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第45話 初見突破
しおりを挟む「敵影、冒険者なしで~す」
「音も匂いもありませんね」
マイさんとアイリさんは教えた通りに周囲の確認をしてくれていた。
9層。恐らく10層がボスであろうから、ここを越えればまたショートカットができて移動が楽になるかもしれない。そうあって欲しい。
ただ、広い。面積がではなく通路の幅も天井の高さも今までの階層の倍ほどある。幅4メートルくらいの高さも4メートルくらいか。嫌な傾向だ。飛行モンスターか巨大モンスターがでそうな予感だ。
慎重に索敵をしながら進むと、最初の行き止まりにそれはいた。
行き止まりの壁が崩れて現れたのは岩の巨人。短く太い足に、地面まで付きそうな長く太い腕。頭部と思われるものは存在していない3メートルはあろうかという人型。その太い腕で瓦礫を石つぶてのようにまき散らしながら這い出してきた。
「魔法矢、火属性魔法矢」
後ろに下がりながら手持ちの魔法で足を狙ってみるも効果が薄い。5センチ抉っているかどうかだ。
「挑発!」
アイリさんが敵の気を引きながら左側へ走り、マイさんが右へと走る。
「剣気迅動」
マイさんの加速と同時にギインと金属が弾かれた音が響き渡る。魔法で欠けた箇所を狙ったようだがこちらも厳しいようだ。両腕をハンマーのようにアイリさんに叩きつける巨人だが避けるのは今のところ何とかなっている。鈍重に見えるが飛び散る破片から速度はかなりのものだろう。
ただ、頭部もなく弱点らしきものがみつからない。
「片足破壊して撤退します!アイリさんはタゲ取ったままいけますか?」
目線を敵に固定したまま避けながら頷くアイリさん。ここは踏ん張ってもらうしかない。
「魔法矢、魔法矢、魔法矢」
巨人が動き回るせいで中々同じ場所に着弾しない。
今、自分は何発撃てる?
「魔法矢、魔法矢、魔法矢」
敵の攻撃後の硬直に合わせて魔法矢を連発していく。
後、何発で壊せる?
攻撃を避けているアイリさんだが飛び散る破片までは全て避け切れてはいない。血を流し、みるみるうちにボロボロになっていく。
「魔法矢、魔法矢、魔法矢」
限界まで撃ちまくるしかない。
悪くなっていく地面に足を取られ、体が流れて口が「あ」という形になったアイリさんと両手を振りかぶる巨人がスローモーションのようにゆっくりと見えた。
「迅動」
そう聞こえた時にはマイさんがアイリさんを抱きかかえて、敵の向こう側にいた。
「マイさん!」
「大丈夫!」
追撃しようと背中を見せた巨人には、あからさまな球が埋め込まれていた。
「魔法矢」
バキリと球が割れ、砂のように崩れていく巨人。
俺の脳裏にはレベルアップアナウンスが流れていたが安堵で座り込んでしまった。
「先生!」
「中治癒。アイリさん大丈夫ですか?」
「かすり傷です」
アイリさんに回復魔法を掛け、マイさんにアイリさんの血を拭ってもらう。
「ちょっと休憩しましょう。背中に弱点がありました」
「球ありましたね~。さっき気付きました~」
「盾役だと見えませんね」
横に腕を振り回してきていたらもっと早く見つけられたのだろうが縦の攻撃しかしてこなかった。でも仲間がいて余裕ができたのだから冷静に敵を観察することから始めていれば防げたことだ。今後の課題にしよう。
岩の巨人はあまり数がいなかったのもあり盾役のアイリさんには今回我慢してもらって、自分とマイさんのレベルを3上げて帰還した。
撤退を覚悟したりアイリさんが危ない目にあったりはしたが初めての初見突破だ。
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