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鬼首村の鬼の洞窟に生贄娘とガラシャ一行!降りる
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次の日になり、三浦精喜はやや遅れて、旅館に来て、早くも両村長から小言を言われていた。
娘達の親族による身送る手前もあり、ガラシャ達は先に指定された場所まで行って待っていた。
そこは鳴子村から川を渡って鬼首村に向かう細い山道のような所で、実際、汚く小さな鳥居が奥にひっそりと隠れるようにある細い道の入り口だった。
10分ぐらいして、悲壮感漂う両村の生贄の娘達が下を向いて三浦の後ろに付いて歩いてきた。
娘達は同じ旅館にいた大女三人の姿に一瞬驚いて見上げていたが、三浦が、彼女らに軽く会釈し、
「ここから更に奥の井戸洞窟ですから」
と、早くも息を荒げて、先頭に立つ姿に、もはや疑念の心境も無くついて行った。
ガラシャは馬を昨日宿泊滞在した旅館に預けていたので、当然ここまで徒歩だったが、三人の脚の長さが一緒なのか、スムーズに早いスピードでここの待合所まで来れた。
更なる奥の道のりは草や林が繁る獣道で、ガラシャは蛇やムカデなどの存在が怖くて仕方が無かった。
そこは、さなえとようこ、そして三浦や娘達が先に行ってくれるので、助かったのだが。
やはり武家の娘であるから、こんな山奥の獣道を歩くなんて、初めてであった。
三浦精喜は、ハアハア言いながらも、口寂(くちさび)しいのか、同じようなことを何度も喋っていた。
ここ最近、鬼首村や付近一帯の村々は天候不順から農作物がなかなか採れなくて、飢饉に喘いでいた。
とか、娘たちに村の為にこのことは大変栄誉あることだとか、そんなことだった。
そして、もう直ぐ、伝説の「鬼の洞窟」が近いたのか、
「今度こそ、出て貰わないとな!」
と捨て台詞を吐いた。
多分、鬼のことだろう!
ガラシャは照井智恵に教えてもらった、最近は殆ど鬼が現れず、その原因も本当は簡単なことなのだけれども、三浦はともかくとして、付近の村の長どもは知る由も無く、また、照井智恵も助言する気はさらさらなかったのだ。
そして、遂に、小高い丘の上に到着と共に、足元に丁度井戸のような穴が開いていて、伝説の「鬼の洞窟」が口を開けて待っていた。
「ここからは、男は立ち入り禁止でして、ここにある縄梯子を穴の下に垂らして降りて頂く、と言う事で!」
三浦は穴を覗きこみながらそう説明した。穴の近くには大木があり、そこに太い縄梯子が結んであり、そんなに古くも無い縄だったのがガラシャ達にとっては安心ではあった。
「ははは、この縄梯子を定期的に取り変えるのもオラの役目ですから」
と、三浦は下卑た笑いをしながらそう言って、
なにはともあれ、伝説の鬼の洞窟に着いたので、さなえとようこは早くも降りる準備に取り掛かり、火打石やら松明やら何かあったらと、登り易いように瘤がある縄の太い紐も一緒に大木に括(くく)り付け、穴の中に一緒に垂らした。
そして、先にさなえが縄梯子では無く、自分たちの用意した紐、所謂ロープを使って降りはじめた。
降りる前に松明に火を付けて二、三本下に投げ込んだ。
下まではおよそ15メートルから20メートルはありそうで、間違ってここから落ちたら、即死、そんな深さだった。
だが、下は水が無かったので幸いと言えば幸いか。
(服が汚れないですむから)
簡単なものを背負って、まずはさなえが迅速に、まるで「くの一忍者」のような身軽さでするすると降りていき、下に付いた。
