯を細かく説明していく。おっちゃんは、ルビオとアルファンにも聞き取りを行い、俺の話しに矛盾する所がないかを探っている。聞き取りしている表情は、子供が相手なので和やかだが、一切の情報も聞きもらさない、聞き逃さないといった雰囲気だ。
何度か細かい所を聞き直されたりしたが、聞き取られている側である本人の記憶違いや、聞き取っている衛兵の方が、思い込みなどで判断や報告をしないようにするためである。
「何度も同じ事を言わせてすまんな」
「構いません。それがお仕事でしょうし」
「そう言ってくれると助かるよ」
おっちゃんに信用してもらえたので、ベズビオという町の事を聞いていく。おっちゃんも俺という人物を信用した事で、地元の人間だからこそ知っている様な事も、善意で教えてくれる。これには、ルビオとアルファンを助けた事へのお礼も、含まれているのだろう。
「ルビオ!!アルファン!!」
詰所の入り口から、男性の声が響く。その声を聞くや否や、二人は椅子から立ち上がり、入り口の方に駆け出していく。駆けだした二人はその男性に飛び付いて、涙を流して腰に抱きつく。
「良かった。二人とも無事だったんだな。良かった、本当に良かった」
詰所の入り口で感動の再会だ。しかし、話しに聞いていた通り、母親は体調がよくないようだ。この場には、父親であろう男性しか現れていない。それ程までに重たい症状なのだろう。暫くの間、親子三人での時間を過ごしていたが、父親である男性が二人を連れて、こちらに近寄ってくる。赤髪赤目の、三十代くらいに見える、普通のお父さんといった感じの人だ。
「貴方がシャルルさんでしょうか?」
「はい、そうです」
「我が子を助けていただいて、ありがとうございます。何かお礼を………」
「いえ、お礼を貰うために助けたわけではありませんから。失礼ですが、二人から奥様の事を聞きました。今は、色々と入り用だと思います。なので謝意だけで十分です」
「いえ、ですが……」
渋る父親を見て、おっちゃんが気を利かせる様に会話に混じって、俺に聞いてくる。
「シャルル、泊まる場所とか決めてきてるのか?」
「いえ、全く」
「旅をしてるというなら、金は少しでも手元に残せた方がいいだろ?」
「そうですね。旅をするにも、色々とお金がかかります。立ち寄った先で、薬草などを売ってお金を稼いでいますが、贅沢できる程ではないですね。なので、安上《やすあ》がりですむのなら、俺としても大助かりです」
父親がハッとした顔をする。俺も最初は意図が分からなかったが、おっちゃんの質問の内容に、ルビオとアルファンの現状、それに母親の事などを総合的に考えて、おっちゃんの言いたい事を理解した。父親もそれに気付いたので、俺に対して提案を口にする。
「シャルルさん、もし宜しければ、滞在中は我が家で過ごしませんか?」
「ご迷惑でないのならば」
「全然大丈夫です。お前たちもいいよな?」
「うん!!」
「全然大丈夫!!」
「では、お世話になります。よろしくお願いします」
俺はおっちゃんにも改めて礼を言い、家族と共に詰所を出る。おっちゃんは、家族の姿を見て微笑みながら、自らの職務に戻っていった。最後に、何か困った事があれば俺を訪ねてこい、何時でも助けてやると言われた。面倒見のいいおっちゃんに感謝し、その背中に一礼する。
「では、行きましょうか」
「「行こう~!!」」
ルビオとアルファンが、笑顔で左右の手を掴み、自分たちの家に向かって俺を引っ張っていってくれる。それを見る父親も笑顔だ。二人を見て、怪我なく助けられて良かったという気持ちが沸いてきた。せめて滞在中は、この子たちの笑顔は守ってやりたいと思った。
なぜこんな危険な所に子供だけで来たのかを聞いたら、母親が病気にかかってしまい、忙しい父親の代わりに、母親を癒すための薬草を求めて、ここまで二人で来たそうだ。
「大人に見つからずに、よく町を抜け出せたな」
俺がそう言うと、恐怖でまだ身体を震わせている幼き兄妹は、ほんの少しだけ自慢げになった。
「俺たちだけが知ってる、秘密の抜け道があるんだ!!」
「城門からも遠い所に抜け道があるの。だから、大人には見つからないの!!」
そう言った兄妹だが、結果的にこうして危ない目にあってしまった事を思い出し、再び恐怖で身体を震わせる。俺は両手で、そんな幼い兄妹の頭を撫でて、恐怖和らげて安心させてやる。そんな俺たちの無防備な姿を見ていた魔物や魔獣たちが、息を潜めて近づこうとして来たので、放つ威圧の格をさらに一段階上げる。近づこうとしていた魔物や魔獣たちは、どの個体もそれぞれの方向に向けて、我先にと逃げていく。
命の危機を感じ、死にかけた事で動けなくなってしまった二人をそれぞれの腕で抱えて、ベズビオの城門に向かって駆ける。ルビオとアルファンの母親の病の事も気にはなるが、まずは二人を安全圏に連れて帰る事の方が、最優先で行うべき事だ。幼いルビオとアルファンの事を考えて、安全面を気にしながら、速度を出して移動し続ける。
ベズビオの城壁の門にたどり着いたのは、丁度日が昇り切った、お昼時の時間帯だった。俺はゆっくりと速度を緩め、ベズビオの城壁の門に並ぶ、町に入りたい者たちの列の最後尾に並んで、順番が来るのを待つ。幸いにも、列に並んでいる者たちの数はそこまで多くなく、暫くすると、俺と兄妹の順番が来た。
