『吾輩は猫である』を読みながら

海野 月

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『吾輩は猫である』を読みながら…

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 『吾輩は猫である』の猫には、名前がないと書いたところから始まっている。猫のくせに名前を持とうと考えていたのだろうか。生意気な猫である。でも、この名前がないことこそが、作者の意図とすることだったのかもしれない。この作品は、1905年1月、『ホトトギス』に掲載された。長編小説で好評だった。話は戻るが、名前がある人のほうが少なかった時代。妙に様々なことを知りすぎていた猫。思考がまるで、人間。書き出しが有名すぎて、誰もが知っている夏目漱石の小説である。この小説を読んでいると、いろんな疑問が浮かび、違和感を感じるのである。今は、令和。明治、大正、昭和、平成を経たこの小説を再考してみたい。

 この主人公である猫は、湿気のあるジメジメしたところで、ニャーニャーと泣いていることを覚えていたところから、ストーリーは始まる。しかも、ここで、書生なる生き物の種族の中でも一番獰悪どうあくな種族に遭遇している。ちなみに書生とは、学問を身につけるために勉強をしている人。 勉学中の若者や 学生のことである。本来、書生とは、勉学をする余裕のある者という意味合いだったが、日本では主に明治・大正期に、土地の有力者などの大きな家に住み込みで雑用等を任される学生を意味していた。米一升や銘柄の日本酒でも、挨拶代わりに渡して、その家にお世話になったものである。しかも、彼ら書生の勉学意欲は、今の学生と比較にならないほど、真剣そのものだった。明治時代は、御一新として、教育の改革にも力を入れ、貧乏な家庭が大半なニッポンだったから、こういう機会を逃さない若者は、大勢いた。

ところで、この獰悪どうあくな種族というのは、教師である。そう、この猫の主人は、教師だった。
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