異世界対応型婚活システムーあえ~るー 川西美和子の場合

七戸 光

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川西美和子の場合

川西美和子、兄嫁と仲良くなります

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 アキラを半ば強引に退場させ、この場には私とお姉さま方が残った。

「初めまして。私はアネット。アキラの兄嫁だよ。こっちがハンナ。ハンナは一番上の兄嫁ね」

「ハンナよぉ~。よろしくね~」

「初めまして。ミワコです」

「うんうん。地球ってところの出身なんだよね! ミワコって呼んでいいかな? 私たちのこともアネットとハンナでいいからね」

「アネットとハンナですね。今日は急にすみませんでした。お世話になります」

「あ~ん、そんな他人行儀なこと言わないでぇ」

 赤髪に褐色肌、生成り色のタンクトップが眩しい巨乳がアネットで、ブロンドの陶磁器みたいな白い肌の巨乳で、ネイビーのピッタリしたハイネックシャツを着ているのがハンナ。
 2人の巨乳と並ぶと日本人の平均的な女性である私の慎ましやかな胸では太刀打ちできない。
 今日はダボっと系の服にしてホントに良かった。体形がコンプレックスになる。
 2人と一緒にカフェでお話することになった。
 テラス席のあるオシャレなカフェを選んで、噴水の見える席に座る。
 4人席にアネットとハンナが隣同士で座り、私はアネットの前に座った。

「なんかゴメンね? アキラってば女の子の扱いが分かってなくて。さっきも見てたけど、私らに電話する時相談しなかったよね。だって普通付き合ってもないのに、相手の兄嫁出てきたら引くでしょ! だから途中で相談させたんだけどさ! この世界の男は女の子の扱いは苦手だからね。ちょっとアプローチしたぐらいじゃ気づかないよ」

「でも、そういう鈍いところがまた可愛いのよねぇ」

「まあアキラはリーナの影響でこの国にしては女の子の扱いがうまい方だと思うよ! 私たちもちゃんと教え込んでるし!」

 凄い。僅かな会話から力関係が垣間見えた気がする。
 家族の話は少し聞いていたけど、兄嫁がこんなに強いのは聞いてなかったな。
 そして初めて聞く女の子の名前が出てきた。

「あの、リーナって誰ですか?」

「あぁ、リーナはアキラの幼馴染で元カノだよ。聞いてないの? あっ、もしかして不味いこと言った?」

 アネットの顔色が少し陰った。

「いえ、元カノが金属アーティストになるために行方不明になってるってことは聞きました。幼馴染ってことは知らなかったですけど」

「そうだったのね。リーナとアキラはとても仲が良くて、家族みたいに育ってきたそうよぉ。私が嫁ぐよりずっと前から仲が良かったみたい」

「ハンナは異世界出身だからこっちに来て5年ぐらいだよね。私はこの世界出身だし、育った地域もアキラたちの近所だったから昔から知ってるけど、ちょっと変わってるけど明るくていい子だよ。よく2人で遊びに行ってたね」

「そうなんですね。リーナが行方不明になったのっていつからなんですか?」

「3年前ぐらいかな。この国は義務教育が15歳までなんだけど、そこから専門的なことを学ぶためにさらに学校に行く子も多いんだ。リーナは芸術に関係する学校に行って、専門学校の卒業式の日に居なくなったみたいだよ」

 アネットの話を聞いて、教育制度が地球と似ているようで驚いた。
 卒業式の日に居なくなるなんてご家族はひどく衝撃を受けただろう。
 そしてずっと聞いてみたかった質問をしてみた。

「金属アーティストって何なんですか?」

 アネットとハンナは困った顔でお互いの顔をチラッと見てから、揃って私の方を見て口を開いた。

「分からない」
「分からないのよぉ」

「……そんな、金属の国だからってメジャーな職業な訳ではないんですね」

「いや、金属で芸術的な作品を作る人は結構いるんだけど、人によって表現方法はいろいろだから、リーナがどんなパフォーマンスをするのかは知らないんだ」

「謎は深まった……」

 その後も2人の旦那さんとの馴れ初めやこの国の流行のファッション、美容に関するグッズの話等、女子会をばっちり楽しんでから建物内のファッションフロアやコスメグッズを見て回った。

「あ、この服可愛い! ミワコに似合うんじゃない?」

 アネットが見せてくれたのは、黒のハイネックシャツでデコルテ部分と肩がレースになっており可愛らしい印象のトップスだ。
 しかし、2人の着ている物ほどではないが日本の一般的な服に比べればタイトだ。
 基本的にこの国の服はタイトな物が多いようだ。
 こういう体のラインが出る服は慣れていないので、とても恥ずかしい。

「可愛いけど、体のラインが出すぎて恥ずかしいです。私そんなにスタイル良くないから」

「そうかしらぁ? きっと似合うわよぉ? まぁこの国は確かにタイトな服が多いわね。気温も熱いし、良く動く国民性だからかしら?」

「あ~確かにみんな身軽なのが好きだね。王様も体格で選ぶぐらいだしね」

「筋肉王決定戦ってやつですよね?」

「そうねぇ。最初に来た時びっくりしたわぁ。だって毎年、筋肉王決定戦でホントに国王を決めるんだもの。今の王家が300年連続で優勝者を出しているから、最近は政治に影響していないけど、もし変わったらどうするのかしらね?」

「もうそれが普通だから分からないけど、同じ王様が連勝してることも多いからね。あんまり変わらないかも。ここのところ30年は現王が連勝してるし。まぁ昔は政策ごとガラッと変わるときもあったらしいけどね」

「思い切りが良い国ですよね。何というか、商業にも活気があって、義務教育もちゃんとしてて住みやすそうです」

 今日初めてこの国を見て思ったことだった。
 私がそう言うとアネットとハンナは顔を見合わせると優しく私に微笑んだ。

「そういってくれると嬉しいよ。正直今回はミワコに変な圧力をかけないようにしたかったんだ」

「アキラと上手くいくとかいかないとか関係なく、リラックスした状態でこの世界を見て欲しかったの。だって、恋愛と結婚は別物でしょう? アキラの事は気にしないで、私たちの案内だって重く考える必要はないのよぉ」

「そうそう。私たちはミワコと歳も近いし、同性の友達だと思って案内してたからさ」

「アネット、ハンナ。ありがとうございます」

 充実した時間はあっという間に過ぎ去り、遂に私が帰る時間になった。
 アキラはやっぱり時間内には戻ってこれなくて、その間アネットとハンナはずっと一緒にいてくれた。
 2人が最初のアーチまで連れて行ってくれたし、紬さんが来てアーチを潜るときも手を振ってくれていた。
 そのあとの私は、渡瀬家に戻ってきてすぐに自宅に帰ってきた。
 今日は沢山歩き回ったので少し疲れてしまった。
 ベッドに寝転がりながら今日の事をぼんやりと振り返る。
 アネットとハンナ、彼女たちはすごくいい人だった。
 本当に親切にしてくれて、アキラの事で私にプレッシャーをかけることもなかった。
 アキラとのデートが途中で終わってしまったのは残念だったけれど、素敵な友人としてアネットとハンナに出会えて本当に良かったと思う。
 こうして私の初めての異世界転移は素敵な出逢いで幕を閉じた。
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