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ピケティと北川のスカイプ会談

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「Mr.ジョルジュ・ピケティはフランス人で、北川さんとはフランス国立研究所ニューロスピンの同期博士研究員で、友人関係でした。
北川さん、やはり覚えていませんか?友人のジョルジュ・ピケティを」

全く覚えていない!そんな表情で私は尾形陸将を見ながら顔を横にふった。

「北川さんは、東京大学大学院医学系研究科卒業し脳神経医学専攻博士課程修了をし、フランス国立研究所ニューロスピンに勤務した。
その後、Mr.ジョルジュ・ピケティの支援により東京駅近郊、日本橋口前の三菱地所が建設した高さ390メートルの超高層ビル最上階オフィスの所長謙研究員を行っていた。
専門は脳科学の研究で・・・」

尾形陸将は、私の書いてある履歴リポート用紙を読みながら話を続けた。

「あの、要するに用件はなんなのでしょうか?
私にそのような事、私の本当の過去の事実を説明されても、当の本人は、その全ての記憶を忘れているのだし、折角!教えて頂いた私の過去の話を聞かされても、記憶を思い出せる兆候が微塵も無いのに、いったい私に何を求めているのですか?」

私の困惑した嘆願的な言葉に、尾形陸将も困った表情を浮かべながらも、もう少しお話しに付き合って下さいと言って、一旦、ソファーから立ち上がり、この部屋に一つだけあるドアを開けて、隣の部屋で待機している部下の一人に飲み物を三つ持ってくるように言いながら、コーヒーで良いですね!と飲み物の選択の自由が無いことも示唆していた。


紙コップのアイスコーヒーを丸いお盆に載せながら、精悍な顔つきのまさに軍人のような男が入って来て、我々のローテーブルの上に置いて行き、直ぐに部屋を出て、ドアを静かに閉めて行った。

「話しの内容は結構色々とありますが、簡単に言いますと、Mr.ジョルジュ・ピケティは今現在、最もCウイルスの特性と、世界の事態を最も把握していて、更に今現在のCウイルスの対応策の鍵を握る一人に友人である北川大樹を必要としている。と、まあ、簡単に言うと、そんな事です。」

「私を、ですか?今現在、記憶喪失であり、今までの私に関する情報を説明されても、記憶が戻る兆しも全く無い状態の、全く戦力外の私を?・・・」

私はそう尾形陸将に話しながら、なんか急にバカバカしくなって不謹慎にも笑ってしまった。

「Mr.ジョルジュ・ピケティは北川さんが態と記憶喪失になっている可能性も我々に説明済みですし、その状態であれば尚のこと早急にお会いしたいとの事で、まずはスカイプでの対話をしたいとの意向も有り、隣の会議室にスカイプ対応IT機器類を用意させて頂きました。
Mr.ジョルジュ・ピケティの話だけでは無く、正直!私たちも北川さんには興味があります。
いみじくも彼が言ったことの特殊能力の開花は、ここまでAH―1Sベルヘリコプターを短期間にベテランパイロットのように操縦して辿り着いたのですから、もはや信じるしかないのです。」

私は全く理解などしていな状態だったが、全く思いだすことのない名前だけの外人、フランス人のジョルジュ・ピケティとスカイプのテレビ電話とは言え、画面越しながら会って見てみれば、少しは記憶が戻ってくるのではないか?と淡い期待も有り、尾形陸将の後を桐山千賀子と一緒に着いて行った。


桐山千賀子は尾形陸将による私の経歴の説明を聞いてから、私を意識するように何度もチラチラと見ていた。

今までは、得体は知れないが何か?不思議な能力がある記憶喪失の平均的な一般人!と思っていたのに、実は東京大学出で脳科学者でもあることが説明され、尚且つフランスの研究所にも務めていた、いる?のだから改めて見直したのだろう。

と言うか、当の本人である、私でさえ、その華麗なる経歴には驚嘆するしか無かった。

しかし、当の私?脳科学者が意図的に?記憶喪失を自分に課した?とは、どういう事だ?

4階の会議室は尾形陸将の隣の部屋、所謂、ドアの無い壁側の反対にあるので廊下を一旦出て尾形陸将の部屋を通過して到着した。

会議室と説明されたので、役所関係にある良くある会議室をイメージしていたら、ちょっとした指令本部で、楕円形のような15~16人は座れる円卓、壁には大型スクリーンや大型壁掛けテレビモニターが両側の壁に設置されていた。

そして、円卓にもノートパソコンが席の前にネットケーブルで接続されていた。

傍聴などリスクヘッジからか、Wi―Fiは使わないのだろう。

尾形陸将は地下3階には本格的な指令本部施設があると言っていた。

円卓の半分の半分、丁度!扇型のテーブルが移動して外していて、楕円卓の中央にノートパソコンとインカムが置いてあり、尾形陸将部屋側の壁に設置ある大型モニターに対面する感じにスカイプ用の席が設けられていた。

モニターにはもう繋がっているのか、相手側、ジョルジュ・ピケティ側の映像が映し出されていたが、その映像には机と同じようなノートパソコンが置いてあるだけで、時折、人の影が机の後ろの壁に映る感じで、ライブ映像なのかは分かるが、人は映っていなかった。

私は尾形陸将に円卓の真ん中の席に座るように指示され、大型モニターに誰も映っていない何処かの研究所の部屋の四隅に設置されているだろう?なライブ映像を見続けた。

私が、スカイプ回線が繋がった席に座ると、会議室の天井スピーカーからあちらの数人のどよめきが聞こえて来て、その後に、一人の男が笑顔で、見ようによってはにやにやした感じで画面横から現れ、席に座って、ぎこちなく、だけど馴れ馴れしい笑顔で挨拶した。
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