【ショートショート】いのちの選択

坂神美桜

文字の大きさ
1 / 1

いのちの選択

しおりを挟む
ぼくは高校受験が終わってすぐに入院した。
結構重い病気らしい。治療は時間がかかるって言われたけど、卒業式や入学式には出席できるのかな…
薬の影響でうとうとしていたら、ベッドの横に30歳くらいのカッコイイお兄さんが立っているのに気付いた。
「お兄さん、だれ?」
「わたしは死神。きみはもうすぐこの世から旅立つ。その前にわたしと少し出かけないか」
「出かけるって?」
「きみが行きたいところへ連れて行く。ただし、体はここで眠ったままだ。魂だけ別人の姿の器に入ってもらう。さあ、どうする」
魂だけ?この人、死神って言ったよね。死神って黒いマントとか大きな鎌とか、もっと怖いイメージだったけど、いったい何者なんだろう…あやしいけど、でも…
「それなら水木しげるロードに行ってみたい。妖怪神社にもお参りしたいな」
「わかった。それでは」
一瞬体が浮いた感じがしたと思ったら、ぼくは死神さんの隣に立っていた。そしてベッドの上にはぼくの体が横たわっている。
「これで自由に動ける。時間がないから目的地までは瞬間移動する。わたしにしっかりと掴まっているように」
ぼくは言われるまま死神さんの腕をギュッと掴んだ。するとまばたきをした瞬間に妖怪神社の鳥居の前まで移動していた。
「うわぁ。鳥居が一反木綿だ!」
「今日1日、どこへ行き何をするかはきみに選択権がある」
そう言われてぼくはまずお参りをし、それから水木しげるロードを見て歩くことにした。
「そろそろお腹すいたな」
「どこで何を食べるかもきみが決めるんだ。でも別人の姿だから母親や家族の手料理というのは難しい」
「うん、わかってる。京都に戻って地元の蒸し寿司が食べたい」
「よし、では掴まって」
やっぱり今回も一瞬で新京極通に移動してきた。
早速お寿司屋さんに入り蒸し寿司を食べる。小さい頃からよく食べていたホッとする味だ。
それから伏見稲荷へ移動し、お守りを買って絵馬を書いた。
『元気になりたい!』

「さて、もうあまり時間はないがほかに希望はないか」
「もう大丈夫。病院に戻るよ」
「では掴まって」
次の瞬間、ぼくはベッドの横に立っていた。
死神さんはベッドの上のぼくの体を見つめながら
「これが最後の選択だ。このまま旅立つか、それとも一命を取り留めもうしばらく続く辛い治療を乗り越えるか」
「え、まだ生きていられるの?」
「生きることを選び必死に頑張って長生きをする者もいるし、もう辛いのは御免だと言って旅立ちを選択する者もいる。どちらにするかはきみ次第だ」
まだ生きていてもいいのか。受験だって頑張ったし、まだまだやりたいことは山ほどある。さっき絵馬にも書いてきたんだから神様を信じて
「もっと生きたい。元気になりたい!」
また体が浮いた感じがした次の瞬間、ぼくはベッドの上で目が覚めた。
死神さんはもういなかった。最後にちょっと微笑んでるように見えた。
「夢、見てたのかな…」
でもぼくは右手に伏見稲荷のお守りを握りしめていた。
『死神さんありがとう。ぼく、頑張るよ』
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

はぁ……潔く……散るか……

#Daki-Makura
ファンタジー
バカ息子(王太子)がやりおった…… もうじき友がやってくる…… はぁ……潔く……散るか……

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

大好きなおねえさまが死んだ

Ruhuna
ファンタジー
大好きなエステルおねえさまが死んでしまった まだ18歳という若さで

予言姫は最後に微笑む

あんど もあ
ファンタジー
ラズロ伯爵家の娘リリアは、幼い頃に伯爵家の危機を次々と予言し『ラズロの予言姫』と呼ばれているが、実は一度殺されて死に戻りをしていた。 二度目の人生では無事に家の危機を避けて、リリアも16歳。今宵はデビュタントなのだが、そこには……。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

今更……助けてくれと……言われても……

#Daki-Makura
ファンタジー
出奔した息子から手紙が届いた…… 今更……助けてくれと……言われても……

処理中です...