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14 夏祭り、キラキラ
八月のお盆過ぎ。午後の空は、雲一つなく晴れ渡っていた。残暑、と言うにはまだ暑すぎる中、近づいてくる夏の終わりを告げるようにツクツクボウシが鳴いている。
「うー……ん」
花火大会の会場。さんふるうつから車で十五分ほどの海岸で空を見上げた灯真は、大きく伸びをした。日本海側の海はあまり潮の香りがしない。目の前に海があるのに夏山の匂いがするというのは不思議なものだ。
「いい天気だな。良く売れそうだ」
運転席から降りてきた唯人が紺地に白い縦縞の浴衣姿なのを見て、灯真は自分の裾を見下ろした。同じ縦縞模様だが、こちらは白地に紺色だ。
色違い。特に意味はないのかもしれないけれど、お揃いみたいで嬉しい。
この日のために唯人が用意してくれていた浴衣は、真新しい布地が肌にこそばゆかった。だが、灯真の全身が落ち着かないのはそのせいだけではない。帯結びに手間取る灯真を見かねてか、唯人が着付けをしてくれたからだ。
襟元を引っ張られる感覚、帯が巻かれるときに近づいた頭。先ほどの映像が、触れられた指先が、勝手に灯真の中でリピートされてしまう。
「……灯真、熱中症か?」
「ふへっ」
ぼうっとしていたところを唯人に覗き込まれ、灯真は小さく飛び上がった。気温以上に熱を持ってしまっていた頬を押さえ、左右に首を振る。
「や、あ……だい、いや、何でもないです!」
「……そうか? ならいいけど……頭痛くなったりしたらすぐ言えよ」
「ふ、え、はい!」
今度は首を縦に振る。ふ、と鼻で笑った唯人と台車にクーラーボックスを載せ、割り当てられたテントへと向かう。
キッチンカーに焼き鳥、カレー……既にほかの屋台も設営に入っているが、地元のお店がほとんどのようだ。時折挟まる綿飴やヨーヨー掬いも、なんとなく素人っぽさが抜けていないが、そこに謎の安心感がある。
「あ、来たな。今日はよろしく!」
着いた場所では、既にテントを張り終えた五十嵐が机を立てている所だった。灯真を見て一瞬だけ微妙そうな表情をするものの、すぐににやりと笑って唯人の肩を叩く。
「なんだ唯人、その浴衣!『出店とかダルい』とか言ってたくせにやる気満々だな!」
「い、いいだろ別に……ほら、まだ準備これからなんだからさっさとしろよ」
台車を抱えた唯人が、逃げるようにまた車に戻っていってしまう。取り残されてしまった灯真は、何をすべきかわからず左右を見回した。
五十嵐に尋ねればいいという理屈はわかる……のだけど。
ちらりと見た五十嵐は灯真のことなど見なかったかのように準備に戻っていた。
五十嵐とはドリンクの打ち合わせで何度か顔を合わせてはいるものの、あれから最低限しか話していない。
正直、気まずいのだ。
今だって、灯真から話しかけないといけないのは分かっている。だが、そのきっかけが掴めない。
さまよわせた視線の先、机の後ろにいた五十嵐の娘——ひなちゃんに灯真は小さく手を振った。夏祭りに合わせたのか、今日はピンク色の浴衣姿だ。得意げな顔をした少女がくるりと回ると、フリルのついた裾と、兵児帯の先がひらめく。
かわいいね、と頷き、夏子もここに来れたらよかったな、と思う。本人曰く地縛霊である夏子は、崖から遠く離れられないらしい。
「なあ」
「ふぁい!」
びくついて目線をずらすと、五十嵐に睨みつけられていた。全身が硬直する。
「す、わ、あっ、すいませ、僕あの、何を」
「いるのか?」
「えあ」
主語がなくても、誰のことを指しているのかは分かった。ひなちゃんに目を向け、それから自分の足元に視線を落とした灯真は、かすかに頭を上下に動かした。
おかしな奴、と思われたくはない。だが、そこにいる彼女を前にして「いない」と言うことも、灯真にはできない。
他の人には見えないからこそ、灯真くらいはその存在を肯定しなければいけない、と思ってしまう。
否定される辛さだけは、知っているから。
「ふうん」
硬質な五十嵐の声が降ってくる。下を向いているせいで表情が分からないが、確かめてみる勇気もない。
灯真のいるブースの中だけ、しん、と気温が数度下がった気がした。テント裏の発電機の音が急に響き始めるが、それより灯真自身の心臓の方がうるさい気もする。
