お願い先輩、死なないで ‐こじらせリーマン、転生したらアルファになった後輩に愛される‐

二ッ木ヨウカ

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これってもしかして先輩の射精管理は僕次第ってことになりますかなりますよねそうですよねなんで右腕ないんだとか思ってましたけどそれはそれでいいか

 長いまつ毛、形のいい鼻、少しパサついた肌……しばらく佐久間の顔を眺めた岸尾は、段々激しさを増してくる鼓動に耐えかね、佐久間の向こう側にある窓に顔を向けた。まだ午後早い青空とそこに浮かぶ雲を眺めていると「あの」と目を閉じたまま佐久間が口を開いた。

「先輩、僕ですよ、半年ぶりにやっと安眠できるところなんですよ」
「う、うん」
「非常に申し訳ないんですけど、ちょっと、その、フェロモンしまっていただくわけにはいかないでしょうかね」
「うう……」

 やっぱりバレていたか。先ほどから収まりの悪くなっていたものを隠すように、岸尾は足をもじもじとさせた。好き、と言われてからどうにも存在を主張してきて仕方ないのである。

「ごめん、左手だとどうしても……その、うまくできなくて、ちょっと溜まっちゃってて……だから、気にしないでほしい……」
「そう言われても、こんなに煽られたら無理ですって」
「それは……ごめん。ちょっと家出てるから」

 オメガの発情はアルファに伝染する。離れればいいだろう、と岸尾はベッドから出ようとしたが、組んだままの左手を佐久間は放してくれない。

「先輩がいなくなったら意味ないでしょうが。っていうか今外出たら危ないですよ」
「でも、君とこうしてる限り無理だし」
「えっ、何ですって」

 どうしろってんだ。岸尾が若干棘のある声で言うと、ぱちりと佐久間が目を開けた。答えないまま岸尾は佐久間の手を振り払い、背中を向けて丸まった。頭の中にある「萎えそうな何か」を探すが、こういう時に限って目ぼしいものが出てこない。

「……あの、先輩、もしかして、なんですけど……男でも……いけたり、します?」
「知らないよっ」

 邪魔しないでくれ、と岸尾はさらに丸くなった。好きになる時に相手の性別など気にしたこともないが、それ以上のことは経験がない。男でイけるかどうかなんて知るわけがないだろう。舐めてんのか。

「じゃあ……えっと、大丈夫そうかキスしてみる、っていうのは……」
「嫌だ」

 ぎゅっと目を瞑り、背中越しに答える。

「佐久間くん、か、彼氏いるだろ」
「は? いるわけないでしょう」
「嘘つけ。じゃあ俺が見せつけられたのは何だったんだよ」

 しばらく思案するような沈黙ののち、「あー」と佐久間は納得したような声をあげた。

「先輩に見られた時か。あれは、なんていうか、そういうんじゃないです」
「じゃあ何だよ」

 また黙り込む佐久間。ほら見ろ、答えられないんじゃないか、と岸尾が追い打ちをかけようとすると「セフレっていうか……体だけの相手ですよ」と不貞腐れたような声がした。

「先輩、恋愛関係の話題露骨に嫌がってたじゃないですか。そういうの興味ないんだろうなって思って……似たような見た目の人で、夢くらい見たっていいでしょうが」
「……あ、あっそ」

 あくまでも基準が自分であるという嬉しさと、でもやっぱりそいつ別人だろ、という恨みのような感情で岸尾の声は揺れた。あの時のお相手の顔はそんなに似ていただろうか。腹が立ちすぎて視界にも入れていなかったので、全く思い出せない。

「じゃあ、なんでこの前は無視したんだよ」
「いや、この前って何の話ですか。大体なんでさっきっから怒ってるんですか」
「うるさいな、この前はこの前だよっ、その……はじめて、こう……なった時……」

 彼氏はいない、そして俺が好きというのなら、なんではじめて発情期が来た時に求愛を受け入れてくれなかったんだ。本心ではそう佐久間をなじってやりたかったが、恥ずかしさとそれでも残っているプライドが邪魔をして回りくどいことしか口にできない。案の定佐久間からも「ええ……?」と困惑した声が返ってくる。

