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次の日のティータイムの時間、ジャスパーが機嫌よさそうにお茶の準備をしてくれました。いつもメイベールにはお菓子や紅茶にと世話を焼いてくれるのですが、今日は皆の分の紅茶を淹れてくれます。
「どうかしましたの?お兄様。とても嬉しそうじゃありません?」
「分かるかい?やっと例の事件が解決したんだ」
「あら、では犯人が見つかったのですわね?」
「いいや、犯人は分からないままだ。けれど今朝、図書係に聞いたら無くなっている本はなかったらしい。それに今日は本も散らばっていなかったと言うんだ。きっと犯人はいたずらに満足したのだろう」
犯人がいたずら目的だったというのなら、その目的は果たされたと言っていいでしょう。フライングブックの噂はここ数日で生徒の誰もが知るところとなりました。面白がって普段、図書室に来ないような子まで見物に来ているのです。
「でも、よろしいので?犯人が分からないままだなんて」
「構わないよ。窃盗ではなかったのだし、いたずらだと分かったんだ。こうしてティータイムの話題として十分楽しめもしたじゃないか。それに僕は妹と二人で探偵ごっこが出来て楽しかったよ」
「フフ、わたくしもですわ」
ルイスが紅茶をすすってから言いました。
「事件は解決したというよりこれから起こるんじゃないのか?」
「どういうことですの?」
「明日は収穫祭だ。収穫祭には死後の世界から霊が返ってくると言われているだろう?霊達は自分に気付いてもらう為、イタズラをするんだ。それに合わせて子供達もイタズラをするじゃないか。この日だけはどんなイタズラをしても許される」
ジャスパーもやれやれといった感じに言います。
「この学校でも毎年、大きな子供達がイタズラし放題さ。まったく大人になってほしいものだね」
「ジャスパー、去年キミがしたイタズラの事、私は忘れてないからな?」
「ルイス、小さなことをいつまでも根に持っていては国王になんてなれないよ?キミも大人になりたまえ」
ルイスは言い返しませんでしたが、含み笑いしています。きっと何かお返しを考えてあるのでしょう。
「メイベール、キミも羽目を外しすぎてはいけないよ?」
「ええ?……気を付けますわ、」
紅茶をすすり、兄が用意してくれたお菓子に手を伸ばします。
「今日のお菓子はいつもと違いますのね」
それはカップケーキでした。具に細かく刻まれたカボチャが入っているのが見えています。
「収穫祭ではカボチャを使った料理やお菓子が用意されるのだよ」
兄も一つ手に取り頬張りました。
(10月31日って確かハロウィンだよね?こっちの世界にも似たのがあるんだぁ。)
素朴な味わいのカップケーキを愉しんでいるとアイラが言いました。
「今日は放課後にマリーさんのお店で収穫祭の飾り付けをするんです。あの、よかったら皆さん参加しませんか?」
「そうだな。私は構わない。マリーさんの手伝いをすると、おやつを出してくれるからね」
「いいですわね。わたくしもおやつ食べたいですわ」
「キミたちはおやつが目当てなのかい?まあ、僕は妹が参加するなら付き合ってあげよう」
アイラはテオの方をチラチラと見ています。最初からテオを誘うのが目的だったのでしょう。彼の方はカップを手にし、その紅茶に視線を落としたまま動きません。魔導書を調べるのに忙しいと言いかねませんでした。ここのところフライングブック騒ぎで邪魔され続けているのです。
(しょうがないなぁ)
「せっかくですから、テオ様も参加いたしましょう?」
朝日が視線を送ると、明星は頷きました。
「ああ、そうだな」
アイラはニッコリ笑いました。
「どうかしましたの?お兄様。とても嬉しそうじゃありません?」
「分かるかい?やっと例の事件が解決したんだ」
「あら、では犯人が見つかったのですわね?」
「いいや、犯人は分からないままだ。けれど今朝、図書係に聞いたら無くなっている本はなかったらしい。それに今日は本も散らばっていなかったと言うんだ。きっと犯人はいたずらに満足したのだろう」
犯人がいたずら目的だったというのなら、その目的は果たされたと言っていいでしょう。フライングブックの噂はここ数日で生徒の誰もが知るところとなりました。面白がって普段、図書室に来ないような子まで見物に来ているのです。
「でも、よろしいので?犯人が分からないままだなんて」
「構わないよ。窃盗ではなかったのだし、いたずらだと分かったんだ。こうしてティータイムの話題として十分楽しめもしたじゃないか。それに僕は妹と二人で探偵ごっこが出来て楽しかったよ」
「フフ、わたくしもですわ」
ルイスが紅茶をすすってから言いました。
「事件は解決したというよりこれから起こるんじゃないのか?」
「どういうことですの?」
「明日は収穫祭だ。収穫祭には死後の世界から霊が返ってくると言われているだろう?霊達は自分に気付いてもらう為、イタズラをするんだ。それに合わせて子供達もイタズラをするじゃないか。この日だけはどんなイタズラをしても許される」
ジャスパーもやれやれといった感じに言います。
「この学校でも毎年、大きな子供達がイタズラし放題さ。まったく大人になってほしいものだね」
「ジャスパー、去年キミがしたイタズラの事、私は忘れてないからな?」
「ルイス、小さなことをいつまでも根に持っていては国王になんてなれないよ?キミも大人になりたまえ」
ルイスは言い返しませんでしたが、含み笑いしています。きっと何かお返しを考えてあるのでしょう。
「メイベール、キミも羽目を外しすぎてはいけないよ?」
「ええ?……気を付けますわ、」
紅茶をすすり、兄が用意してくれたお菓子に手を伸ばします。
「今日のお菓子はいつもと違いますのね」
それはカップケーキでした。具に細かく刻まれたカボチャが入っているのが見えています。
「収穫祭ではカボチャを使った料理やお菓子が用意されるのだよ」
兄も一つ手に取り頬張りました。
(10月31日って確かハロウィンだよね?こっちの世界にも似たのがあるんだぁ。)
素朴な味わいのカップケーキを愉しんでいるとアイラが言いました。
「今日は放課後にマリーさんのお店で収穫祭の飾り付けをするんです。あの、よかったら皆さん参加しませんか?」
「そうだな。私は構わない。マリーさんの手伝いをすると、おやつを出してくれるからね」
「いいですわね。わたくしもおやつ食べたいですわ」
「キミたちはおやつが目当てなのかい?まあ、僕は妹が参加するなら付き合ってあげよう」
アイラはテオの方をチラチラと見ています。最初からテオを誘うのが目的だったのでしょう。彼の方はカップを手にし、その紅茶に視線を落としたまま動きません。魔導書を調べるのに忙しいと言いかねませんでした。ここのところフライングブック騒ぎで邪魔され続けているのです。
(しょうがないなぁ)
「せっかくですから、テオ様も参加いたしましょう?」
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「ああ、そうだな」
アイラはニッコリ笑いました。
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