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98 最終話. エピローグ
「…本当に、ここから入っていいのかよ。佐野」
「だって、あいつからここに来てってメール来てんだもんよ」
「…関係者以外立ち入り禁止って分かりやすく書いてるけど…」
椛は目の前に張り出された紙を見て、呟くようにそう言った。
今の時刻はちょうど3時ごろ。彼女の公演が終わって、大体1時間ほどたった時間帯だ。
俺は事前に、彼女にこの場所の少し先に呼び出されていたのだが、関係者以外立ち入り禁止の紙が貼られたドアの前で、立ち往生してしまっていた。
流石にこの張り紙を見てしまったら、目の前のドアノブを捻る勇気は湧かない。
「…どうする?佐野くん、私連絡してみよっか?」
「うーん。もう少しだけ待ってみましょう」
きっと、公演を終えてここに来ていた記者から色々尋ねられているんだろうと思った俺は、スマホ片手に聞いてきた先輩にそう言った。
公園が終わってから1時間もすれば、流石にこの文化ホールの人は少なくなってきていた。
始まる前の賑やかさから一変。今俺たちがいたのは、いつもの静かだけどしっかりと落ち着いた雰囲気のある、長山町で。
先ほど先輩に待つよう提案したはいいものの、彼女からの連絡もないし、ずっとここにいるわけにもなと、俺が小さな葛藤をしていたその時だった。
「…あのー。ちょっといいですか」
「…えっ?」
後ろから飛んできた声は、今俺たちが期待している声色とは全く異なる低い声だった。
振り返ると、やや険しい表情を浮かべた男性が立っており、少し目線を下にやると、この男性の正体が分かった。
「…僕は、ここのスタッフですが。あなたたちはここで何をしているんですか?」
「…いや、ここで人を待ってるんですよ。俺たち」
緊張した顔つきで、須山がその人に言ったのだが、
「……本当にそうですか?僕には、あなたたち5人がここから入ろうとしているようにしか見えなかったのですが」
須山の見た目がチャラいのが悪影響を及ぼしたのもあってか、スタッフの人は一向に信じようとしない。
ここは理由をしっかり話したほうがいいかな。でも、一応あいつの名前は出さないように。
そう考えた俺は、須山と何か言い争いを始めそうなスタッフの人の間に「あのー」とゆっくり入って。
「…突然ここに来てすみません。ですが、彼の言っている通り、僕たちはここで人を待ってるんです」
「…人って言われてもですね。誰を待ってるんですか?お友達とかじゃないんですか?」
「まあ…友達……ではないですね、僕は」
「おい佐野お前何照れてんだよ」
「…………」
「…雫ちゃんその顔やめな」
先輩の苦笑い混じりのツッコミを横目で見たスタッフは、
「…お友達でないのであれば、ここに滞在される理由になりませんよね?」
「…いやまあ、そういう訳でもなくて──」
「──ごめーん、本当に遅くなっちゃった!」
刹那、勢いよく目の前のドアが開いたと思えば、この場に響く声があった。
それは、今までも、そして先ほどまで。俺たちが聞いていた優しい声で。
だけど、浮かべたやや焦り気味な表情がどこか頼りなく感じてしまって。
あの時から変わらない、ボブの内巻きの髪型をしたそいつは、やっぱり俺たちの知る少女──。
──佐伯 茜だった。
彼女の姿を見るや否や、俺と話していたスタッフは帽子を慣れた手つきで取って、
「あ、根坂さん。お疲れ様ですー」
「ああ、お疲れ様です!で、ごめんみんな!ちょっと、インタビューとか色々してたらだいぶ遅れちゃった……」
「…大丈夫よ。ね?ヤマくん」
「おう!ていうか茜はやっぱり変わらないなー」
「そうだね!でも、私には茜ちゃんがちょっとだけ大人っぽくなったように見えるなー」
「…ああえっとすみません」
茜の元気な声に、雫、須山、先輩が笑顔で話すのを横目で見たスタッフは、やや焦った顔で茜と3人の間に割って入った。
「…根坂さんのファンの方でしたでしょうか?ですがすみません、根坂さんはこのままお帰りになるので…」
「…はーっ」
すると、先ほどからのスタッフの態度に何か気に入らないものがあったのか、1人大きく分かりやすくため息をついたやつがいた。
別にこのスタッフの人は悪くないんだけどな…と俺は少し同情を交えつつも、久しぶりにこいつ怒ったなと内心めんどくさく思いながら、
「…あのね、アンタ。さっきの私たちの会話聞いてて分かんなかった?茜と私たちは、しっかりとした知り合いなの!そんなファンなんて薄っぺらいものなんかじゃないに決まってるじゃない。特に私は、この子のあ──」
「──はいストップ!田中くん、僕はこのままこのホールこの人たちと一緒に出るから、後の片付けは君たちスタッフに任せちゃっても大丈夫かな…?」
「…ああはい、それは大丈夫ですが?」
「……もご、ちょ…口を、ど…けなさ…」
「…ありがとう田中くん!頼りにしてるぞ!」
茜はそう言って、田中と呼んだスタッフにウィンクをしてから、俺たち5人を引き連れて、正面出口とは真逆方向にある関係者出口から俺たちを文化ホールから出した。
裏出口から見えた駐車場には、もうほとんど車は停まっていなかった。
文化ホール2階の、外に飛び出た裏通路のようなところで、俺たち6人は小さな円を作る。
全員が、彼女の顔を。
彼女が、全員の顔を。しっかりと見ることが出来るように。
すると元気よく、今まで何度見てきたか分からない笑顔を浮かべた茜は、
「…とりあえず今日は、僕のために来てくれてありがと!みんな!」
「全然!私も、茜ちゃんの公演見れて嬉しかったよ!」
「俺もー。なんか高校時代の友人がこんな有名になってるなんて、考えるだけでもすごいよなー」
「ふふん、私なんてその有名な子の姉なんだからね!誇り高いわ!」
「…まあ確かに。普通にそれは羨ましいかもね…」
雫が胸を張りながら言う中、微笑を浮かべて言葉をこぼす椛。
「…んで、佑も。来てくれて嬉しいよ」
「……いいよ、どーせ暇だったし」
「…まーた佐野くんは隙あらばイチャつくー」
「その目やめてください先輩」
先輩にジト目を向けられた俺は、そう冷静にツッコむのだった。
高校2年の始まりの春に、俺はここ長山町に引っ越してきた。その時の隣の家の住人、佐伯茜。
