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第26話 精神力向上
しおりを挟む一向に進まない事業計画書を相手に唸っていると、アユミさんとマイさんが元気よくやってきた。
「お疲れ様です。佐久間さんどうでした?」
「お疲れ様です。ええ、色々相談に乗ってもらいましたが考えないといけないことが盛りだくさんですね」
「私たちも顧問頼んでるんです。税金って面倒ですから」
「ね~。払ったらなんでか住民税と国保も値上がりするし~」
アユミさんに紹介してもらった税理士の佐久間さんはどうやらキャバ嬢御用達の税理士のようだ。どうりで一般人の風体ではなかった。どちらかというと勝田さんサイドの匂いがした。後、マイさん値上がりしたんじゃなくて収入を誤魔化してたから法外に安くなってただけです。
でもまぁ払っていなかったものを払えと言われるとなんでだとなるのは分かる。初めて確定申告した去年の自分もだ。
「でも、こういうのは正直にやっておいた方がいいと思うんです」
「そうですね。新型ウィルスの協力金とかもちゃんと帳簿付けてなかったところは審査が遅くなったりしていたみたいですしね」
「知り合いは税務署来て200万取られたって。怖いよね~」
雑談もそこそこに迷宮街に向かう。女性陣は革の貫頭衣とフード付きパーカーにマスクの完全装備だ。ちょっと暑そう。
まずは教会でスキル振り。
「武士の迅動スキルを取れば精神力向上が出てきますからそれも取ってみてください」
「わ。なんか聞こえました~」
レベル6のマイさんは皆と同じく敏捷向上も取り、物理アタッカーのようなビルドになった。2段目の精神力向上を取ると中々SPが厳しい。
シーフ - 敏捷向上
武士 - 迅動
精神力向上
心眼 - (必要4SP)
剣気 - (必要4SP)
残りSP1
心眼は半径3mの気配察知のようなスキル。剣気は剣に気を纏わせ10秒間切れ味を上げるそうな。ただ刃筋を立てないと意味がないらしいので鋭い角度の硬くてもろい刃先が延長される雰囲気。
「精神力向上、どうですかね?」
目をつむっていたマイさんに聞いてみる。
「なんだか落ち着きが出てきた気がします~」
そうかい?見た目は変わったようには見えないけど。
「他人のためだと自分を責めて、他人のせいだと自分を慰めるのはもうやめにします~」
にっこりと笑うマイさんに誰やねんお前と思いつつも、メンタルに多大な影響を与えた精神力向上スキルの効果に戦慄する。
これはキャバ嬢に取らせたら死活問題なのではないか。
飲みに来るお客さんは、隙の多いメンタルアンバランスな女性の方がよかったのかもしれない。何が楽しくて達観して酔った人に説教でも始めそうな女性と飲まねばならないのか。
まぁ、マイさんの依存症治療が優先ということでいいか。
「じゃ次は私の盾を買いに行きましょう!」
アユミさんはマイさんの変貌ぶりには興味がなく、新調予定の盾に夢中だった。
貯まっていた魔石を換金し、アユミさんは比較的大きなカイトシールドを購入。マイさんは斬ることができる槍を、自分は刀をマイさんに渡してしまっているので手数の出せそうな短刀を2本買ってみた。
前に出るアユミさんの防具もなんとかしたいところだったが言葉が分からず断念した。
革鎧などはさすがにサイズ調整などですぐ持って帰るわけにはいかなかったのだ。
どのくらい時間かかるのかさっぱりだ。
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