そして、ある程度、下の様子を偵察し、次にようこが先に縄梯子で降り、その後に、擁護されるようにガラシャも降りた。
その後を不思議な表情を浮かべながら二人の生贄用村娘が降りてきた。
「無事、降りられましたか?」
と、三浦は上の穴から声をかけ、松明に照らされたガラシャの顔を見て、安心したのか、
「ここで、待機していますから」
と付け加えて、直ぐに顔を移動した。
その穴の下には鍾乳洞の大きな洞窟があり、改めて上の降りてきた穴を見上げて見ると地下20メートルも深かった。
しかし、思ったほど暗くはなく、少し奥からは水しぶきの音がして、その音のする方向に移動すると小さな滝がやはり天井の穴から光りが射しこみ、10メートルの高さから湧きだした水が滝のように流れて落ちていた。
その下には透明な冷たい水があり、地底湖がそこから更に洞窟奥へと続いているようだった。
「洞窟の中だから寒いのかと思ったら、意外や意外、寒くないんだね」
ようこがガランとした広い洞窟の中を見渡しながらそう感想を漏らした。
村の生贄娘二人は、早速、教えられたのか、小石が摘まれている塚みたいな所を探して、そこに持ってきたお供え物、はっきりいってお団子とか、お酒の入った徳利を傍に置いた。
「鬼殺しの、お酒かな?」
ようこは陽気な声でまた喋る。
「ま、直ぐに現れる訳でもないから、こっちの光の当たる場所で腰を降ろしましょう。」
さなえは、下に降ろしていた!
丸めて仕舞っていた茣蓙(ござ)を何枚か広げて、洞窟の地面に敷き、ガラシャや、娘たちに腰を降ろすように勧めた。
「このまま、鬼や何も現れなかったら、何の為に訓練したのかしらねぇ、ねっ?さなえお姉さん?」
ようこは、なんとも含みのある言い方をしてからかっていた。
「し、静かに、と言うか、ようこは緊張さが無さ過ぎです。
黒川村随一のいや、東北でも随一の千里眼を持つと言われる智恵さまの予見ですよ、必ず鬼は現れます」
さなえはそう言いながら、松明(たいまつ)を片手に一人洞窟の中を歩き、暗いところを重点的に照らして見ているのであった。
娘達の親族による身送る手前もあり、ガラシャ達は先に指定された場所まで行って待っていた。
そこは鳴子村から川を渡って鬼首村に向かう細い山道のような所で、実際、汚く小さな鳥居が奥にひっそりと隠れるようにある細い道の入り口だった。
10分ぐらいして、悲壮感漂う両村の生贄の娘達が下を向いて三浦の後ろに付いて歩いてきた。
娘達は同じ旅館にいた大女三人の姿に一瞬驚いて見上げていたが、三浦が、彼女らに軽く会釈し、
「ここから更に奥の井戸洞窟ですから」
と、早くも息を荒げて、先頭に立つ姿に、もはや疑念の心境も無くついて行った。
ガラシャは馬を昨日宿泊滞在した旅館に預けていたので、当然ここまで徒歩だったが、三人の脚の長さが一緒なのか、スムーズに早いスピードでここの待合所まで来れた。
更なる奥の道のりは草や林が繁る獣道で、ガラシャは蛇やムカデなどの存在が怖くて仕方が無かった。
そこは、さなえとようこ、そして三浦や娘達が先に行ってくれるので、助かったのだが。
やはり武家の娘であるから、こんな山奥の獣道を歩くなんて、初めてであった。
三浦精喜は、ハアハア言いながらも、口寂(くちさび)しいのか、同じようなことを何度も喋っていた。
ここ最近、鬼首村や付近一帯の村々は天候不順から農作物がなかなか採れなくて、飢饉に喘いでいた。
とか、娘たちに村の為にこのことは大変栄誉あることだとか、そんなことだった。
そして、もう直ぐ、伝説の「鬼の洞窟」が近いたのか、
「今度こそ、出て貰わないとな!」
と捨て台詞を吐いた。
多分、鬼のことだろう!
