【完結】塩対応だった旦那様が記憶喪失になった途端溺愛してくるのですが

詩河とんぼ

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第十七話 覚えていないの?

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「……僕は部屋を出ていますね。少し経ったらまた来ます」

「あら、ごめんなさいね。ノア様。それでね――」

 俺はレオンの部屋を出て大きく息を吸った。
 今は完全に二人の世界に入るというか、サザンカ嬢がずっとレオンに話しかけていて、俺は蚊帳の外だった。
 レオンとサザンカ嬢の邪魔をしたくない、と言う気持ちではなく、二人が仲良く話している姿を見るのが辛かった。

「あのお二人はお似合いですわ」

「本当に。絵になるお二人ですわよね」

 先ほどレオンの部屋に行き、サザンカ嬢にお茶を持って行った使用人は、そう言い、キャッキャキャッキャとしていた。

 自分でも思う。どちらもびっくりするほど顔が整っていて、仲もよさそうでお似合いなのではないかと。
 だが、絶対にそれを認めたくはない。
 そんな自分を面倒くさいと思う。

 そんなことを自室に戻ってからもぐるぐると考えていると、気づけば30分が経っていた。

「……そろそろ様子を見に行こうかな……」

 のそのそと自室を出て、レオンの部屋に向かった。

「?ドアが開いている……」

 レオンの部屋の前まで着くと、レオンの部屋のドアが少しだけ開いていた。
 一応ノックをしようと、手をドアの前まで持ってくると、

「ねえ、覚えていないの?レオン」

 サザンカ嬢の声が聞こえてきた。
 いつもとは違う、どこか甘ったるいサザンカ嬢の声に、違和感を持っていると、サザンカ嬢は言った。

「私と、あなたが恋人だったってことを」

 聞き間違いであって欲しかった。
 しかし、確かにサザンカ嬢はそう言っていた。

 思わずその場から逃げ、また自室に駆け込むと、

「ああ……」

 とつぶやいた。
 俺とよりもお似合いな二人のことだ。何も不思議ではない。
 
 ……納得しようとしても、そう納得できなかった。したくなかった。

 どれくらい時間が経ったのだろう。使用人から、サザンカ嬢が帰ろうとしていると告げられ、おぼつかない足取りで俺は玄関まで向かった。

 その日のそれからは、それからサザンカ嬢を見送ったことは微かに覚えているが、しっかりとした記憶は残っていなかった。
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