初対面は確か、どうってことない自動販売機だった記憶がある。
最初から色々突っ走ってて、どこか落ち着かない様子もあった茜。
そんな彼女は、俺たちと同じ中浜高校を卒業した後、専門学校に進学。
そして彼女は今。大学在学中なのにも関わらず、若くてすごいという文句がつく人気小説家だ。
朝の情報番組では、ここ最近彼女のニュースをよく見る。内容は、今回公演でも紹介された小説のことについてで、まだこんなに若いのに、と文学界に詳しい人を唸らせていた。
だけど、ただ単に小説がいいからだけではこんなにも有名にはならないはず。
ではなぜこんなにも彼女は有名なのか。理由を挙げるなら、それは間違いなく。
「…私思ったんだけどさ」
すると、ジト目を向けていた先輩がふと茜の方に向き直って、
「…どうしたんだ?あおちゃん」
「…茜ちゃんの小説はもちろん有名で人気なんだろうけど…。きっと、有名で人気な理由って茜ちゃんが可愛すぎるってのもあると思うんだよね」
「…えぇっ!?ちょっと久しぶりに喋るからって変ないじりしないでくれるかーあおちゃん!」
「…と言ってますが、佐野くん。そこら辺はどうお考えで?」
「先輩に激しく同意」
「…ちょ、佑までっ」
そう。理由は、あまりにも可愛すぎる容姿と見た目。
ニュースを見ていると、どうやら彼女はファンクラブができるほどだそうで、記事にも『可愛すぎる新人小説家』などと紹介されているものがあった。
高校生の時から変わらない、髪型。
高校生の時から変化のあった、雰囲気や顔つき。
今の彼女は、雫ほど落ち着いてはないけど。だけど、しっかりと大人の女性としての魅力を感じられる。
茜は分かりやすく頬を染めて、
「…も、もういいじゃん。僕が可愛いとかそうじゃないかとかいう話はっ!」
「……あはは。じゃあさ茜、私あなたに聞きたいことがあるんだけど」
茜から見てちょうど真正面の位置に座る椛は、人差し指をピンと立てて彼女に尋ねた。
「…うん、どうしたんだ椛」
「公演の時も、さっきスタッフの人に呼ばれてた時も。茜、根坂先生って呼ばれてたけど…。小説の作者名は佐伯茜じゃないんだなって思って。その理由はなんでなんだろうなーってふと私気になったの」
「あーそれは確かに。一瞬だけ、根坂先生って聞いて、誰?って俺なったもん」
すると茜は一つ、小さな微笑を浮かべて、
「…根坂 秋絵っていうのは、今更ながら僕のペンネームなんだけど。実はこれ、考えてくれたの佑なんだよな」
茜はそう言うと俺の方をチラッと見た。
周りの4人は、驚いたような表情を浮かべて、
「…え!?そうだったの、佐野くん」
「…はい、まあ…。流石に本名で出すのはよくないかなって思って、少し考えてみました」
「…でも何でそんな名前にしたんだよ?せっかく名前変えるなら、もっと派手なやつにすればよかったのに」
「……それは──」
「──全く。ヤマくんはやっぱりバカよねぇ」
右隣から声が聞こえたと思えば、そこには須山のことを嘲笑するような表情で見る、雫がいた。
「…姐さんって、そんなに辛辣な人だったっけ」
「…ってごめんごめんごめん!そんなに凹まないで!」
わざとらしく落ち込む須山に、絵に描いたように焦る雫。
ここだけ切り取っても、きっと椛も含めたこの3人は向こうでうまくやってるんだなってふと思って。
「…冗談だよ。ってか、そう言うってことは姐さんは佐野が茜のペンネームをあの名前にした理由が分かるってことか?」
「ふふん、その通りよ!私分かっちゃいました!」
すると雫は俺の目をじっと見据えて、
「…根坂 秋絵って、佐伯 茜って名前を並び替えた名前でしょ?」
「…ねさかあきえ、さえきあかね…。うわ、本当だ!雫ちゃんすごい!」
「へへん、どんなもんよあおちゃん!」
「…これは素直にすごいって言うしかないぜ…姐さん」
目を輝かせて拍手する須山と先輩。だけど、左隣に座る茜は、2人とは対照的なジト目を雫に向けて、
「…なーにが分かっちゃいましただよ。事前にそのこと知ってたくせにさ」
「「前言撤回」」
「…ちょっと茜、何で余計なこと言うのよ!」
「……そうやって変に意地張るところも、やっぱりお姉ちゃんは変わらないよなー」
表情を変えずにそう言う茜に、俺は思わず微笑をこぼしてしまうのだった。
最初茜にペンネームを相談された時、俺も須山のようにインパクトのある名前にしようかと考えていた。だけど、この作品は茜が高校生の時から手がけていた作品で、それを側から見ていた俺はどうしても茜が作ったものとしての根拠のようなものが欲しかった。
だから俺は、本名をそのまま並び替えたものを茜のペンネームにした。茜に決まったペンネームを言うと、彼女はすごいと純粋な笑顔で感心してくれ、この名前にしてよかったと瞬間的にホッとしたのを覚えている。
「…意地張りって、それを言うなら茜も──」
茜の言葉に過剰に反応した雫は、眉を立てて彼女に意を申し立てるように言葉をこぼしていく。
まるで、俺の人生の転機だったと言っても過言ではない、高校時代の時のように。
そして、あの高校で過ごした2年間を思い出させるかのように。
俺たちは、各々の出来事を話していく。
先輩、須山、椛。そして、茜と雫。
俺たちは久しぶりに6人で揃ったはずなのに、話題に上がるのは、高校時代の話が多かった。
きっと、今それぞれが進んだ道も、楽しいのは間違いない。
だけど、それ以上に。
それよりも、高校で過ごした日々の方が。あまりにも充実してて、記憶に残るものだったから。
ふと、高校時代にそよいだ風と同じ匂いがした。
楽しかった。その日々を、懐かしく感じるほど年が経ってしまった。
俺たちはもう、高校を卒業して。
もう…あの頃には戻れなくて。
少しだけ、どこか。寂しい気持ちになるけど。
──だから。
だから、今日。この瞬間だけは。
いくら茜が人気若手小説家だろうが。
いくら先輩の働きっぷりが良かろうが。
俺たちの、今は。高校の時と同じような、空気感で。
みんな同じで、みんなが楽しくて。
そんな時間を過ごそうって、俺は思った。
きっとここにいるみんなも、それを分かってくれてるだろう。
小さな円の中で広がる会話は、まさに高校時代の延長のように感じで。ずっと、これが続けばなと俺は流れる雲を見上げて、ふと思った。
…でもやっぱり、時間というものは無常なもので。