「……どんな見た目してる?」
「え、う……あ、ひなちゃん、のことですよね? その、幼稚園? くらいで、えっと、髪の毛は、二つで、こう……結んでて」
ツインテール、という言葉が思い浮かばず、灯真は握りこぶしを二つ頭に当てた。
「ピンクの桜の、えと、今日は、浴衣の、ドレス……みたいな、ひらひらしてるやつで、帯は黄色で」
横目で見ると、少女は不安げな顔になっていた。途端に後ろめたさで言葉が詰まる。五十嵐の顔すら見られない中途半端な自分が恥ずかしいのに、これ以上幽霊の存在を強弁するのも怖い。
コンテナのようなポータブル冷凍庫の中から、どん、と何かが暴れるような音がした。浴衣の袂を握りしめる。
落ち着け。大きく息を吸った灯真は、そろそろと五十嵐を見上げた。
「あー……浴衣かぁ……」
ありえないところから出てきた家の鍵でも見るような、信じがたいという表情が灯真を見下ろしていた。その目が閉じられ、ため息が聞こえ――
「確かに買ったわ……」
再び灯真を見た瞳には、昔を懐かしむような柔らかな光があった。灯真が見ていた方向にに目を向け、何かを見通そうとするように目を眇める。
「……なんか、言ってたりするの?」
「あー、え……?」
灯真が少女にまた目をやる。浴衣から伸びた人差し指が、屋台の一つを指さしていた。
「きらきらほしい! おほしさまの!」
「……えっと、宝石すくいのキラキラの、星型のやつが欲しいそうです……」
ぽそぽそと灯真が通訳すると、「ふは」と五十嵐は泣き笑いの表情で顔をくしゃくしゃにした。
「おい何サボってんだよ、さっきっからなんも進んでねえじゃんか」
呆れた声に振り向くと、台車と共に戻ってきた唯人がテント横に立っている。
「す、すい……」
「サボってねえよ、大事な話してたんだよ」
手首で目尻を拭った五十嵐が、不貞腐れた高校生のように言い返す。「はあ?」と唯人は大仰に目を丸くした。
「圭の『大事な話』が本当に大事だったことなんて一回もねえだろ」
「はー? そんなことないよな、灯真」
「え」
突然会話のボールを押し付けないでくれ。灯真が目を白黒させていると、灯真と五十嵐を見比べた唯人が少し口角を上げた気がした。
「ほら、いいからさっさと動け」
「は、はい!」
「へーい」
「うー……ん」
花火大会の会場。さんふるうつから車で十五分ほどの海岸で空を見上げた灯真は、大きく伸びをした。日本海側の海はあまり潮の香りがしない。目の前に海があるのに夏山の匂いがするというのは不思議なものだ。
「いい天気だな。良く売れそうだ」
運転席から降りてきた唯人が紺地に白い縦縞の浴衣姿なのを見て、灯真は自分の裾を見下ろした。同じ縦縞模様だが、こちらは白地に紺色だ。
色違い。特に意味はないのかもしれないけれど、お揃いみたいで嬉しい。
この日のために唯人が用意してくれていた浴衣は、真新しい布地が肌にこそばゆかった。だが、灯真の全身が落ち着かないのはそのせいだけではない。帯結びに手間取る灯真を見かねてか、唯人が着付けをしてくれたからだ。
襟元を引っ張られる感覚、帯が巻かれるときに近づいた頭。先ほどの映像が、触れられた指先が、勝手に灯真の中でリピートされてしまう。
「……灯真、熱中症か?」
「ふへっ」
ぼうっとしていたところを唯人に覗き込まれ、灯真は小さく飛び上がった。気温以上に熱を持ってしまっていた頬を押さえ、左右に首を振る。
「や、あ……だい、いや、何でもないです!」
「……そうか? ならいいけど……頭痛くなったりしたらすぐ言えよ」
「ふ、え、はい!」
今度は首を縦に振る。ふ、と鼻で笑った唯人と台車にクーラーボックスを載せ、割り当てられたテントへと向かう。
キッチンカーに焼き鳥、カレー……既にほかの屋台も設営に入っているが、地元のお店がほとんどのようだ。時折挟まる綿飴やヨーヨー掬いも、なんとなく素人っぽさが抜けていないが、そこに謎の安心感がある。
「あ、来たな。今日はよろしく!」
着いた場所では、既にテントを張り終えた五十嵐が机を立てている所だった。灯真を見て一瞬だけ微妙そうな表情をするものの、すぐににやりと笑って唯人の肩を叩く。
「なんだ唯人、その浴衣!『出店とかダルい』とか言ってたくせにやる気満々だな!」
「い、いいだろ別に……ほら、まだ準備これからなんだからさっさとしろよ」