ガラシャは照井智恵に教えてもらった、最近は殆ど鬼が現れず、その原因も本当は簡単なことなのだけれども、三浦はともかくとして、付近の村の長どもは知る由も無く、また、照井智恵も助言する気はさらさらなかったのだ。
そして、遂に、小高い丘の上に到着と共に、足元に丁度井戸のような穴が開いていて、伝説の「鬼の洞窟」が口を開けて待っていた。
「ここからは、男は立ち入り禁止でして、ここにある縄梯子を穴の下に垂らして降りて頂く、と言う事で!」
三浦は穴を覗きこみながらそう説明した。穴の近くには大木があり、そこに太い縄梯子が結んであり、そんなに古くも無い縄だったのがガラシャ達にとっては安心ではあった。
「ははは、この縄梯子を定期的に取り変えるのもオラの役目ですから」
と、三浦は下卑た笑いをしながらそう言って、
なにはともあれ、伝説の鬼の洞窟に着いたので、さなえとようこは早くも降りる準備に取り掛かり、火打石やら松明やら何かあったらと、登り易いように瘤がある縄の太い紐も一緒に大木に括(くく)り付け、穴の中に一緒に垂らした。
そして、先にさなえが縄梯子では無く、自分たちの用意した紐、所謂ロープを使って降りはじめた。
降りる前に松明に火を付けて二、三本下に投げ込んだ。
下まではおよそ15メートルから20メートルはありそうで、間違ってここから落ちたら、即死、そんな深さだった。
だが、下は水が無かったので幸いと言えば幸いか。
(服が汚れないですむから)
簡単なものを背負って、まずはさなえが迅速に、まるで「くの一忍者」のような身軽さでするすると降りていき、下に付いた。
そして、ある程度、下の様子を偵察し、次にようこが先に縄梯子で降り、その後に、擁護されるようにガラシャも降りた。
その後を不思議な表情を浮かべながら二人の生贄用村娘が降りてきた。
「無事、降りられましたか?」
と、三浦は上の穴から声をかけ、松明に照らされたガラシャの顔を見て、安心したのか、
「ここで、待機していますから」
と付け加えて、直ぐに顔を移動した。
その穴の下には鍾乳洞の大きな洞窟があり、改めて上の降りてきた穴を見上げて見ると地下20メートルも深かった。
しかし、思ったほど暗くはなく、少し奥からは水しぶきの音がして、その音のする方向に移動すると小さな滝がやはり天井の穴から光りが射しこみ、10メートルの高さから湧きだした水が滝のように流れて落ちていた。
その下には透明な冷たい水があり、地底湖がそこから更に洞窟奥へと続いているようだった。
「洞窟の中だから寒いのかと思ったら、意外や意外、寒くないんだね」
ようこがガランとした広い洞窟の中を見渡しながらそう感想を漏らした。
村の生贄娘二人は、早速、教えられたのか、小石が摘まれている塚みたいな所を探して、そこに持ってきたお供え物、はっきりいってお団子とか、お酒の入った徳利を傍に置いた。
「鬼殺しの、お酒かな?」
ようこは陽気な声でまた喋る。
「ま、直ぐに現れる訳でもないから、こっちの光の当たる場所で腰を降ろしましょう。」
さなえは、下に降ろしていた!
丸めて仕舞っていた茣蓙(ござ)を何枚か広げて、洞窟の地面に敷き、ガラシャや、娘たちに腰を降ろすように勧めた。
「このまま、鬼や何も現れなかったら、何の為に訓練したのかしらねぇ、ねっ?さなえお姉さん?」
ようこは、なんとも含みのある言い方をしてからかっていた。
「し、静かに、と言うか、ようこは緊張さが無さ過ぎです。
黒川村随一のいや、東北でも随一の千里眼を持つと言われる智恵さまの予見ですよ、必ず鬼は現れます」
さなえはそう言いながら、松明(たいまつ)を片手に一人洞窟の中を歩き、暗いところを重点的に照らして見ているのであった。
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