「……あっ」
そんな声を挙げたのは、先輩だった。彼女は、腕をじっと見た後に、
「……ごめん、私そろそろ行かなきゃ。そろそろ時間だ」
「…あー、俺も。今日は外せない予定が……」
「私はまだ時間ちょっとだけあるけど…。でも、早めに行動してた方がいいわよね」
先輩に釣られるように、次々と時間を確認するみんな。
「…本当は、この後みんなでご飯とか行きたかったけど…。しょうがないね…」
残念そうに、先輩はそう言った。
「…そうだな。僕もこの後、事務所戻って色々作業あるし」
「……じゃあ名残惜しいけど。お開きに…しますか」
「…そうだな、佐野」
ゆっくりと俺が立ち上がると、みんなも同じように立ち上がって、各々縮んだ筋肉を伸ばしていた。
今度はいつ、みんなで集まれるのだろう。
1週間後?1ヶ月後?いや、はたまた1年後以上になってしまうかもしれない。
……もしかしたら、それ以上かも…。
「…まあ、きっといつかまた会えるし。そのためにも、今日はサラッと解散しようよ。ねっ?」
軽く俯く俺含むみんなに卓球場で聞いたかのような声を発したのは、星本先輩だった。
瞬間、澱んでいた気持ちは体から抜け落ちた気がした。
やっぱり、先輩の声って人に前を向かせる力があるなって。
「…そうだな、じゃあ俺は椛と車だから。じゃあな!」
「…じゃあね、みんな」
「うん!じゃあな、椛、実くん」
茜が振った手を、優しく振り返した2人は、下に見える駐車場へと階段を降りて行った。
「…じゃ、私も行こうかしらね。茜は今日も、家に戻ってこれないのよね?」
「そうだな。ごめん、お姉ちゃん。また日を見つけて家に戻るよ」
「…なんで謝るのよ。あなたはすごいことを達成して、なおも前に進もうとしてるんだから。私はあなたの顔をたまに見れればそれで十分。だから今日は、もう私は満足してるわよ」
雫は春風に負けない優しい笑顔を浮かべながら、茜に頭を軽く撫でる。
それが伝播したのか茜の表情も、申し訳なさそうな顔から一変、にぱっと笑顔になる。
──佑に、その可能性があるってことに。
いつだったか。ふと、茜のそんな言葉が脳裏に浮かぶ。
きっとこれは俺がまだ高2の頃。雨が降った日に、茜たちと先輩の過去を全て話してもらった時。彼女が俺に雫を戻す、期待をしてくれていると言ってくれた時だったか。
なあ茜。俺は、お前が望んでいる、昔の雫に。
お前が会いたいと思っていたお姉ちゃんに。
──戻すことが、できたのかな。
だったらいいな。と俺が心中考えていると。
「…じゃあ、私。行くわね」
「うん!また料理食べさせてあげるから、待っててなー!お姉ちゃん」
「その言い方やめなさいよ!じゃあまたね、あおちゃんも!」
「うん、また遊びいこーね!」
出会った時の俺に現状を言えば、100%信じてもらえないであろう、顔いっぱいの笑顔を雫は浮かべて、須山たちが降りていった階段とは真逆方向に足を進めていった。
「…雫ちゃんはほんと。変わったよねぇ」
「そうだな、あおちゃん。僕も感慨深いよ」
「…ね。さてと、じゃあ私も帰るとしましょうかねー」
チラッとスマホの画面を見た先輩は、茜の方を見て、
「…じゃあ、忙しくない時ができたら、また遊びに行こうね!約束だよ?」
「うん!約束だ!」
「佐野くんも、茜ちゃんを泣かせたら私、許さないからね??」
「…分かってますよ。これからも大切にしていきます」
「相変わらず、ラブ茜ちゃんだねー。あはは」
高校時代、何人の男子を落としてきたか。純粋無垢な笑顔を先輩は浮かべた。そんな言葉に、茜は少し恥ずかしそうな顔をしていたが、嬉しそうな表情だったので、俺も内心心が温かくなった方に感じた。
「…またね!2人とも!」
肩にトートバッグを下げた先輩は、須山たちが降りた階段の方へと歩いていった。先輩も言ってはなかったけど、きっと車を持っているんだろうな。
「…そういえば佑は何か用事はないのか?」
先輩が完全に見えなくなった時、茜は俺に不思議そうな顔で尋ねてきた。
俺は思わず頭を軽くかきながら、
「それが、ないんだよな。今日は本当に何もなくて。単純に、茜の公演を見にきただけというか」
「…そうかー。あ、じゃあさ」
すると、茜は突然何かを思い出したかのような反応をして、
手を後ろに組んで、上目遣いで俺のことを見ながら。
「…事務所に戻る前に、僕寄りたいところあるんだけど…。一緒に来てくれないか?」
茜からのそんな誘いに、もちろん俺は断れるはずもなく。
そもそも、断るつもりも。理由も。何もなくて。
「いいよ。どこに行くんだよ」
「…おーやったあ!それはなー」
茜は、人差し指を唇の前に持ってきて白い歯を見せて。
「内緒っ!」
俺は思わずそっぽを向いてしまいながら、
「…お前なぁ。いちいちそんなことするなよ」
「…なんで?」
「いや…なんかその。全部可愛く見えてきちゃうからよ」
「……あのさあ。唐突にそういうこと言うのやめてくれるか?心臓に悪いんだけど」
「じゃあやるなよ…」
この言葉の掛け合いも、やっぱりどこかバカらしいけど、楽しいものだなと。
俺の言葉に、茜はもういいじゃん!と謎に怒り気味にそう言うと、俺の手を引き始める。
「ほら、行くよ!ここから目と鼻の距離にあるから。早く!」
「…ちょっと待ってくれ。手を繋ぐって聞いてないんだが」
「いいじゃん、僕が繋ぎたくなったの」
「…でもお前、今有名人じゃん。こんなとこ誰かに見られたり撮られたりしたら、一瞬でスクープとかなるぞ?」
俺がそう言うと、茜はニヤリとして、
「…ふふん、僕を甘く見てもらっちゃあ困るな。佑」
「…それは?」
ポケットをまさぐってたと思えば、何かを取り出した茜。
「…マスクと、帽子!これしてりゃ、大抵バレないんだ!だからほら、佑。行くぞー!」
「ちょおい待てって、引っ張るなよー!」
茜は俺の手を引いて、雫が降りていった階段の方へと走り出した。
刹那、目の前の少女の後ろ姿が、一瞬過去に戻る。
制服を着て、スカートを靡かせて。こちらを振り向けば、屈託の可愛らしい笑顔を見ることができて。
あの時から、時間は経ったけど。茜に対する気持ちは全く衰えなくて。
人気小説家になった今でも、しっかりと初心を忘れない彼女の行動に、俺は思わず微笑をこぼす。
絡めた手のまま引っ張る茜は、この瞬間だけ。公演時の凛とした彼女ではなく、高校時代の無邪気で愛くるしい茜だった。
