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小話
*小話6*
しおりを挟む【寝起きのイタズラ☆】
(オハヨーゴザイマス)
ウトウトしていたけど、完全には眠れずにまたゆっくりと瞼を開ける。カーテンの隙間からはほんのり白みがかった光がこぼれ、朝の到来を告げていた。
もう朝デスね。あんまぐっすり眠れなかったなー。
眠りの浅かった私は、起きようかもう少しゴロゴロしていようか迷ったけど……体に触れているのはほんの少し私より高い体温をして、規則正しい呼吸で大胸筋が上下して、鼻腔は……オトコのカホリを捉えていた。
おぉぉ、かちょう……
『いつものように』同じベッドに入った私とカチョー。
添い寝と命令されての行為だが、誰得? 俺得!
折角だから、本日も思う存分カチョーのお体を堪能させていただくのでありますよ!
いま私は、カチョーの『ハッピーわくわく三角地帯』におります。ここは腕と体の間……つまり脇が三角形の頂点に位置し、その狭間に私の頭が置かれるというナイスポジション!
いえね、私ったら腕枕が居心地悪いんすよ。
カチョーの肩から腕にかけての角度により、乗っかってみたらゴローリゴローリと肘の方に転がってしまうのです。腕枕神話どこいった!
そんなわけで『ハッピーわくわく三角地帯』……長いデスね……ゴホン、『ハッピーわくわく三角』……あれ? あまり変わってない?
とにかくその私だけの空間がありまして。
――いきなり脇のにおい嗅いだら変態ですかね?
一応まがりなりにもオトメなので、段階を踏むことにします。一番確認した居場所はあるのですが、それも後ほど。
ちろっと視線を上にすると、そこにはカチョーのアゴ。ほんのりとおひげが伸びてオリマス。濃くも薄くも無い、いや、うちのおとーさんに比べたら薄いな……。手を伸ばし、ゾリゾリ加減を確かめマース。
うむ。
サンドペーパー100番位の中目なカンジ。
アゴから視線を落とすと今度は喉。ゴツッとした喉仏が見えまーす。男性らしさが非常によく現れてオリマス。私がBL描くとき、大体攻めは喉仏ハッキリ見せますね! 荒々しく! そう荒々しくぅ!
……ハァハァ。もうすでに私の中でスイッチ入っていますよ? ハァハァ。
喉仏に指を滑らせ存在を感覚で確かめる。自分に無いものだし、言って触らせてくれるとも思えないので、寝ている今のうちに堪能しちゃいマス。
そのままつつっと鎖骨の骨に沿って撫でる。おー、骨が太い。自分のと触り比べてみたけど、やっぱりなんか、こう、頼もしい! ってかんじー。
その先に進もうとして……しらずごくりと喉が鳴った。
(お父さんじゃないチチに会いに行きます)
ゴメンナサイと、どこかの誰かに向かってあやまり、さらに指を進める。カチョーがパジャマ代わりにしているのはTシャツで、薄い布越しでも分かるかな? とカチョーの大胸筋をうろうろと彷徨った。
ありー? どの辺なんだろ。女子の場合は膨らみがあるためその頂点を目指せばいいのだけど、男子って? よくわかんにゃい。
諦めて、今度はお腹。おとーさんは太鼓腹しててダブルのスーツが似合うおじさんそのものだけど、カチョーはシュッとしたモデル体型。きっと野良作業の服だってカチョーが切れば一流ブランドかと見間違うほどステキに着こなしてしまうでしょう!
おおお。贅肉とはなんぞやと問いたくなる腹筋。力を入れるとワレワレしていそうですよ。ガチなマッチョではちょっと萌えない私にとって、ベスト体型イェッス!
さて……メインイベントの時間がやってまいりました。
テントですね? テントにビバークですねっていうかしちゃいますよ?
前に一度失敗したテント確認。これは朝一の鑑賞として、もっとも待ち望んでいた瞬間なのでっす!
