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アタシは片足を上げ、人差し指を消火器に向けて言った。
「消火器、ヨシ!」
チカ丸もマネる。
「ヨシ!」
「プッ!」かいちょが吹き出した。知ってる人はきっと笑ってくれるだろうけど、かいちょの場合アタシ達が変な格好をしている事に笑ったのだろう。
現○猫を知らなさそうなので、少し見本を見せてあげようじゃないか。続いて、近くにある非常ベルも同じように指さす。
「押してみないと鳴るかどうかわからないけど、押すと怒られるのでこのままでヨシ!」
「ワカラナイけど、ヨシ!」
「プッ‼」
ふーみんが呆れて言う。
「アンタ達、やめなさい。恥ずかしいから。そういうのは部室だけにしなさいよね」
「ふむ。」諭されてしまった。
放課後で校舎には誰もいないから、やったんだけどね。見ているのなんていつものメンバーだけだ。
明日、9月1日は『防災の日』
学校では避難訓練がある。その前準備として今日は生徒会と先生達で避難経路や消火器などの確認にあたっていた。
生徒会メンバーはそれぞれ2人で一組になって分かれている。かいちょとパイセンの組には、まだ正式に生徒会員ではないヒメとチカ丸が同行することになった。1年生の世話役という事だろう。
ゾン研はお休みにした。かいちょがいないと締まらないし、一年ズもいないのでは物足りない。だからアタシも勝手に見回りへ付いてきている。
「ふーみん、わざわざ付き合わなくてもいいんだよ?一人だけ帰ったって」
「べつにいいでしょ!私の勝手じゃない」
「そうだね。いつも部員でもないのに、ゾン研にも顔出してるもんね」
「アンタこそ早く帰ってゲームでもしてれば?」
「アタシはあまり早く帰ると、かーさんがいい顔しないから時間を潰しているのさ」
「私もー」はなっちも頷く。
「お前ら、遊びじゃないんだぞ?」
パイセンが非常ベルの下、消火栓と書かれた鉄製の箱の扉を開けた。中には消火ホースが収まっていた。
「ヨシ、ヨシ、言ってないで、ちゃんとあるかどうか確認しろよ。」
いつも大雑把だから意外だけど、こういう時のパイセンはキッチリしている。やはり生徒会副会長といったところか。
「中はこんな風になっていたんですね」
「見た事ないのか?普通、生徒は開けないからな。使い方も簡単だからついでに覚えとけ。ホースを絡まらない様に全部出して、バルブを緩めれば水が出る。それだけだ。普段使う水まきホースの威力が強いヤツと思えばいい」
手短に説明して扉は閉められた。
「これで海津も、もしもの時は消火を手伝えるな」
「いえ、アタシは一目散に逃げます!」
「フッ、」と笑ってパイセンが歩き出した。
「次はこれだな」
立ち止まったのは、階段横にある鉄の扉。防火戸と呼ばれているものだ。
「誰だよ勝手にポスター張ったヤツ」
その扉には9月の末にある文化祭の告知ポスターが張られていた。演劇部、吹奏楽部、放送部、コーラス部、などなど、それぞれに出し物の案内がされている。
パイセンがそれらのポスターを容赦なく剥がしていく。その下から現れたのは赤い文字の『防火戸』それに『この場所に物を置かない事』と書かれた注意書きだった。
「会長、ポスターを張る場所は決めておかないといけないな」
「そうですね」
「ちょっと持っててくれ」そう言ってポスターの束を渡された。
パイセンが壁に収まっている防火戸を力強く押す。すると鉄の扉がゆっくり開いてきた。そのまま廊下側と階段側の通路を遮断する。
「この扉はセンサーと連動してるから火事の時は自動で開くようになってるんだが、今やったように扉を押し込むと手動で開くこともできる。だから、もたれ掛かるなよ?開くから」
なぜアタシの方を見る。それはヤレというネタ振りですか?やりませんけどね。お笑い芸人じゃないんだから。
「押すなよ、押すなよ、」はなっちが煽ってくる。
「アンタならやりそうよね」みんなこちらを見ていた。
「やらないよ!」
パイセンがハハハッ!と笑いながら手を出してきたのでアタシはポスターを返した。
「おっと、」
受け取り損ねた1枚がヒラリと落ちた。
拾ってくれたヒメが言う。
「何の出し物ですかね?」
それは映像研のポスターのようだ。大きな文字で『どうする?信長。どうなる?映像研』とだけ書かれている。
「たぶんタイトルしか決まってないんだよ、コレ。今頃、必死に何か制作してるんじゃない?」
「映像研は放送部の人達の中から映画製作がしたいと要望を受け作られた部ですよ。ゾン研と同じく同好会扱いですけど」かいちょが付け加えてくれた。
パイセンも続く。
「最近できたんだよ。お前たちがゾン研なんて作るからマネして自分達も作らせてほしいなんて言って、」
「ええ。他にも演劇部の中からダンス同好会も出来てしまいましたし、」
二人の視線が痛い。
「アタシのせい?いやいや、生徒会が認めたんだから生徒会の責任ですよ?」
「なら、今度の文化祭で実績を残せなかったら全部廃部だぞ。いいよな?会長。生徒会が責任取らないとな」
「え?ええ・・・・・・月光さん、頼みますね」
会長という立場上、ゾン研だけえこひいきする訳にはいかなかったんだろう、かいちょは。
(どうするッ⁉ゾン研‼我がサンクチュアリが!)