やがて、彼女のいう通り本当に目と鼻の先にあったある場所に俺たちは辿り着く。
「……ここは、本屋?」
久しぶりに体を動かしたからか、息が少しだけ上がってしまいながら、俺は目の前の建物を見上げる。
「そう、本屋さんだぞ!ってなわけで入ってこー」
茜はそう言うと、相変わらず握った手を離さずに本屋の自動ドアを通る。
店内は、落ち着いた雰囲気で。俺はそういう類に詳しくないが、何かしらのクラシック音楽が流れていた。
茜は、首を小さく動かしながら、足を進めていく。
何か探しているのだろうか、と一瞬思ったが。
思えば、茜がここに行きたいと言ったのは、今の彼女の職業から簡単に推測することができた。
まあ、確かに自分の地元で…確認したいよな。
やがて、本屋に入って少し進んだところで、茜は足を止めた。
「…あった」
「そうだな、しかも。こんな目立つ形で」
俺たちが足を止めたのは、ある本が目立つ形で展示されてる場所で。
表紙が見やすいように、わざわざ少し角度がつけられていて。
茜の。いや、根坂先生の作品はここに置かれていた。
「…なんかこうやって置いてくれてると。嬉しく感じるな、僕」
口角を少しだけ上げて、本当に嬉しそうに笑う茜。
俺は、彼女の顔を軽く覗き込んで、
「嬉しいってことは、それだけこれ作るのもしんどかったんだろ?」
「…まあな。最初出版社に出した時は、笑われたよ」
その話は、俺は痛いほど知っている。
大学生になった直後に、茜は高校生から手がけていた作品を初めてある出版社に持っていったんだ。
そして、帰ってきた茜から電話があって。
いつもの喜んだ声が聞けるかと期待した俺は、スマホから漏れてくる泣き声に心臓がきゅっと締め付けられて。
「…でも、そこからよく今まで持ってきたよな」
「まあ…僕の夢だったからな、これは。それに──」
すると茜は俺と絡んだ手を今一度強く握りしめて、
「──何よりも、応援してくれる存在がいたからさ。駆け出しの僕を、まるで自分のことかのように。特に、君とかな!」
「…俺は、読んだだけだよ」
彼女の笑顔に、俺は思わず横を向いて、
「……たとえそれだけだったとしても。僕にとってはとても嬉しかったぞ!本当に、君が僕の彼氏でよかった、佑!」
「きゅ、急にどうしたんだよ茜」
「何がー?僕は感謝を伝えたくてー、にひひっ!」
見えるのは目だけだったけど。相変わらず、こいつの笑顔は眩しいなと。
そして、やっぱり茜には敵わないなと。
出版社に笑われた彼女が、こうして人気小説家まで上り詰めた、努力を俺は知ってるから。
今、こうして彼女の笑顔を見ることができると考えると、魅力が多すぎる女性だなと思って。
「…そうかよ」
もう一度、彼女の顔を覗き込む。
根坂先生が書いた作品を、懐かしむ感覚で眺める茜の姿が目に入る。
こうして売れるまで、辛いことがあったのだろう。
誰にも頼れずに、孤独に作品を作った日もあっただろう。
電話の話だって、本当に。悔しいって気持ちが痛いほど伝わってきたから。
──だから彼女は、人一倍頑張って。
この幸せを、自力で掴み取って。
そして、隣にいる俺も笑顔にして。
「…今まで、よく頑張ったな。茜」
「うんっ!僕、頑張ったぞ!」
両手で持った本を、上に掲げながら。可愛らしく喜ぶ茜を、俺は優しく見ていた。
茜は、俺に幸せを与えてくれた。
彼女の努力で、俺は幸せな日々を送ることができた。
じゃあ、今度は。俺が、彼女を。
茜の笑顔を絶やさないように、努力をする番だ。
茜が、俺にもっと魅力を感じてくれるように。
茜を、今以上に愛せるように。
これからも、俺は。頑張っていこうと思う。
すると、そう決意した俺の目に、あるものが映った。
「…今更なんだけどさ」
「うん?どうしたんだ佑」
「……この、タイトルの意味って。なんかあるのか?」
思えば、先ほどの公演でも。不思議と尋ねられていなかったなと。
そんな質問に茜は、手に取った小説の題名を眺めながら、
「…これ、公演でも言ったけど。ノンフィクションの話でさ。内容は…"僕"が経験した、青春の話って感じで」
「…茜の、実体験の内容なのか」
「…そう。というか、佑はまだ読んでくれてないのかよ!」
「…いやほんとごめん。そろそろ就活始めようと思ってたら時間なくて」
「じゃあ僕がこれ買ってあげるから。よかったら事務所寄って読んでいってよ」
「…本当か?でも、わざわざ買ってもらわなくても」
「いいんだよ。そこは僕のこだわりってことで!ってなわけで、行こっか!」
そう言うと茜は、いつの間にか離れた手を、握り直して、本屋を後にしようとする。
「…茜」
彼女が踵を返した直後、俺は茜の名を呼ぶ。
「…どうしたんだ?」
不思議そうな瞳で、彼女は俺のことを見る。
俺は、彼女のそんな瞳を。じっと見つめて。
今までの、これからの。想いを乗せて。
「──ありがとう」
と、言葉を紡いだ。
単純に、事務所に寄る話だけではない。本当に、今の現実や、創ってきた過去を振り返ると。彼女と出会って、付き合えたのは俺にとってかなり幸運だったんだなと。刹那的に悟った。
茜は、俺が見つめた瞳を見つめ返すかのように、目を細めて、マスクを少し顎にずらして。
「…こちらこそ。僕も、ありがとう!」
と、幸せそうな笑顔でそう言ってくれるのだった。
歩んでいこう、どこまでも。
きっと俺と茜なら。大丈夫。
お互いが、お互いを支え合って、これからも。感謝を伝え合える存在に。
そして、この小説の続きが書けるような、未来に。
俺は、茜と駆け出していきたい。
「…ではこちら、750円になりますー」
レジに本を持っていくと、定員の人からそう言われた。
茜は流れるような動作で、カードを取り出し、光っている場所にタッチした。
「…はい、ありがとうございます。えーではこちら──」
そして、定員さんは。根坂先生の書いた、作品を。
思い出や、記憶、青春の話が詰まった本を、俺の前に出す。
これは、"茜"の物語。彼女の、心境や想いが込められた小説だ。
だからこそ、この小説のタイトルも。彼女の気持ちが入った、そんなタイトルにしたんだろうな。
定員さんは、綺麗に包装された小説を手に取り俺に渡しながら、この本のタイトルを告げるのだった。
「──これからの僕の非日常な生活、です」