いやしかし、二人まとめて布団に包まっているから視覚で確認できそうもありまセン。超残念すぎる。
そろりそろりと指を這わせ、ここはおへそ、ここは骨盤の……そ、そ、そして――――
「待て」
伸ばされた指をぐっと掴まれ、私は全身が硬直した。
「ひ……っ!」
「ユリから手を出されるとは思ってなかったな。俺を誘っているのか?」
「め、め、滅相もございませ……!」
「じゃなかったら何だ」
「ひとえに、興味のなせるワザといいますか……」
「興味?」
「生身の男性を手に取ることにより、より作品に生かせると思いまして……」
カチョーは、ふーっと深く息を吐いて私の手を開放した。そして上体を起こし少しだけ寝癖の付いた髪をガシガシと乱暴に掻く。
そしてベッドに仰向けになったままの私の鼻をぴんっと爪弾く。
「いたっ!」
「煽るだけ煽って理由が観察? こっちの身にもなれ、阿呆が」
弾かれた鼻を押さえている間にカチョーはベッドから降りて部屋を出て行ってしまった。
むう。
私、なにか煽るようなマネしましたかね??
さ、起きてご飯の支度しましょー。
*****
【妄想力の限界】
「実は俺……」
フェアリーガーデン、いえムッターの庭なんだけどそこで妄想を広げていた私はそこでぴたりと止まった話を進めてみようと頭を捻った。
実は俺。
つまりちょっと意外性のある話デスよね?
定番としては――
『実は俺、この家の跡取りなんだ。俺にも責任というものがある。全てを放ってお前と逃げる手もあるが、無責任な俺にきっとお前は幻滅するだろう。今は……待ってくれ。次の一手を投じたら、自由は約束されている。そうしたら、そうしたら今度は二人で暮らそう。誰にも邪魔されない、二人だけで』
ってなりマスかね。うむ。
しかしこれがまたこんな具合だったら――?
『実は俺、女なんだ。でも性同一性障害で心は男。黙っててごめん。消えた間何していたかって? 性別適合手術を受けていたから……』
うーん、これもどうか。なくもない?
『実は俺、妻がいるんだ』
事情が変わった!
『実は俺、仕事がないんだ』
無職!
『実は俺、異世界に召喚されて』
ファンタジー!
『実は俺、あの大雨の日に拾われた子犬なんだ』
恩返しー!
『実は俺、メンドクサクなっちゃってー! てへぺろ☆』
軽!
……
……
やっぱ定番が一番ですかね……
*****
【スペシャルコーディネート】
「え、あ、はい……はい、畏まりました。それではお届け先は――はい。それでは後ほどお届けにあがります。はい、よろしくお願いいたします。失礼いたします」
ふぅ、と受話器を下ろしてから緊張を解す。
「根岸さん? どうしたんですか」
上得意様担当としてよくペアを組む同僚が、私の様子をみて声をかけてきた。
「ああ、この間も来店してくださったあの――」
名前を伝えただけですぐにピンときたようだ。
お客様が始めて来店されたとき、この同僚も同じくフィッテングなどについていたから。
確かに印象深かった。
同じ様に専用ルームでお客様に似合う服をアレコレと提案させていただくが、ああも思い切って何着も買われるのは珍しい。ご要望にお答えして、着まわしが出来るコーデのファイルを準備したりするのは、私の腕が鳴った。
非常にやりがいを感じていたので、またいらしてくれないかなと心待ちにしている。
またある時、ご来店されたお客様は「季節に合ったものを」とお望みだった。
前回ご来店下さった時は春物だったので、私は再びコーディネイトさせていただいた。もちろん好みも分かっているので、それに沿ったご提案をするけれど、今回は多種多様に渡るバッグも合わせて二十点もの商品をご購入を頂けたのだ。
「あの時に買っていただいたスーツケースに、一週間分の旅行セットを詰めてくれって」
「特殊加工で今日納品だったあれ?」
「そう、二人分ね。全て新品で揃えるから大丈夫だけど……」
自分のデスクの、鍵がかかる引き出しからお客様の情報が詰まったファイルを取り出す。これを見れば、スリーサイズはもちろん好みやちょっとした癖などもすぐにわかる。早速取り掛からないと時間がないわね。
「ちょっと手伝って。急ぎなの」
「はーい。どちらにご旅行なのかしら」
「ヨーロッパ方面らしいわ。気候もチェックしないと」
内線で、いくつかのテナントに声を掛け、用意をお願いした。そして渡航情報なども集めて、荷物に添えた。
私はお客様が『このデパートに頼んで良かった』と言ってもらえるよう、おもてなしの心を持って接客しているのだ。
この顧客とは割りと長いお付き合いをさせていただいている。
今回のは……特別なので、より一層力が入るというもの。
ファイルを手に持ち、椅子から立ち上がった。
「よーっし。完璧なコーデ目指して、より一層ご購入いただくわよーっ!」
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