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「ウサギ?狩でもしろって言うの?」
アイラの方から返事はありません。上手くいくと思っていたのに成果が上がらず、怒られただけなのですから、しょげているのです。
朝日もふてくされているだけではダメだと思い。彼女に声を掛けます。
「とりあえず、コレでも食べる?」
足元にわずかばかりの海藻が流れ着いているのを拾い上げました。
「そうですね……お腹、空きましたもんね」
いったん小屋に戻ります。
海藻は茹でて食べようと思ったのですが、薪が無いので火を起こせません。仕方なく生で食べようにも、まず洗いたいと思い、二人は井戸を探して庭を歩き回りました。
「井戸、どこ?」
風よけの石垣に囲まれた敷地は、そんなに広くはないのに井戸が見当たりません。すると歩き回っている二人の足元に犬が尻尾を振りながらじゃれついて来ました。
「なに、この子。どうしたの?」
「散歩だ」
急に背後で野太い声がしたのでドキッとしました。そこに居たのはオリバーです。
「あ……どうも。」
「……こんにちわ。」
彼は無表情で、何を考えているのか分かりにくく、二人は物怖じしました。
「なにしてる」
「え……っと、水が欲しくて井戸を探してるんですけど」
彼が付いて来るようにと手招きします。犬が駆けて後を追います。二人も付いて行きました。
「ん、」
納屋でバケツを持たされました。また、手招きします。オリバーは石垣を出て行ってしまいました。訳が分かりませんが付いて行くしかありません。
石垣の外は強風だというのに、犬は喜んで草原を駆け回っています。まだ成犬でないのか小ぶりで、時々風にあおられて転げていました。それでも余程散歩が楽しいのか、オリバーの周りをキャンキャン駆け回ります。
彼が自身の太ももをポンポンと叩きます。駆け回っていた犬が隣に来て、おとなしくなりました。彼の顔を見上げて指示を待っています。腕を振るとまた風の様に走り出しました。どうやら狩猟犬か牧羊犬の様です。散歩のついでに訓練も兼ねているのでしょう。
オリバーが先ほどの浜へと降りて行きます。犬も転げ落ちるように降りて行きます。二人も付いて行きます。
(水とは言ったけど、まさか海水を汲みに行くんじゃないよね?)
「ここで汲め」
先ほどは気が付きませんでしたが崖には亀裂が出来ていて、そこから水がダバダバ流れ出ていました。島に降った雨がここから湧きだしているのです。その地下水が何千年とかけて崖を削り、崩れた岩は波に洗われ、砂利となってこの浜を作ったのでした。
「飲めるの?コレ?」
オリバーは頷くだけです。
地面は砂利なのでそこに水溜まりは出来ず、犬が流れ落ちる水へ食らいつくように飲んでいます。上手く飲めず体は濡れてビショビショです。
(つめたそー)
朝日も手に少しすくい飲んでみました。
(まずっ!……ミネラルウォーターみたい)
オリバーは頷くと犬を連れて行ってしまいました。
(運んではくれないんだ、)
二人はバケツに水を汲み、重い思いをして小屋まで帰りました。
「疲れたー」
「ええ……」
崖を上り下りしたので流石に寒くても喉の渇きを覚えた二人は、バケツからカップに水を汲んで飲みました。何も入っていない胃には冷たい水が突き刺す様に感じ、ひと口で止めました。
お腹は減っているのに冷たいものはまったく受け付けないのです。朝日は魔力操作で手を温め、冷えたお腹に当てました。
「ねぇ、この海藻、生で食べる?どのみち薪は無いもんね」
「温かいものを食べたいですね。スープにするとか。このままじゃ、凍えそう」
魔力操作で温まることの出来ないアイラはガタガタと震えています。
「そうだよね……薪、とってこようか」
朝日は先ほど庭を歩き回った時に見つけていたのです。向かいの家に大量に積まれた薪を。
アイラの方から返事はありません。上手くいくと思っていたのに成果が上がらず、怒られただけなのですから、しょげているのです。
朝日もふてくされているだけではダメだと思い。彼女に声を掛けます。
「とりあえず、コレでも食べる?」
足元にわずかばかりの海藻が流れ着いているのを拾い上げました。
「そうですね……お腹、空きましたもんね」
いったん小屋に戻ります。
海藻は茹でて食べようと思ったのですが、薪が無いので火を起こせません。仕方なく生で食べようにも、まず洗いたいと思い、二人は井戸を探して庭を歩き回りました。
「井戸、どこ?」
風よけの石垣に囲まれた敷地は、そんなに広くはないのに井戸が見当たりません。すると歩き回っている二人の足元に犬が尻尾を振りながらじゃれついて来ました。
「なに、この子。どうしたの?」
「散歩だ」
急に背後で野太い声がしたのでドキッとしました。そこに居たのはオリバーです。
「あ……どうも。」
「……こんにちわ。」
彼は無表情で、何を考えているのか分かりにくく、二人は物怖じしました。
「なにしてる」
「え……っと、水が欲しくて井戸を探してるんですけど」
彼が付いて来るようにと手招きします。犬が駆けて後を追います。二人も付いて行きました。
「ん、」
納屋でバケツを持たされました。また、手招きします。オリバーは石垣を出て行ってしまいました。訳が分かりませんが付いて行くしかありません。
石垣の外は強風だというのに、犬は喜んで草原を駆け回っています。まだ成犬でないのか小ぶりで、時々風にあおられて転げていました。それでも余程散歩が楽しいのか、オリバーの周りをキャンキャン駆け回ります。
彼が自身の太ももをポンポンと叩きます。駆け回っていた犬が隣に来て、おとなしくなりました。彼の顔を見上げて指示を待っています。腕を振るとまた風の様に走り出しました。どうやら狩猟犬か牧羊犬の様です。散歩のついでに訓練も兼ねているのでしょう。
オリバーが先ほどの浜へと降りて行きます。犬も転げ落ちるように降りて行きます。二人も付いて行きます。
(水とは言ったけど、まさか海水を汲みに行くんじゃないよね?)
「ここで汲め」
先ほどは気が付きませんでしたが崖には亀裂が出来ていて、そこから水がダバダバ流れ出ていました。島に降った雨がここから湧きだしているのです。その地下水が何千年とかけて崖を削り、崩れた岩は波に洗われ、砂利となってこの浜を作ったのでした。
「飲めるの?コレ?」
オリバーは頷くだけです。
地面は砂利なのでそこに水溜まりは出来ず、犬が流れ落ちる水へ食らいつくように飲んでいます。上手く飲めず体は濡れてビショビショです。
(つめたそー)
朝日も手に少しすくい飲んでみました。
(まずっ!……ミネラルウォーターみたい)
オリバーは頷くと犬を連れて行ってしまいました。
(運んではくれないんだ、)
二人はバケツに水を汲み、重い思いをして小屋まで帰りました。
「疲れたー」
「ええ……」
崖を上り下りしたので流石に寒くても喉の渇きを覚えた二人は、バケツからカップに水を汲んで飲みました。何も入っていない胃には冷たい水が突き刺す様に感じ、ひと口で止めました。
お腹は減っているのに冷たいものはまったく受け付けないのです。朝日は魔力操作で手を温め、冷えたお腹に当てました。
「ねぇ、この海藻、生で食べる?どのみち薪は無いもんね」
「温かいものを食べたいですね。スープにするとか。このままじゃ、凍えそう」
魔力操作で温まることの出来ないアイラはガタガタと震えています。
「そうだよね……薪、とってこようか」
朝日は先ほど庭を歩き回った時に見つけていたのです。向かいの家に大量に積まれた薪を。
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