アタシの同人誌だけで大丈夫だろうか?少し不安になってきた。
アタシは片足を上げ、人差し指を消火器に向けて言った。
「消火器、ヨシ!」
チカ丸もマネる。
「ヨシ!」
「プッ!」かいちょが吹き出した。知ってる人はきっと笑ってくれるだろうけど、かいちょの場合アタシ達が変な格好をしている事に笑ったのだろう。
現○猫を知らなさそうなので、少し見本を見せてあげようじゃないか。続いて、近くにある非常ベルも同じように指さす。
「押してみないと鳴るかどうかわからないけど、押すと怒られるのでこのままでヨシ!」
「ワカラナイけど、ヨシ!」
「プッ‼」
ふーみんが呆れて言う。
「アンタ達、やめなさい。恥ずかしいから。そういうのは部室だけにしなさいよね」
「ふむ。」諭されてしまった。
放課後で校舎には誰もいないから、やったんだけどね。見ているのなんていつものメンバーだけだ。
明日、9月1日は『防災の日』
学校では避難訓練がある。その前準備として今日は生徒会と先生達で避難経路や消火器などの確認にあたっていた。
生徒会メンバーはそれぞれ2人で一組になって分かれている。かいちょとパイセンの組には、まだ正式に生徒会員ではないヒメとチカ丸が同行することになった。1年生の世話役という事だろう。
ゾン研はお休みにした。かいちょがいないと締まらないし、一年ズもいないのでは物足りない。だからアタシも勝手に見回りへ付いてきている。
「ふーみん、わざわざ付き合わなくてもいいんだよ?一人だけ帰ったって」
「べつにいいでしょ!私の勝手じゃない」
「そうだね。いつも部員でもないのに、ゾン研にも顔出してるもんね」
「アンタこそ早く帰ってゲームでもしてれば?」
「アタシはあまり早く帰ると、かーさんがいい顔しないから時間を潰しているのさ」
「私もー」はなっちも頷く。
「お前ら、遊びじゃないんだぞ?」
パイセンが非常ベルの下、消火栓と書かれた鉄製の箱の扉を開けた。中には消火ホースが収まっていた。
「ヨシ、ヨシ、言ってないで、ちゃんとあるかどうか確認しろよ。」
いつも大雑把だから意外だけど、こういう時のパイセンはキッチリしている。やはり生徒会副会長といったところか。
「中はこんな風になっていたんですね」
「見た事ないのか?普通、生徒は開けないからな。使い方も簡単だからついでに覚えとけ。ホースを絡まらない様に全部出して、バルブを緩めれば水が出る。それだけだ。普段使う水まきホースの威力が強いヤツと思えばいい」
手短に説明して扉は閉められた。
「これで海津も、もしもの時は消火を手伝えるな」
「いえ、アタシは一目散に逃げます!」
「フッ、」と笑ってパイセンが歩き出した。
「次はこれだな」
立ち止まったのは、階段横にある鉄の扉。防火戸と呼ばれているものだ。
「誰だよ勝手にポスター張ったヤツ」
その扉には9月の末にある文化祭の告知ポスターが張られていた。演劇部、吹奏楽部、放送部、コーラス部、などなど、それぞれに出し物の案内がされている。
パイセンがそれらのポスターを容赦なく剥がしていく。その下から現れたのは赤い文字の『防火戸』それに『この場所に物を置かない事』と書かれた注意書きだった。
「会長、ポスターを張る場所は決めておかないといけないな」
「そうですね」
「ちょっと持っててくれ」そう言ってポスターの束を渡された。
パイセンが壁に収まっている防火戸を力強く押す。すると鉄の扉がゆっくり開いてきた。そのまま廊下側と階段側の通路を遮断する。
「この扉はセンサーと連動してるから火事の時は自動で開くようになってるんだが、今やったように扉を押し込むと手動で開くこともできる。だから、もたれ掛かるなよ?開くから」
なぜアタシの方を見る。それはヤレというネタ振りですか?やりませんけどね。お笑い芸人じゃないんだから。
「押すなよ、押すなよ、」はなっちが煽ってくる。
「アンタならやりそうよね」みんなこちらを見ていた。
「やらないよ!」
パイセンがハハハッ!と笑いながら手を出してきたのでアタシはポスターを返した。
「おっと、」
受け取り損ねた1枚がヒラリと落ちた。
拾ってくれたヒメが言う。
「何の出し物ですかね?」
それは映像研のポスターのようだ。大きな文字で『どうする?信長。どうなる?映像研』とだけ書かれている。
「たぶんタイトルしか決まってないんだよ、コレ。今頃、必死に何か制作してるんじゃない?」
「映像研は放送部の人達の中から映画製作がしたいと要望を受け作られた部ですよ。ゾン研と同じく同好会扱いですけど」かいちょが付け加えてくれた。
パイセンも続く。
「最近できたんだよ。お前たちがゾン研なんて作るからマネして自分達も作らせてほしいなんて言って、」
「ええ。他にも演劇部の中からダンス同好会も出来てしまいましたし、」
二人の視線が痛い。
「アタシのせい?いやいや、生徒会が認めたんだから生徒会の責任ですよ?」
「なら、今度の文化祭で実績を残せなかったら全部廃部だぞ。いいよな?会長。生徒会が責任取らないとな」
「え?ええ・・・・・・月光さん、頼みますね」
会長という立場上、ゾン研だけえこひいきする訳にはいかなかったんだろう、かいちょは。
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アタシの同人誌だけで大丈夫だろうか?少し不安になってきた。
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