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第7話

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 暗く、じめっとした橋の下。

 何だろう。今時エッチな本も落ちていなければ異世界にまで行っているのに感じる非日常感。上を見上げれば橋桁からそこはかとなく漂うSF感のせいだろうか。

 それはさておき、魔法矢ボルトの射程の確認だ。

 さっき調べたこの橋の長さは231m。向こうの川岸まで200mくらいだろう。

 周囲の確認。よし。サイクリングロードからも近くからは見えない。

「橋台に当てないように。魔法矢ボルト

 目の前に生成された光の矢が飛翔する。

 ドパンと鈍い音を立て川の中央に着弾し、トラックでも川に落ちたかのような水柱を上げた。

「やべ」

 軽い気持ちで100mくらいで撃ってみたが派手だ。派手に爆発した。こっちじゃ威力でなそうかもと思ったが逆か?こんなんじゃ迂闊に使えない。どうする逃げるか?目撃者は?

『その望み、果たすがよい』

 黒いピカピカ球の言葉が脳裏をよぎる。


 深呼吸する。

 巻き上げられた川の水がキラキラと虹を作っていた。

 聞き耳を立ててみるが騒ぎは起きていない。

 俺は引きつる顔をもみほぐし、ゆっくりと散歩するように橋の下を後にした。

 100mは飛ぶ。その結果だけを獲得して。



 家に帰り、冷静になると100mも飛べば十分だと思い直した。そんなに遠くまで狙撃するにしたって視力が追いつかない。

 それより威力だ。異世界向こうより出ている。魔力がないほうが威力が出るということは魔力が強い敵には効きにくいということか。ゲーム的には常識的ではある。

「しかしなぁ……ハンドガン、有効射程距離」

 こっちでは最早兵器だ。検索してみると「ハンドガンは約20~50m、ストック付サブマシンガンは約50~100m、アサルトライフルは300~600m、スナイパーライフルは約600~2,000m程度となります」とある。

 重力無視で進む魔力の矢だと有効射程距離と最大射程距離がほぼ同値で少なくともサブマシンガン級。弾数は置いておくとして殺傷能力はこちらの方が上だろう。

「頑張ったら人類滅亡できるようになるんか……」

 いや、滅亡したらライフラインなくなるし、する気もないんだけど。

 レベルアップで身体能力は上がっても誤ってコップを握りつぶしたりなどの力加減が分からなくなるような劇的変化はなかったのであまり実感はしていなかったが、確実に人外への道を歩みつつある。


 何となく寂しさのようなものを感じて匿名掲示板に「異世界でレベルアップしたんだけど何か質問ある?」というスレを立てたがあっさりと数多のスレッドに沈んでいってしまった。


 行ったり来たりできるのは自分だけ。誰とも共感できない。1人孤独に化け物になっていく自分。そして、減っていく貯金。

 まるでこちらの世界に拒絶されているかのようだ。


「考えすぎか……」

 とりあえずレベルがあるならレベル上げ。それがまずやることだ。

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