砂の彼方

うらら

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目を覚ますと、周囲には砂しかなかった。果てしない砂漠が広がり、空には雲一つない灰色の空が覆っている。風は冷たく、砂粒が舞い上がり、頬に当たる。名前も、過去も思い出せない。ただ、この荒廃した世界に一人取り残されているという現実だけが、痛いほどに突き刺さる。

「ここは…どこだ?」

声を出してみるが、誰も答えない。ただ、冷たく響くだけだ。砂に足を取られながら、なんとか立ち上がり、周囲を見渡す。遠くには何かが見えるかもしれない。もしかしたら、ただの幻かもしれないが、そこに行ってみるしかない。

彼は砂漠を歩き始めた。足元の砂は重く、歩くたびに深く沈んでいく。水も食料もないが、何故か飢えや渇きは感じなかった。ただ、この無限に続くように見える砂漠を進むことだけが、彼の唯一の目的となった。

途中、彼は奇妙なものを見つけた。砂に埋もれた古びた器具や、風化した石碑のようなものだ。それらは、かつてここに文明があったことを示しているようだった。しかし、なぜすべてが砂に覆われてしまったのかは分からない。

ある時、彼は砂の中から一冊の古びた本を掘り出した。表紙は砂にすり減り、文字はほとんど読めなくなっていたが、どうにかして「砂の彼方」というタイトルだけは読み取れた。本を開くと、内容はすべて謎めいた言葉で綴られていた。彼はその本を手に取り、再び歩き始めた。

何日歩いたのか、彼にはわからなかった。ただひたすら前へ進むと、ついに目の前に巨大な都市が現れた。高くそびえる建物、広がる大通り、しかしすべてが砂で覆われ、静寂に包まれている。彼はその都市に足を踏み入れた。

都市の中を歩きながら、彼は奇妙な感覚に襲われた。まるで誰かに見られているような、またはかつてこの都市に住んでいた人々の記憶が、砂を通じて伝わってくるような気がした。彼は都市の中心へと進み、大きな広場に出た。そこには巨大な石像が立っていたが、その顔は風化して認識できなかった。

その時、彼は強烈な光に包まれた。目の前の景色が歪み、都市が消え、再び砂漠の中に立っている自分に気づく。だが、その手には確かに、さっきまで持っていた本が握られていた。

彼は再び歩き始めたが、今度はその本を読み進めながらだった。本の中には、砂漠の成り立ちや、かつて存在した文明についての記述があった。さらに進むうちに、彼はこの世界が「砂の神」と呼ばれる存在によって支配されていることを知る。

砂の神はかつて、この地を豊かな世界に作り上げたが、人々の傲慢さに怒り、すべてを砂に変えてしまったという。彼が歩いているのは、かつて栄えていた世界の残骸であり、その神の呪いによって永遠に砂漠となっている。

本の最後のページには、砂の神を解放する方法が記されていた。彼は迷うことなく、その方法を実行する決意をした。

本の指示に従い、彼は砂漠の中心へと向かった。そこには巨大な砂の嵐が待ち受けていたが、彼は恐れることなく進んだ。嵐の中心には、石でできた祭壇があり、その上に古びた剣が刺さっていた。

彼は剣を抜き、祭壇に掲げた。その瞬間、砂漠全体が激しく揺れ、空が割れ、眩い光が降り注いだ。彼は光に包まれ、やがて意識を失った。

目を覚ますと、彼の周りには緑が広がっていた。かつての砂漠は消え去り、豊かな森と川が流れる新しい世界が広がっていた。彼はその景色を見渡し、微笑んだ。

過去の記憶は戻らなかったが、この新しい世界での生を、彼は受け入れることにした。砂漠はもう存在せず、彼は新たな人生を歩み始めたのだった。
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