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第22話 女騎士

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 アユミさんには変装してもらい迷宮街に出る。

 もう日が傾いてきている。急がねば迷宮の門が閉じてしまうだろう。迷宮入口を囲む塀を乗り越えることはできるがアユミさんを連れてやることではない。

 急ぎ足で教会に向かいお布施をし、アユミさんは合掌。

「神様に回復魔法を使えるようになりたいと念じてください」

「神様に……ですか」

「レベルアップとかのアナウンスは管理神です。こちらには神が実在してます」

 多分、神を信じてお願いすればいけるはずだ。


「回復士が解放されました!」

「回復魔法取ります?」

「取ります! 小治癒をください!」

「アユミさんスキルポイントあといくつありました?」

「あと12です。どれを取ればいいですかね?」

 小解毒(SP2)と魔力向上(SP2)はどっちも取った方がいい気がする。でも意外と戦闘狂なんだよなこの人。稼げるSPが限られるので半端に回復士を伸ばすのもはばかられる。

「アユミさんはどうなりたいですか?」

 分かっているスキルツリーと消費SPをメモ帳に書き込みキャラビルドを相談する。

「盾士のスキルはSP2の頑強向上でした。パーティ的にはタンク欲しいですよね?」

「アユミさんがタンクですか?」

「女騎士いいですよね。回復魔法使えるから女聖騎士!」

 とてもゲーム脳だ。騎士なんていうジョブはない。いやそうとも言い切れないか。でも頑強向上は俺もちょっと欲しい。

 すっかりパーティ前提で話が進んでいることに不安を覚えつつも、組んで迷宮に入ることには間違いないので同意することにした。

 レベル15のアユミさんはこんな感じだ。

 シーフ - 敏捷向上
 盾士 - 頑強向上
       挑発
 回復士 - 小治癒
       小解毒
       魔力向上
 残りSP 4

 盾士はヘイト集めの挑発スキルまで取得、回復士は魔力向上と小解毒まで。盾士の新しいスキルは挑発と盾撃だった。盾撃は攻撃範囲アップ系だ。魔道士が解放されていなかったが何だかんだで魔法矢は有用なのでSPは残しておくことになった。

 とりあえず魔法を覚えるところまではきた。いくら飲んでも自分でお酒を抜けるキャバ嬢の出来上がりだ。いいんだろうか。アユミさんを指名して酔わせてワンチャン狙いのお客さん達になんだか申し訳ない気分になる。

 でも、よく考えると酔わせてワンチャン狙いの男ならどうでもいいか。


「まだ門が閉じるまでもう少し時間ありますけど、こっちで晩飯にします?」

「行きたいです!」

 仕事をさぼったアユミさんを銀貨5枚食堂に連れていき、俺はナマズの様な白身魚を、アユミさんは謎肉の定食を堪能した。

 肉の種類と魚の異世界語はなんとなく分かってきた。

「異世界の食事も思ったより普通ですね」

「ここはそれなりの高級店ですし。屋台とかはちょっと危ないですよ。日本人には衛生面で」

「汚いのはちょっと無理かなぁ」

 無理だと思います。こちらのトイレも。

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