…と。
─── Fin ───
「だって、あいつからここに来てってメール来てんだもんよ」
「…関係者以外立ち入り禁止って分かりやすく書いてるけど…」
椛は目の前に張り出された紙を見て、呟くようにそう言った。
今の時刻はちょうど3時ごろ。彼女の公演が終わって、大体1時間ほどたった時間帯だ。
俺は事前に、彼女にこの場所の少し先に呼び出されていたのだが、関係者以外立ち入り禁止の紙が貼られたドアの前で、立ち往生してしまっていた。
流石にこの張り紙を見てしまったら、目の前のドアノブを捻る勇気は湧かない。
「…どうする?佐野くん、私連絡してみよっか?」
「うーん。もう少しだけ待ってみましょう」
きっと、公演を終えてここに来ていた記者から色々尋ねられているんだろうと思った俺は、スマホ片手に聞いてきた先輩にそう言った。
公園が終わってから1時間もすれば、流石にこの文化ホールの人は少なくなってきていた。
始まる前の賑やかさから一変。今俺たちがいたのは、いつもの静かだけどしっかりと落ち着いた雰囲気のある、長山町で。
先ほど先輩に待つよう提案したはいいものの、彼女からの連絡もないし、ずっとここにいるわけにもなと、俺が小さな葛藤をしていたその時だった。
「…あのー。ちょっといいですか」
「…えっ?」
後ろから飛んできた声は、今俺たちが期待している声色とは全く異なる低い声だった。
振り返ると、やや険しい表情を浮かべた男性が立っており、少し目線を下にやると、この男性の正体が分かった。
「…僕は、ここのスタッフですが。あなたたちはここで何をしているんですか?」
「…いや、ここで人を待ってるんですよ。俺たち」
緊張した顔つきで、須山がその人に言ったのだが、
「……本当にそうですか?僕には、あなたたち5人がここから入ろうとしているようにしか見えなかったのですが」
須山の見た目がチャラいのが悪影響を及ぼしたのもあってか、スタッフの人は一向に信じようとしない。
ここは理由をしっかり話したほうがいいかな。でも、一応あいつの名前は出さないように。
そう考えた俺は、須山と何か言い争いを始めそうなスタッフの人の間に「あのー」とゆっくり入って。
「…突然ここに来てすみません。ですが、彼の言っている通り、僕たちはここで人を待ってるんです」
「…人って言われてもですね。誰を待ってるんですか?お友達とかじゃないんですか?」
「まあ…友達……ではないですね、僕は」
「おい佐野お前何照れてんだよ」
「…………」
「…雫ちゃんその顔やめな」
先輩の苦笑い混じりのツッコミを横目で見たスタッフは、
「…お友達でないのであれば、ここに滞在される理由になりませんよね?」
「…いやまあ、そういう訳でもなくて──」
「──ごめーん、本当に遅くなっちゃった!」
刹那、勢いよく目の前のドアが開いたと思えば、この場に響く声があった。
それは、今までも、そして先ほどまで。俺たちが聞いていた優しい声で。
だけど、浮かべたやや焦り気味な表情がどこか頼りなく感じてしまって。
あの時から変わらない、ボブの内巻きの髪型をしたそいつは、やっぱり俺たちの知る少女──。
──佐伯 茜だった。
彼女の姿を見るや否や、俺と話していたスタッフは帽子を慣れた手つきで取って、
「あ、根坂さん。お疲れ様ですー」
「ああ、お疲れ様です!で、ごめんみんな!ちょっと、インタビューとか色々してたらだいぶ遅れちゃった……」
「…大丈夫よ。ね?ヤマくん」
「おう!ていうか茜はやっぱり変わらないなー」
「そうだね!でも、私には茜ちゃんがちょっとだけ大人っぽくなったように見えるなー」
「…ああえっとすみません」
茜の元気な声に、雫、須山、先輩が笑顔で話すのを横目で見たスタッフは、やや焦った顔で茜と3人の間に割って入った。
「…根坂さんのファンの方でしたでしょうか?ですがすみません、根坂さんはこのままお帰りになるので…」
「…はーっ」
すると、先ほどからのスタッフの態度に何か気に入らないものがあったのか、1人大きく分かりやすくため息をついたやつがいた。
別にこのスタッフの人は悪くないんだけどな…と俺は少し同情を交えつつも、久しぶりにこいつ怒ったなと内心めんどくさく思いながら、
「…あのね、アンタ。さっきの私たちの会話聞いてて分かんなかった?茜と私たちは、しっかりとした知り合いなの!そんなファンなんて薄っぺらいものなんかじゃないに決まってるじゃない。特に私は、この子のあ──」
「──はいストップ!田中くん、僕はこのままこのホールこの人たちと一緒に出るから、後の片付けは君たちスタッフに任せちゃっても大丈夫かな…?」
「…ああはい、それは大丈夫ですが?」
「……もご、ちょ…口を、ど…けなさ…」
「…ありがとう田中くん!頼りにしてるぞ!」
茜はそう言って、田中と呼んだスタッフにウィンクをしてから、俺たち5人を引き連れて、正面出口とは真逆方向にある関係者出口から俺たちを文化ホールから出した。
裏出口から見えた駐車場には、もうほとんど車は停まっていなかった。
文化ホール2階の、外に飛び出た裏通路のようなところで、俺たち6人は小さな円を作る。
全員が、彼女の顔を。
彼女が、全員の顔を。しっかりと見ることが出来るように。
すると元気よく、今まで何度見てきたか分からない笑顔を浮かべた茜は、
「…とりあえず今日は、僕のために来てくれてありがと!みんな!」
「全然!私も、茜ちゃんの公演見れて嬉しかったよ!」
「俺もー。なんか高校時代の友人がこんな有名になってるなんて、考えるだけでもすごいよなー」
「ふふん、私なんてその有名な子の姉なんだからね!誇り高いわ!」
「…まあ確かに。普通にそれは羨ましいかもね…」
雫が胸を張りながら言う中、微笑を浮かべて言葉をこぼす椛。
「…んで、佑も。来てくれて嬉しいよ」
「……いいよ、どーせ暇だったし」
「…まーた佐野くんは隙あらばイチャつくー」
「その目やめてください先輩」
先輩にジト目を向けられた俺は、そう冷静にツッコむのだった。
高校2年の始まりの春に、俺はここ長山町に引っ越してきた。その時の隣の家の住人、佐伯茜。
初対面は確か、どうってことない自動販売機だった記憶がある。
最初から色々突っ走ってて、どこか落ち着かない様子もあった茜。
そんな彼女は、俺たちと同じ中浜高校を卒業した後、専門学校に進学。
