イチメハ!! カン違いで始まる物語

二コ・タケナカ

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第8章

8-4

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8-4「ユウのターン」

野営の準備をしてくるからと言って部屋に戻っていったチェアリーを、オレは中庭のベンチで待った。
オレの方はいつもと変わらない装備と荷物だけだ。あっという間に準備を終えさっきから彼女を待っているのだが、中々出てこない。

チェアリーにすべて任せていたので特にやることもなく、ベンチから空を眺めて流れて行く雲を眺めた。
(雨、降らないといいけど・・・・・・)
野営といってもオレの知っているキャンプと変わりなさそうなので、後は天気が良ければ楽しめそうだ。

しばらくぼーっと空を眺めて待っているうちに、チェアリーが荷物を抱えてやってきた。
「ゴメンね、待たせて」
「いや、いいよ」
彼女は丸めて紐で縛りあげた毛布を小脇に抱え、更にいつも持ち歩いているカバンとバックも肩から下げて現れた。
「はい、持って、持って!」
彼女に渡された毛布には肩から下げられるように紐が通してある。
(準備がいいな)
どうやらオレは荷物持ちのようだ。

(こういう時はラノベでよくあるみたいに、亜空間へアイテムをしまっておけたら便利なんだけど。無いのかな?そういう魔法)
もしそんな便利な魔法があるのだったら、わざわざウサギを担がせたりしないだろう。それに物の移動が簡単になるという事は経済の発展を意味する。例えば機関車の登場が産業革命の一因を担ったように。
この街はとても快適ではあるけど、みな地に足を付けた生活をしているように感じる。過度な経済発展など無縁だ。

オレに荷物を預けたチェアリーもそのカバンには何が入っているのかパンパンに膨らんでいる。それも持ってあげたいが、毛布を抱えていては手が回らない。
「ずいぶん、多いね。荷物」
「そうかなぁ?野営するんだから荷物はどうしてもかさばるし、まだこれからギルドに行ってテントも借りるんだよ?」
「ギルドってテントも貸してくれるの?」
「そうだよ。知らないの?冒険者の手助けをしてくれるのがギルドの仕事なんだから」
「あー、ギルドってあまり利用したことなくて、ははっ」
利用もなにも、こちらはギルドなんか初めての経験。オレが借りている剣もそうだが、必要な物は何でも借りられるのだから冒険者というのは至れり尽くせりだ。
(冒険者は体1つでいいんだな)
モンスター退治は危険な仕事な分、優遇されているのだろう。

「でも、テントってかなりかさばるんじゃないの?」
「大丈夫だよ、貸してくれるのは一人用のテントだから小さいし、1つ借りるだけだし」
「一人用?なら2つ借りないと」
「え?1つで十分でしょ?」
「ん?ああ、そうか。1つで十分だよな」
「うん・・・・・・」
やはり夜は見張りの為に交代交代で寝るらしい。小さなテント一つくらいなら何とか持てるだろうと、オレは自分のカバンを腰辺りに回し、毛布を肩から掛けた。
(動きにくいな)
脇に毛布を抱える形になってしまったのでモコモコしていて動きにくい。これではモンスターに襲われた時、剣が抜けない。
「さあ、早くいこ!」
荷物に四苦八苦しているオレを置いてチェアリーは歩きだしてしまった。
(もしもの時はチェアリーに任せるか。スライムだって見かけないんだし、大丈夫だよな)
荷物を抱え、先を行く彼女を追いかける。

ギルドではチェアリーが言っていたようにテントを貸し出しているようだった。しかし、倉庫に受け取りに行ってみると、係の男性はテントは貸し出し中で一つも残って無いのだと言う。
「あぁ、ごめんユウ。どうしよう」
チェアリーは落ち込んでいるようだったが、オレは野営と聞いて地面にそのまま寝る野宿のようなものをイメージしていたのだ。テントがあっても無くてもどちらでも構わない。
「無いのならしょうがないよ。べつにテントを張らなくてもよくない?そのままで」
「ユウがそれでいいなら、私もいいよ・・・・・・」

(でも、テントが無いと少し寒いかな)
起きている間はたき火にあたればいいだろうが、寝る時は川から吹いてくる冷気で寒くなるかもしれない。
オレ達の様子を見て、係の人が気を利かせてくれた。
「テントはないけど、タープなら残ってるよ」
「タープ?ああ、日よけのシートか。そうだなぁ、タープなら張った事あるしそれにする?」
「ユウ、タープ張れるの?ならそれにしよ」

キャンプなら何度か経験があるし、タープも張ったことがある。
元々アウトドアが好きだったオレはタープの張り方をネット動画を見て覚えた。基本さえ覚えてしまえばそんなに難しい物じゃない。
その事を友達に言うと日よけが張れるならとバーベキューに呼ばれた事があった。最初は一人で日よけを張る姿をすごいすごいと喜んでくれていたし、自分も得意げになっていたのだが、結局それは都合よく小間使いにされただけだと後になって気が付いた。
アウトドアでは火起こしやテント張りなど準備が出来る人はとことん小間使いにされ、何もできない人はその様子を見ながらのんびり楽しめるというのがお約束だ。
(こんな所で役立つ日が来るなんてな)

「じゃあ、これ、タープね」
渡された袋の中を少し覗いてみると、中には茶色いキャンバス地のシートと組み立て式のポール、地面に固定するためのペグなど、オレが知っているタープと遜色ないものが揃っているようだった。
(こんな良いものが借りれるのか)
「後はマットやコットとか折り畳みのテーブルなんかもあるけど、どうする?」
「色々揃ってるんだな・・・・・・」
棚に収納されている道具を見ているだけで、オレの中のキャンプ魂がうずいてくる。

「マットは借りていこう?あった方がいいでしょ」
彼女は棚から小ぶりの座布団が数枚まとめられたものを取り出した。
「テーブルもあった方がいいよな」
オレも棚からまな板サイズの小さなローテーブルを取り出した。やはり魚を捌くならテーブルは欲しい。
「あまり持って歩けないし、これくらいにしておこう?」
「そうだな」
あれこれ揃えたくなってしまうが、歩きなのだからしょうがない。もう二人とも手荷物でいっぱいだ。

「それだけでいいかい?」
「はい」
「なら貸出期間は1ヶ月ね。それを越えると延滞料金もらう決まりになっているから忘れないように」
「分かりました」
係の人はそう言いながら書類にオレ達が借りた物をチェックした。

「ユウ、行こっ」
チェアリーはテントを借りれなかった事はもうよくなったのか、笑顔で歩きだした。オレも大きな荷物を抱えその後ろを付いて行った。
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