「はじめて……というと、発情期の時のことですか? でも、無視? 僕、そんなことしてないと思うんですけど」
「もういい!」
 岸尾はついに膝を抱え、股間を押さえた。とにかく別のことを考えなくては。
「いや、先輩は良くても僕は良くないっていうか……こんなんじゃ寝られないんですけど、本当に」

 佐久間の手が両肩にかかり、はあ、と熱い息を首筋に吹きかけられる。尻に硬いものが押し付けられた。

「ほら、ちょっとこっち向いてくださいよ」
「……」
「強情ですね」

 佐久間の声が、低く艶のあるものに変わる。仰向けにさせられた、と思うと、唇に柔らかなものが当たった。

「む……」

 まずは触れ合わせるだけ。岸尾が嫌がらないのを確認するように何度か角度を変えて唇を押し付けてきた佐久間は、それから柔らかく岸尾の唇を食んだ。岸尾の頭の中が蕩けてきたところで、その間にぬるりとした舌先が入ってくる。

「ん……ふぁ……」

 口の中を舐められているだけなのに、身体の奥、芯のような部分がぞわぞわとする。全身の力が抜けた頃、佐久間は顔を離した。いつの間にか、その瞳はまた捕食者のような輝きになっていた。う、と一瞬だけ顏をしかめ、それからまた佐久間は笑みを浮かべた。

「そんなにフェロモン出さなくても分かりましたよ、しんどかったんですね。抜いてあげますから」

 岸尾の手と、股間の間に佐久間の大きな手が滑りこんでくる。ここしばらく開放できていなかった苦しさを訴えるそこを、佐久間の手が布越しに愛撫する。

「そんな……う、あ……」

 左手で佐久間のシャツの裾を握り、岸尾は胸元に頭を擦り付けた。頭では秘部を触られていることが恥ずかしくて仕方ないのに、体はもっと、と訴えている。どうしたらいいのか分からず、ただ胸が苦しくなってくる。
 佐久間の手が、するりと服の中へと忍び込んできた。中で膨らんでいた岸尾の昂ぶりを取り出し、その形を確かめるように柔らかく全体を撫でまわしていく。

「あっ……」

 皮を剥いた中から出てくる、敏感な先端に佐久間の指先が触れた。岸尾が体を震わせると、「かわいい」と佐久間が耳元で囁いた。

「ずっと……先輩のここ、触ってみたかったんです」
「じゃあ……なんで、発情期の時、触ってくれなかったんだよ……」

 繊細な場所なのに、自分で触るよりずっと気持ちいい。佐久間の指先は、はじめて触れるはずなのに、岸尾よりも岸尾の体を知っているようだった。

「もしかして、それで怒ってましたか?」
「うん……」

 ようやく認めると、「そんなことで拗ねてたんですか」と佐久間は指先を動かした。先端から溢れてきた蜜で、段々と動きが滑らかになってくる。

「そ、そんなって……あ、あっ……やん」
「あの時は……傷つけたくなかったんですよ、先輩のこと。完全に理性吹っ飛んでるように見えましたし、ストレートだと思ってたんで。わけわかんない発情期とやらに流されて男と寝たりしたら、後で絶対ショック受けると思ったんです」

 竿全体に先走りを塗り広げた佐久間の手が、岸尾の屹立を握り、しごき始める。ずっと腰のあたりに溜まっていた熱は、いつも以上に限界が近い。

「ん、あ、さく、さくま、あ」

 早く出したい。そんなに早く達してしまうなんて、という思いとは裏腹に、更なる快感を求めて腰が動いてしまう。

「でも、それでこんなにへそ曲げちゃったんですね、かわいい、かわいいですね先輩」
「待って、手、あっ、あ、出ちゃうっ」
「いいですよ、出して」

 や、と小さく首を振って抵抗するものの、甘えて縋りついているようにしかならない。律動する佐久間の手に導かれ、岸尾はすぐに達した。
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