そして彼女は今。大学在学中なのにも関わらず、若くてすごいという文句がつく人気小説家だ。
朝の情報番組では、ここ最近彼女のニュースをよく見る。内容は、今回公演でも紹介された小説のことについてで、まだこんなに若いのに、と文学界に詳しい人を唸らせていた。
だけど、ただ単に小説がいいからだけではこんなにも有名にはならないはず。
ではなぜこんなにも彼女は有名なのか。理由を挙げるなら、それは間違いなく。
「…私思ったんだけどさ」
すると、ジト目を向けていた先輩がふと茜の方に向き直って、
「…どうしたんだ?あおちゃん」
「…茜ちゃんの小説はもちろん有名で人気なんだろうけど…。きっと、有名で人気な理由って茜ちゃんが可愛すぎるってのもあると思うんだよね」
「…えぇっ!?ちょっと久しぶりに喋るからって変ないじりしないでくれるかーあおちゃん!」
「…と言ってますが、佐野くん。そこら辺はどうお考えで?」
「先輩に激しく同意」
「…ちょ、佑までっ」
そう。理由は、あまりにも可愛すぎる容姿と見た目。
ニュースを見ていると、どうやら彼女はファンクラブができるほどだそうで、記事にも『可愛すぎる新人小説家』などと紹介されているものがあった。
高校生の時から変わらない、髪型。
高校生の時から変化のあった、雰囲気や顔つき。
今の彼女は、雫ほど落ち着いてはないけど。だけど、しっかりと大人の女性としての魅力を感じられる。
茜は分かりやすく頬を染めて、
「…も、もういいじゃん。僕が可愛いとかそうじゃないかとかいう話はっ!」
「……あはは。じゃあさ茜、私あなたに聞きたいことがあるんだけど」
茜から見てちょうど真正面の位置に座る椛は、人差し指をピンと立てて彼女に尋ねた。
「…うん、どうしたんだ椛」
「公演の時も、さっきスタッフの人に呼ばれてた時も。茜、根坂先生って呼ばれてたけど…。小説の作者名は佐伯茜じゃないんだなって思って。その理由はなんでなんだろうなーってふと私気になったの」
「あーそれは確かに。一瞬だけ、根坂先生って聞いて、誰?って俺なったもん」
すると茜は一つ、小さな微笑を浮かべて、
「…根坂 秋絵っていうのは、今更ながら僕のペンネームなんだけど。実はこれ、考えてくれたの佑なんだよな」
茜はそう言うと俺の方をチラッと見た。
周りの4人は、驚いたような表情を浮かべて、
「…え!?そうだったの、佐野くん」
「…はい、まあ…。流石に本名で出すのはよくないかなって思って、少し考えてみました」
「…でも何でそんな名前にしたんだよ?せっかく名前変えるなら、もっと派手なやつにすればよかったのに」
「……それは──」
「──全く。ヤマくんはやっぱりバカよねぇ」
右隣から声が聞こえたと思えば、そこには須山のことを嘲笑するような表情で見る、雫がいた。
「…姐さんって、そんなに辛辣な人だったっけ」
「…ってごめんごめんごめん!そんなに凹まないで!」
わざとらしく落ち込む須山に、絵に描いたように焦る雫。
ここだけ切り取っても、きっと椛も含めたこの3人は向こうでうまくやってるんだなってふと思って。
「…冗談だよ。ってか、そう言うってことは姐さんは佐野が茜のペンネームをあの名前にした理由が分かるってことか?」
「ふふん、その通りよ!私分かっちゃいました!」
すると雫は俺の目をじっと見据えて、
「…根坂 秋絵って、佐伯 茜って名前を並び替えた名前でしょ?」
「…ねさかあきえ、さえきあかね…。うわ、本当だ!雫ちゃんすごい!」
「へへん、どんなもんよあおちゃん!」
「…これは素直にすごいって言うしかないぜ…姐さん」
目を輝かせて拍手する須山と先輩。だけど、左隣に座る茜は、2人とは対照的なジト目を雫に向けて、
「…なーにが分かっちゃいましただよ。事前にそのこと知ってたくせにさ」
「「前言撤回」」
「…ちょっと茜、何で余計なこと言うのよ!」
「……そうやって変に意地張るところも、やっぱりお姉ちゃんは変わらないよなー」
表情を変えずにそう言う茜に、俺は思わず微笑をこぼしてしまうのだった。
最初茜にペンネームを相談された時、俺も須山のようにインパクトのある名前にしようかと考えていた。だけど、この作品は茜が高校生の時から手がけていた作品で、それを側から見ていた俺はどうしても茜が作ったものとしての根拠のようなものが欲しかった。
だから俺は、本名をそのまま並び替えたものを茜のペンネームにした。茜に決まったペンネームを言うと、彼女はすごいと純粋な笑顔で感心してくれ、この名前にしてよかったと瞬間的にホッとしたのを覚えている。
「…意地張りって、それを言うなら茜も──」
茜の言葉に過剰に反応した雫は、眉を立てて彼女に意を申し立てるように言葉をこぼしていく。
まるで、俺の人生の転機だったと言っても過言ではない、高校時代の時のように。
そして、あの高校で過ごした2年間を思い出させるかのように。
俺たちは、各々の出来事を話していく。
先輩、須山、椛。そして、茜と雫。
俺たちは久しぶりに6人で揃ったはずなのに、話題に上がるのは、高校時代の話が多かった。
きっと、今それぞれが進んだ道も、楽しいのは間違いない。
だけど、それ以上に。
それよりも、高校で過ごした日々の方が。あまりにも充実してて、記憶に残るものだったから。
ふと、高校時代にそよいだ風と同じ匂いがした。
楽しかった。その日々を、懐かしく感じるほど年が経ってしまった。
俺たちはもう、高校を卒業して。
もう…あの頃には戻れなくて。
少しだけ、どこか。寂しい気持ちになるけど。
──だから。
だから、今日。この瞬間だけは。
いくら茜が人気若手小説家だろうが。
いくら先輩の働きっぷりが良かろうが。
俺たちの、今は。高校の時と同じような、空気感で。
みんな同じで、みんなが楽しくて。
そんな時間を過ごそうって、俺は思った。
きっとここにいるみんなも、それを分かってくれてるだろう。
小さな円の中で広がる会話は、まさに高校時代の延長のように感じで。ずっと、これが続けばなと俺は流れる雲を見上げて、ふと思った。
…でもやっぱり、時間というものは無常なもので。
「……あっ」
そんな声を挙げたのは、先輩だった。彼女は、腕をじっと見た後に、
「……ごめん、私そろそろ行かなきゃ。そろそろ時間だ」