「身分を証明するものと、銀貨を………ルビオ!!アルファン!!ああ、良かった!!無事だったんだな!!何処にも怪我はないか?」
人族の衛兵のおっちゃんが、俺に身分証と入場料である銀貨を求めようとしたが、ルビオとアルファンを見て、心底安堵した様に笑顔になって二人問いかけた。
「う、うん。シャルル兄ちゃんが危ない所を助けてくれたんだ」
「そうか、そうか。……すまんが話が聞きたい。こっちに付いてきてもらえるか?」
「分かりました」
おっちゃんは他の衛兵に声をかけてから、付いてくるように身振りをして先を歩いていく。俺は再び二人を抱えて、先を歩くおっちゃんに付いていく。付いていった先は、城壁の門近くにある衛兵たちの詰所だ。おっちゃんは、扉を開いて俺たちを招き入れ、詰所の中にある休憩場所に座るように促す。俺はルビオとアルファンを降ろし、三人で横並びになって椅子に座る。
「今他の奴に言って、父親を呼びに行ってもらった。父親が来るのを待ちながら、ここに来るまでの経緯を教えてくれ」
「はい、分かりました。俺は…………」
まずは、身分証と入場料をおっちゃんに渡す。色々と隠したり、誤魔化したりしながら、ルビオとアルファンに出会った経緯を細かく説明していく。おっちゃんは、ルビオとアルファンにも聞き取りを行い、俺の話しに矛盾する所がないかを探っている。聞き取りしている表情は、子供が相手なので和やかだが、一切の情報も聞きもらさない、聞き逃さないといった雰囲気だ。
何度か細かい所を聞き直されたりしたが、聞き取られている側である本人の記憶違いや、聞き取っている衛兵の方が、思い込みなどで判断や報告をしないようにするためである。
「何度も同じ事を言わせてすまんな」
「構いません。それがお仕事でしょうし」
「そう言ってくれると助かるよ」
おっちゃんに信用してもらえたので、ベズビオという町の事を聞いていく。おっちゃんも俺という人物を信用した事で、地元の人間だからこそ知っている様な事も、善意で教えてくれる。これには、ルビオとアルファンを助けた事へのお礼も、含まれているのだろう。
「ルビオ!!アルファン!!」
詰所の入り口から、男性の声が響く。その声を聞くや否や、二人は椅子から立ち上がり、入り口の方に駆け出していく。駆けだした二人はその男性に飛び付いて、涙を流して腰に抱きつく。
「良かった。二人とも無事だったんだな。良かった、本当に良かった」
詰所の入り口で感動の再会だ。しかし、話しに聞いていた通り、母親は体調がよくないようだ。この場には、父親であろう男性しか現れていない。それ程までに重たい症状なのだろう。暫くの間、親子三人での時間を過ごしていたが、父親である男性が二人を連れて、こちらに近寄ってくる。赤髪赤目の、三十代くらいに見える、普通のお父さんといった感じの人だ。
「貴方がシャルルさんでしょうか?」
「はい、そうです」
「我が子を助けていただいて、ありがとうございます。何かお礼を………」
「いえ、お礼を貰うために助けたわけではありませんから。失礼ですが、二人から奥様の事を聞きました。今は、色々と入り用だと思います。なので謝意だけで十分です」
「いえ、ですが……」
渋る父親を見て、おっちゃんが気を利かせる様に会話に混じって、俺に聞いてくる。
「シャルル、泊まる場所とか決めてきてるのか?」
「いえ、全く」
「旅をしてるというなら、金は少しでも手元に残せた方がいいだろ?」
「そうですね。旅をするにも、色々とお金がかかります。立ち寄った先で、薬草などを売ってお金を稼いでいますが、贅沢できる程ではないですね。なので、安上《やすあ》がりですむのなら、俺としても大助かりです」
父親がハッとした顔をする。俺も最初は意図が分からなかったが、おっちゃんの質問の内容に、ルビオとアルファンの現状、それに母親の事などを総合的に考えて、おっちゃんの言いたい事を理解した。父親もそれに気付いたので、俺に対して提案を口にする。
「シャルルさん、もし宜しければ、滞在中は我が家で過ごしませんか?」
「ご迷惑でないのならば」
「全然大丈夫です。お前たちもいいよな?」
「うん!!」
「全然大丈夫!!」
「では、お世話になります。よろしくお願いします」
俺はおっちゃんにも改めて礼を言い、家族と共に詰所を出る。おっちゃんは、家族の姿を見て微笑みながら、自らの職務に戻っていった。最後に、何か困った事があれば俺を訪ねてこい、何時でも助けてやると言われた。面倒見のいいおっちゃんに感謝し、その背中に一礼する。
「では、行きましょうか」
「「行こう~!!」」
ルビオとアルファンが、笑顔で左右の手を掴み、自分たちの家に向かって俺を引っ張っていってくれる。それを見る父親も笑顔だ。二人を見て、怪我なく助けられて良かったという気持ちが沸いてきた。せめて滞在中は、この子たちの笑顔は守ってやりたいと思った。
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