千年生きるオタク悪魔、推し俳優のスマホを拾う。

りゅの

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3話 やっぱり倫理は難しい

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よし!席が1つだけ空いてるぞ!と心の中でガッツポーズをして飛び座ったのは、バイト帰りの通勤ラッシュ真っ最中の電車の席だった。

もちろんお年寄り優先との日本人の暗黙のマナーはよーく存じているが、そこは悪魔である。そんな倫理は持ち合わせてない。

さて、自宅まで少し時間がかかるのですぐさまSNSを開き、通知の確認とDMの返信、それから推し俳優レドの名シーンを切り抜いた動画などの確認を丁寧にしていく。

「この場面はあの映画のやつだな」とか「見たことのないものがあるから、あとで調べておこう」など色々な感情が渦巻く中、ふと肩に重さが増した。

まさかと思い隣を横目で見ると、分厚い眼鏡をかけた、1世代前くらいの奇抜なダサオタクファッションをした細身の男が睡魔に敗北したのか俺の肩に頭を預けている状態だった。

「最悪……。」と呆れてため息をついたのは許してほしい。悪魔は美しいものが好きだ。そりゃセンスや顔だって性格より重視する。

先ほどから首が前と後ろにぐわんぐわん揺れて、お疲れなんだろうなと他人事のように思っていたが、まさかこちらまで巻き添いを喰らうとは考えていなかった。

ちょっと身体をどかしてみてもさらに深くもたれかかってきたので、観念して声をかけることにした。

「あの……起きてください。」
「……ん……?……ってえ!すみません!!」

浅い眠りのおかげか案外すっと起きた彼は分厚い丸眼鏡の反射のおかげで表情はわかりづらかったが、声から驚いているのがよくわかった。

「いえ、起きたならいいんです。」
「……はは、本当にすみません。」

完全に反省モードに入っている彼は苦笑いをしつつ、どこか気まずそうに目を泳がせていたのだが、ふと俺のカバンに目が入ったようで

「…それって、『レド』さんのグッズ…」
「ん?……ああ、はい。」

さっきので会話は終わりだと思っていたのだから、隣から聞こえてきた声に驚いたが、見る限り俺に話しかけたというより、興味はモノの方にあるらしい。

……まさかこのオタク君勝手に名付けたは同担というやつか、それとも知っているからか……まあ見知らずの人に知ってるだけで声をかけるようなことはないと思うので前者だろう。

「レドさん好きなんですか?」
「え?…はは、まあそんなところです。」

とシャイなのか複雑そうな顔をして答えた彼は、よく見ると髪色などがレドの雰囲気と似ておりどこか納得した。……でも寄せるなら服装をどうにかしたらどうなんだろうと頭によぎったのは許してほしい。

トップスター(微私情)なだけあって同性でもこんなに近くにオタクがいるとは流石悪魔をも虜にする最推しである。
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