「…あー、俺も。今日は外せない予定が……」
「私はまだ時間ちょっとだけあるけど…。でも、早めに行動してた方がいいわよね」
先輩に釣られるように、次々と時間を確認するみんな。
「…本当は、この後みんなでご飯とか行きたかったけど…。しょうがないね…」
残念そうに、先輩はそう言った。
「…そうだな。僕もこの後、事務所戻って色々作業あるし」
「……じゃあ名残惜しいけど。お開きに…しますか」
「…そうだな、佐野」
ゆっくりと俺が立ち上がると、みんなも同じように立ち上がって、各々縮んだ筋肉を伸ばしていた。
今度はいつ、みんなで集まれるのだろう。
1週間後?1ヶ月後?いや、はたまた1年後以上になってしまうかもしれない。
……もしかしたら、それ以上かも…。
「…まあ、きっといつかまた会えるし。そのためにも、今日はサラッと解散しようよ。ねっ?」
軽く俯く俺含むみんなに卓球場で聞いたかのような声を発したのは、星本先輩だった。
瞬間、澱んでいた気持ちは体から抜け落ちた気がした。
やっぱり、先輩の声って人に前を向かせる力があるなって。
「…そうだな、じゃあ俺は椛と車だから。じゃあな!」
「…じゃあね、みんな」
「うん!じゃあな、椛、実くん」
茜が振った手を、優しく振り返した2人は、下に見える駐車場へと階段を降りて行った。
「…じゃ、私も行こうかしらね。茜は今日も、家に戻ってこれないのよね?」
「そうだな。ごめん、お姉ちゃん。また日を見つけて家に戻るよ」
「…なんで謝るのよ。あなたはすごいことを達成して、なおも前に進もうとしてるんだから。私はあなたの顔をたまに見れればそれで十分。だから今日は、もう私は満足してるわよ」
雫は春風に負けない優しい笑顔を浮かべながら、茜に頭を軽く撫でる。
それが伝播したのか茜の表情も、申し訳なさそうな顔から一変、にぱっと笑顔になる。
──佑に、その可能性があるってことに。
いつだったか。ふと、茜のそんな言葉が脳裏に浮かぶ。
きっとこれは俺がまだ高2の頃。雨が降った日に、茜たちと先輩の過去を全て話してもらった時。彼女が俺に雫を戻す、期待をしてくれていると言ってくれた時だったか。
なあ茜。俺は、お前が望んでいる、昔の雫に。
お前が会いたいと思っていたお姉ちゃんに。
──戻すことが、できたのかな。
だったらいいな。と俺が心中考えていると。
「…じゃあ、私。行くわね」
「うん!また料理食べさせてあげるから、待っててなー!お姉ちゃん」
「その言い方やめなさいよ!じゃあまたね、あおちゃんも!」
「うん、また遊びいこーね!」
出会った時の俺に現状を言えば、100%信じてもらえないであろう、顔いっぱいの笑顔を雫は浮かべて、須山たちが降りていった階段とは真逆方向に足を進めていった。
「…雫ちゃんはほんと。変わったよねぇ」
「そうだな、あおちゃん。僕も感慨深いよ」
「…ね。さてと、じゃあ私も帰るとしましょうかねー」
チラッとスマホの画面を見た先輩は、茜の方を見て、
「…じゃあ、忙しくない時ができたら、また遊びに行こうね!約束だよ?」
「うん!約束だ!」
「佐野くんも、茜ちゃんを泣かせたら私、許さないからね??」
「…分かってますよ。これからも大切にしていきます」
「相変わらず、ラブ茜ちゃんだねー。あはは」
高校時代、何人の男子を落としてきたか。純粋無垢な笑顔を先輩は浮かべた。そんな言葉に、茜は少し恥ずかしそうな顔をしていたが、嬉しそうな表情だったので、俺も内心心が温かくなった方に感じた。
「…またね!2人とも!」
肩にトートバッグを下げた先輩は、須山たちが降りた階段の方へと歩いていった。先輩も言ってはなかったけど、きっと車を持っているんだろうな。
「…そういえば佑は何か用事はないのか?」
先輩が完全に見えなくなった時、茜は俺に不思議そうな顔で尋ねてきた。
俺は思わず頭を軽くかきながら、
「それが、ないんだよな。今日は本当に何もなくて。単純に、茜の公演を見にきただけというか」
「…そうかー。あ、じゃあさ」
すると、茜は突然何かを思い出したかのような反応をして、
手を後ろに組んで、上目遣いで俺のことを見ながら。
「…事務所に戻る前に、僕寄りたいところあるんだけど…。一緒に来てくれないか?」
茜からのそんな誘いに、もちろん俺は断れるはずもなく。
そもそも、断るつもりも。理由も。何もなくて。
「いいよ。どこに行くんだよ」
「…おーやったあ!それはなー」
茜は、人差し指を唇の前に持ってきて白い歯を見せて。
「内緒っ!」
俺は思わずそっぽを向いてしまいながら、
「…お前なぁ。いちいちそんなことするなよ」
「…なんで?」
「いや…なんかその。全部可愛く見えてきちゃうからよ」
「……あのさあ。唐突にそういうこと言うのやめてくれるか?心臓に悪いんだけど」
「じゃあやるなよ…」
この言葉の掛け合いも、やっぱりどこかバカらしいけど、楽しいものだなと。
俺の言葉に、茜はもういいじゃん!と謎に怒り気味にそう言うと、俺の手を引き始める。
「ほら、行くよ!ここから目と鼻の距離にあるから。早く!」
「…ちょっと待ってくれ。手を繋ぐって聞いてないんだが」
「いいじゃん、僕が繋ぎたくなったの」
「…でもお前、今有名人じゃん。こんなとこ誰かに見られたり撮られたりしたら、一瞬でスクープとかなるぞ?」
俺がそう言うと、茜はニヤリとして、
「…ふふん、僕を甘く見てもらっちゃあ困るな。佑」
「…それは?」
ポケットをまさぐってたと思えば、何かを取り出した茜。
「…マスクと、帽子!これしてりゃ、大抵バレないんだ!だからほら、佑。行くぞー!」
「ちょおい待てって、引っ張るなよー!」
茜は俺の手を引いて、雫が降りていった階段の方へと走り出した。
刹那、目の前の少女の後ろ姿が、一瞬過去に戻る。
制服を着て、スカートを靡かせて。こちらを振り向けば、屈託の可愛らしい笑顔を見ることができて。
あの時から、時間は経ったけど。茜に対する気持ちは全く衰えなくて。
人気小説家になった今でも、しっかりと初心を忘れない彼女の行動に、俺は思わず微笑をこぼす。
絡めた手のまま引っ張る茜は、この瞬間だけ。公演時の凛とした彼女ではなく、高校時代の無邪気で愛くるしい茜だった。
やがて、彼女のいう通り本当に目と鼻の先にあったある場所に俺たちは辿り着く。
「……ここは、本屋?」
