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ある日、兄のジャスパーがいつもの優しい笑顔をさらにほころばせて部屋にやってきました。
「メイベール、入学式のパーティーで着るドレスが仕上がったようだよ」
彼が見せてくれたのは、赤を基調としたシックで豪華なドレスです。赤はケステル家の象徴。それは瞳の色が赤い事に由来しています。ケステル家主催のパーティーなどでは来客は気を遣って赤い衣装を身に付けません。
だから入学式の後に行われるパーティーでも当然ケステル家に気を遣い、赤いドレスなど着てくるものはいないと、メイベールは考えていたのです。そこへヒロインのアイラが同じ赤いドレスを着て来たことに腹を立て事件が起きる……
ゲームを開始してすぐのイベントです。
(やっばっ!)
朝日は慌てました。
「お兄様、このドレスとても素敵ですわね。けれど、わたくしには少し派手ではないかしら?赤じゃなく別の色がいいわ」
「久しぶりにキミの我がままを聞いたよ、フフ。けど赤以外は認められないな。ケステルの色じゃないか。それに今から仕立て直していては入学式に間に合わないよ」
(ん?待てよ)
朝日は思いとどまりました。これからゲームのシナリオが始まるなら、メイベールは悪役令嬢として立ち振る舞わなければいけないのです。テオとアイラが結ばれるようにと。
(そうだったーっ!アタシ悪役じゃん!)
慣れない貴族の生活に追われ、その事を忘れていた朝日。
仕方なくジャスパーの要望に応えて、ドレスを着て見せてあげました。
「綺麗だよ。メイベール。やっぱり赤が一番よく似合う」
満足げな赤い瞳がメイベールの事を優しく見ています。朝日は不安になって聞きました。
「お兄様、入学パーティーで同じ赤いドレスを着ている方がいたらどうしましょう?」
「それはしょうがないよ。うちが主催のパーティーではないのだから。どんな色のドレスを着てこようと自由さ。けれど、赤いドレスを着ている者がいたら挨拶してあげるといい。赤の公爵ケステル家のメイベールだとね」
(この言葉を真に受けたのかぁ)
朝日にはこれからどんなことが起きるのか分かっているので気が重くなりました。このまま体調不良と噓をついて式を欠席するのもアリかもしれません。ですが、明星が待っているのだから、勝手なことはできません。
朝日はそれからゲームの内容を覚えている限り、手帳へ書きだすことにしました。
既にメインの3人は攻略済みだったのは良かったのですが、その後ずっとジャスパーとメイベールのパラメーター上げに精を出していたので、内容がよく思い出せません。
机に向かって唸っている姿は、どうやらメイド達の関心を引いたようで、きっとテオ様に出す手紙を書いているのだと噂になりました。
メイド達の視線が前にも増して、にこやかになり、逆にジャスパーの笑顔は少し曇った様に朝日は感じました。
(悩んでいてもしょうがない!)
入学式へ向け、メイベールとジャスパーは魔法学校のあるリードの街へ出発しました。
「メイベール、入学式のパーティーで着るドレスが仕上がったようだよ」
彼が見せてくれたのは、赤を基調としたシックで豪華なドレスです。赤はケステル家の象徴。それは瞳の色が赤い事に由来しています。ケステル家主催のパーティーなどでは来客は気を遣って赤い衣装を身に付けません。
だから入学式の後に行われるパーティーでも当然ケステル家に気を遣い、赤いドレスなど着てくるものはいないと、メイベールは考えていたのです。そこへヒロインのアイラが同じ赤いドレスを着て来たことに腹を立て事件が起きる……
ゲームを開始してすぐのイベントです。
(やっばっ!)
朝日は慌てました。
「お兄様、このドレスとても素敵ですわね。けれど、わたくしには少し派手ではないかしら?赤じゃなく別の色がいいわ」
「久しぶりにキミの我がままを聞いたよ、フフ。けど赤以外は認められないな。ケステルの色じゃないか。それに今から仕立て直していては入学式に間に合わないよ」
(ん?待てよ)
朝日は思いとどまりました。これからゲームのシナリオが始まるなら、メイベールは悪役令嬢として立ち振る舞わなければいけないのです。テオとアイラが結ばれるようにと。
(そうだったーっ!アタシ悪役じゃん!)
慣れない貴族の生活に追われ、その事を忘れていた朝日。
仕方なくジャスパーの要望に応えて、ドレスを着て見せてあげました。
「綺麗だよ。メイベール。やっぱり赤が一番よく似合う」
満足げな赤い瞳がメイベールの事を優しく見ています。朝日は不安になって聞きました。
「お兄様、入学パーティーで同じ赤いドレスを着ている方がいたらどうしましょう?」
「それはしょうがないよ。うちが主催のパーティーではないのだから。どんな色のドレスを着てこようと自由さ。けれど、赤いドレスを着ている者がいたら挨拶してあげるといい。赤の公爵ケステル家のメイベールだとね」
(この言葉を真に受けたのかぁ)
朝日にはこれからどんなことが起きるのか分かっているので気が重くなりました。このまま体調不良と噓をついて式を欠席するのもアリかもしれません。ですが、明星が待っているのだから、勝手なことはできません。
朝日はそれからゲームの内容を覚えている限り、手帳へ書きだすことにしました。
既にメインの3人は攻略済みだったのは良かったのですが、その後ずっとジャスパーとメイベールのパラメーター上げに精を出していたので、内容がよく思い出せません。
机に向かって唸っている姿は、どうやらメイド達の関心を引いたようで、きっとテオ様に出す手紙を書いているのだと噂になりました。
メイド達の視線が前にも増して、にこやかになり、逆にジャスパーの笑顔は少し曇った様に朝日は感じました。
(悩んでいてもしょうがない!)
入学式へ向け、メイベールとジャスパーは魔法学校のあるリードの街へ出発しました。
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