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第15話 パワーレベリング
しおりを挟む深夜の自宅で若い女性と2人きり。
「ここでのことは秘密厳守でお願いします。それじゃ異世界に行ってみたいと思います」
「異世界!? 武器もある!」
そういえば自宅に女性を招くのは初めてだった。意識すると鼓動が早くなったので早口で説明に移る。
「敵を倒してレベルが上がるとスキルポイントが増えてスキルを取れます」
「スキル制ですかー。ジョブとかは?」
「ジョブを解放するとそのジョブのスキルが取れる感じですかね」
「スキルツリーな感じですか?」
「そうですね。取ると次のスキルが出てきます」
やたらと理解が早い。
「……ゲーマーなので。深夜アニメも好きだし」
驚いていると少し恥ずかしそうに告白したアユミさんだ。意外とオタク気質だった。
「となるとジョブの解放条件ですね」
「今のところ農民、武闘家、シーフ、戦士、武士、回復士、槍士、魔道士、忍者は確認してます」
「いいですね……迷いますね」
「それでなんですが、そもそも行けるのかどうかと魔力に馴染めるかどうかという問題があります」
「どこから行けるんですか! トイレですか?」
「……トイレですね。ちょっと開けてみて下さい」
トイレから異世界は一般的なんだろうか。アユミさんがトイレ探索しているうちに武器防具を装備しリュックを背負う。
「普通のトイレですけど。わぁ刀いいですね!」
こちらからは真っ暗闇のトイレを覗き込んでいたアユミさんだがやはり他の人には普通のトイレなようだ。
「後は異世界に入れても魔力に馴染めるかどうかですね。胸が苦しくなりましたが寝たら治りました。今は回復魔法で治せると思います」
「じゃ行きましょう!」
装備もなしに行きたがるのは危ないのだが1層ならまぁ大丈夫か。
「それで魔力を感じたら意識して操作を試して下さい。多分魔道士の解放条件なので」
「はい!」
「では」
アユミさんは差し出した手を迷いなく掴んだ。
手を引き、元トイレに入り込む。
「これが異世界」
やはり接触していれば通れるようだ。いつもの迷宮の周囲には敵影なし。
「どうですか? 苦しくないです?」
「なんか少し……息苦しい……ような?」
「魔力的なのは感じます?」
「うーん……分からないですね」
適性のようなものが人それぞれなんだろうか。レベルアップしていないせいもあるのかもしれない。
「小治癒」
念のためヒールをかけておく。
「ではこの鍬を使ってください」
「えっ。鍬?」
「はい。いきなり長物刃物は危ないので。包丁かメイスでもいいですが」
「ジョブの解放条件とどんなスキルが取れるのかを教えてもらえますか?」
分かっている範囲でジョブ解放条件を手早く説明すると俺と同じようにシーフの敏捷向上をまず取得することにしたようだ。包丁装備。
ちなみに忍者の解放条件は多分バックアタック一撃死。
「では蜘蛛を連れてきますね」
「蜘蛛っ?!」
遭遇した蜘蛛の脚を刀で切り落とし、動けない蜘蛛を差し出すとアユミさんは恐る恐る包丁を突き刺しトドメを刺した。ゲーム感覚なのだろうが思ったよりも割り切りがいい。
「魂がレベルアップしました! シーフも!」
「大丈夫そうですね」
同様に小1時間で蜘蛛を13匹倒すころには、魔法系と忍者以外のジョブも解放していた。
「明日、教会に行きましょうね」
「はい!帰るの面倒くさいので泊まっていってもいいですか?」
寝ないでプレイしますくらいのハイテンションで言われても困る。廃ゲーマーなのか?そろそろいい加減眠いんですけど。
「え、トイレも布団もないんですけど」
「トイレはありましたよ?」
そうだった。なんだか自宅なのに理不尽だ。
「でもそうですよね。次は寝袋持ってきます!」
なんだろう。ゆるいキャンパーかなんかかな。
とりあえず帰ってくれたので泥のように眠りについた。とても疲れた1日だった。
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