久しぶりに体を動かしたからか、息が少しだけ上がってしまいながら、俺は目の前の建物を見上げる。
「そう、本屋さんだぞ!ってなわけで入ってこー」
茜はそう言うと、相変わらず握った手を離さずに本屋の自動ドアを通る。
店内は、落ち着いた雰囲気で。俺はそういう類に詳しくないが、何かしらのクラシック音楽が流れていた。
茜は、首を小さく動かしながら、足を進めていく。
何か探しているのだろうか、と一瞬思ったが。
思えば、茜がここに行きたいと言ったのは、今の彼女の職業から簡単に推測することができた。
まあ、確かに自分の地元で…確認したいよな。
やがて、本屋に入って少し進んだところで、茜は足を止めた。
「…あった」
「そうだな、しかも。こんな目立つ形で」
俺たちが足を止めたのは、ある本が目立つ形で展示されてる場所で。
表紙が見やすいように、わざわざ少し角度がつけられていて。
茜の。いや、根坂先生の作品はここに置かれていた。
「…なんかこうやって置いてくれてると。嬉しく感じるな、僕」
口角を少しだけ上げて、本当に嬉しそうに笑う茜。
俺は、彼女の顔を軽く覗き込んで、
「嬉しいってことは、それだけこれ作るのもしんどかったんだろ?」
「…まあな。最初出版社に出した時は、笑われたよ」
その話は、俺は痛いほど知っている。
大学生になった直後に、茜は高校生から手がけていた作品を初めてある出版社に持っていったんだ。
そして、帰ってきた茜から電話があって。
いつもの喜んだ声が聞けるかと期待した俺は、スマホから漏れてくる泣き声に心臓がきゅっと締め付けられて。
「…でも、そこからよく今まで持ってきたよな」
「まあ…僕の夢だったからな、これは。それに──」
すると茜は俺と絡んだ手を今一度強く握りしめて、
「──何よりも、応援してくれる存在がいたからさ。駆け出しの僕を、まるで自分のことかのように。特に、君とかな!」
「…俺は、読んだだけだよ」
彼女の笑顔に、俺は思わず横を向いて、
「……たとえそれだけだったとしても。僕にとってはとても嬉しかったぞ!本当に、君が僕の彼氏でよかった、佑!」
「きゅ、急にどうしたんだよ茜」
「何がー?僕は感謝を伝えたくてー、にひひっ!」
見えるのは目だけだったけど。相変わらず、こいつの笑顔は眩しいなと。
そして、やっぱり茜には敵わないなと。
出版社に笑われた彼女が、こうして人気小説家まで上り詰めた、努力を俺は知ってるから。
今、こうして彼女の笑顔を見ることができると考えると、魅力が多すぎる女性だなと思って。
「…そうかよ」
もう一度、彼女の顔を覗き込む。
根坂先生が書いた作品を、懐かしむ感覚で眺める茜の姿が目に入る。
こうして売れるまで、辛いことがあったのだろう。
誰にも頼れずに、孤独に作品を作った日もあっただろう。
電話の話だって、本当に。悔しいって気持ちが痛いほど伝わってきたから。
──だから彼女は、人一倍頑張って。
この幸せを、自力で掴み取って。
そして、隣にいる俺も笑顔にして。
「…今まで、よく頑張ったな。茜」
「うんっ!僕、頑張ったぞ!」
両手で持った本を、上に掲げながら。可愛らしく喜ぶ茜を、俺は優しく見ていた。
茜は、俺に幸せを与えてくれた。
彼女の努力で、俺は幸せな日々を送ることができた。
じゃあ、今度は。俺が、彼女を。
茜の笑顔を絶やさないように、努力をする番だ。
茜が、俺にもっと魅力を感じてくれるように。
茜を、今以上に愛せるように。
これからも、俺は。頑張っていこうと思う。
すると、そう決意した俺の目に、あるものが映った。
「…今更なんだけどさ」
「うん?どうしたんだ佑」
「……この、タイトルの意味って。なんかあるのか?」
思えば、先ほどの公演でも。不思議と尋ねられていなかったなと。
そんな質問に茜は、手に取った小説の題名を眺めながら、
「…これ、公演でも言ったけど。ノンフィクションの話でさ。内容は…"僕"が経験した、青春の話って感じで」
「…茜の、実体験の内容なのか」
「…そう。というか、佑はまだ読んでくれてないのかよ!」
「…いやほんとごめん。そろそろ就活始めようと思ってたら時間なくて」
「じゃあ僕がこれ買ってあげるから。よかったら事務所寄って読んでいってよ」
「…本当か?でも、わざわざ買ってもらわなくても」
「いいんだよ。そこは僕のこだわりってことで!ってなわけで、行こっか!」
そう言うと茜は、いつの間にか離れた手を、握り直して、本屋を後にしようとする。
「…茜」
彼女が踵を返した直後、俺は茜の名を呼ぶ。
「…どうしたんだ?」
不思議そうな瞳で、彼女は俺のことを見る。
俺は、彼女のそんな瞳を。じっと見つめて。
今までの、これからの。想いを乗せて。
「──ありがとう」
と、言葉を紡いだ。
単純に、事務所に寄る話だけではない。本当に、今の現実や、創ってきた過去を振り返ると。彼女と出会って、付き合えたのは俺にとってかなり幸運だったんだなと。刹那的に悟った。
茜は、俺が見つめた瞳を見つめ返すかのように、目を細めて、マスクを少し顎にずらして。
「…こちらこそ。僕も、ありがとう!」
と、幸せそうな笑顔でそう言ってくれるのだった。
歩んでいこう、どこまでも。
きっと俺と茜なら。大丈夫。
お互いが、お互いを支え合って、これからも。感謝を伝え合える存在に。
そして、この小説の続きが書けるような、未来に。
俺は、茜と駆け出していきたい。
「…ではこちら、750円になりますー」
レジに本を持っていくと、定員の人からそう言われた。
茜は流れるような動作で、カードを取り出し、光っている場所にタッチした。
「…はい、ありがとうございます。えーではこちら──」
そして、定員さんは。根坂先生の書いた、作品を。
思い出や、記憶、青春の話が詰まった本を、俺の前に出す。
これは、"茜"の物語。彼女の、心境や想いが込められた小説だ。
だからこそ、この小説のタイトルも。彼女の気持ちが入った、そんなタイトルにしたんだろうな。
定員さんは、綺麗に包装された小説を手に取り俺に渡しながら、この本のタイトルを告げるのだった。
「──これからの僕の非日常な生活、です」
…と。
─── Fin ───
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