異世界いっといれ 〜失業したので異世界行き来しながらスキルで稼ごうとしていたがキャバ嬢に主導権を握られている

nov

文字の大きさ
13 / 59

第13話 異世界行脚

しおりを挟む



「出番があるかも」と勝田さんからメッセージが着たのは22時を過ぎたころだった。

 その後、ウズウズとしながら勝田さんの名刺にあったお店のホームページを眺めていたら、アユミさんは3店舗あるキャバクラ店の1つで人気No3のようだった。意外と売れっ子さんだ。
 青い顔で血吐いてアイメイクも涙でグシャグシャなイメージしかなかったので華やかでセクシーなドレス姿がとても新鮮だ。写真が色々掲載されている。眼福眼福。

「……でっか」

 No1の女性は大きかった。凄い谷間だ。これ動いて大丈夫なのか心配になる。

 料金システムを見ると1時間5千円くらいにTAXサービス料が30%。延長30分と指名料が3千円。女の子の飲み物代が別として果たしていくらになるのやら。

「TAXサービス料が30%ってすげぇな」

 異世界だ。ここにも異世界が広がっていた。自転車で5分の身近な繁華街にこんな世界が広がっていたとは気付きもしなかった。俺の前職の日給が1時間ちょっと座っているだけで消えてなくなる世界。見ないようにしていたが正解なのかもしれないが。

「これる?」

 着信音を響かせたスマホに表示される通知。勝田さんだ。

「大丈夫です。どちらに伺えばいいですか?」と返信すると今見ていたアユミさん勤務の店名が返ってきたので5分で行きますと送信した。


 24時近くなり車通りが少なくなった道路をライトを点けた自転車で疾走する。


 ちょっと楽しみになっていた。

 夜の蝶達の華やかな女の園。



 しかし、たどり着いたそこは野戦病院のような有り様だった。


 お店の入り口のボーイさんに案内された無骨なロッカーと簡素なソファが並ぶ待機所には、靴を脱ぎ散らかしてソファで仰向けに横になり唸っている女性と、床に座り込んでイヤイヤ無理無理言いながら泣きはらしている女性がいた。ボーイさん達が困った顔で宥めている。

 しばし呆然としていると勝田さんがやってきた。

「先生! 助かる! 2人の回復頼みます!」

「2人とも、ですね。了解しました」

 まずは横になっている女性からだ。よく見るとNo1の人だった。はだけた胸元からはヌーブラがはみ出て、短いスカートからは下着が丸見えになっているが色気もへったくれもない。手早く済ませよう。

小解毒ローキュア

 投げ出された腕に触れ、小解毒ローキュアをかける。ぴくりと反応した。

「あれっ?」

 がばりと起き上がった女性は不思議そうな顔をしてこっちを見ている。

 次だ。

小解毒ローキュア

 泣きはらしている女性の腕に触れ、同様に小解毒ローキュアだ。2つ目の魔力向上を取ったおかげかそれほど負担は感じない。

「よーし。ルミはまず化粧を直せ。アイカは行けるな?」

「なにこれ? 統括?」

「酒を抜いてもらった。朝、説明したろうが。指名の客で酔い潰れたら2,500円で復帰させるって。ホラ、客が待ってるから早く行け。ヘルプじゃもたん」

 そそくさと身だしなみを整えに化粧室へ駆け出す2人。

「さすが先生。ラストまで待機しててもらうことってできる?」

「ラストって何時ですかね?」

「今日は1時半かな」

「この後は特に用事がないので大丈夫です」

「助かるわー。あの客、コカボムバンバン入れるんだよねー」



 強い香水が混じり合った臭気だけが漂う無機質な待機室で1時間ほど待つ間にも、もう1人ダウン者が出た。もちろん小解毒ローキュアで回復済みだ。

 コカボムとはコカレロという南米古来のハーブ酒とレッドブルのカクテルで最新パリピ酒なんだそうな。検索調べ。一気飲みウェーイしているらしい。一杯3,000円也。



 結局、この日は1時間半ほどで15,000円の売上だ。勝田さんからお金を受け取り、領収書を3枚発行した。キャスト達の反応を見ながら他の店舗も頼みたいとありがたいお言葉ももらった。

「先生。おっつでーす」

「お疲れ様です」

 私服に着替えたキャストさん達にもすっかり先生呼びが馴染んでしまった。



 帰りがけに寄った牛丼屋で思った。


 意外と儲かるなこっちの異世界も。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

処理中です...