台車を抱えた唯人が、逃げるようにまた車に戻っていってしまう。取り残されてしまった灯真は、何をすべきかわからず左右を見回した。
五十嵐に尋ねればいいという理屈はわかる……のだけど。
ちらりと見た五十嵐は灯真のことなど見なかったかのように準備に戻っていた。
五十嵐とはドリンクの打ち合わせで何度か顔を合わせてはいるものの、あれから最低限しか話していない。
正直、気まずいのだ。
今だって、灯真から話しかけないといけないのは分かっている。だが、そのきっかけが掴めない。
さまよわせた視線の先、机の後ろにいた五十嵐の娘——ひなちゃんに灯真は小さく手を振った。夏祭りに合わせたのか、今日はピンク色の浴衣姿だ。得意げな顔をした少女がくるりと回ると、フリルのついた裾と、兵児帯の先がひらめく。
かわいいね、と頷き、夏子もここに来れたらよかったな、と思う。本人曰く地縛霊である夏子は、崖から遠く離れられないらしい。
「なあ」
「ふぁい!」
びくついて目線をずらすと、五十嵐に睨みつけられていた。全身が硬直する。
「す、わ、あっ、すいませ、僕あの、何を」
「いるのか?」
「えあ」
主語がなくても、誰のことを指しているのかは分かった。ひなちゃんに目を向け、それから自分の足元に視線を落とした灯真は、かすかに頭を上下に動かした。
おかしな奴、と思われたくはない。だが、そこにいる彼女を前にして「いない」と言うことも、灯真にはできない。
他の人には見えないからこそ、灯真くらいはその存在を肯定しなければいけない、と思ってしまう。
否定される辛さだけは、知っているから。
「ふうん」
硬質な五十嵐の声が降ってくる。下を向いているせいで表情が分からないが、確かめてみる勇気もない。
灯真のいるブースの中だけ、しん、と気温が数度下がった気がした。テント裏の発電機の音が急に響き始めるが、それより灯真自身の心臓の方がうるさい気もする。
「……どんな見た目してる?」
「え、う……あ、ひなちゃん、のことですよね? その、幼稚園? くらいで、えっと、髪の毛は、二つで、こう……結んでて」
ツインテール、という言葉が思い浮かばず、灯真は握りこぶしを二つ頭に当てた。
「ピンクの桜の、えと、今日は、浴衣の、ドレス……みたいな、ひらひらしてるやつで、帯は黄色で」
横目で見ると、少女は不安げな顔になっていた。途端に後ろめたさで言葉が詰まる。五十嵐の顔すら見られない中途半端な自分が恥ずかしいのに、これ以上幽霊の存在を強弁するのも怖い。
コンテナのようなポータブル冷凍庫の中から、どん、と何かが暴れるような音がした。浴衣の袂を握りしめる。
落ち着け。大きく息を吸った灯真は、そろそろと五十嵐を見上げた。
「あー……浴衣かぁ……」
ありえないところから出てきた家の鍵でも見るような、信じがたいという表情が灯真を見下ろしていた。その目が閉じられ、ため息が聞こえ――
「確かに買ったわ……」
再び灯真を見た瞳には、昔を懐かしむような柔らかな光があった。灯真が見ていた方向にに目を向け、何かを見通そうとするように目を眇める。
「……なんか、言ってたりするの?」
「あー、え……?」
灯真が少女にまた目をやる。浴衣から伸びた人差し指が、屋台の一つを指さしていた。
「きらきらほしい! おほしさまの!」
「……えっと、宝石すくいのキラキラの、星型のやつが欲しいそうです……」
ぽそぽそと灯真が通訳すると、「ふは」と五十嵐は泣き笑いの表情で顔をくしゃくしゃにした。
「おい何サボってんだよ、さっきっからなんも進んでねえじゃんか」
呆れた声に振り向くと、台車と共に戻ってきた唯人がテント横に立っている。
「す、すい……」
「サボってねえよ、大事な話してたんだよ」
手首で目尻を拭った五十嵐が、不貞腐れた高校生のように言い返す。「はあ?」と唯人は大仰に目を丸くした。
「圭の『大事な話』が本当に大事だったことなんて一回もねえだろ」
「はー? そんなことないよな、灯真」
「え」
突然会話のボールを押し付けないでくれ。灯真が目を白黒させていると、灯真と五十嵐を見比べた唯人が少し口角を上げた気がした。
「ほら、いいからさっさと動け」
「は、はい!」
「へーい」
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