異世界いっといれ 〜失業したので異世界行き来しながらスキルで稼ごうとしていたがキャバ嬢に主導権を握られている

nov

文字の大きさ
49 / 59

第49話 軽い立ち退き交渉

しおりを挟む
「引っ越し代の他に100万円ですよ。100万円。絶対、立ち退いた方がいいと思うなー。別段こんな賃貸の家に思い入れとかないでしょ?ラッキーですって」

「そう言われましても」

 夜になろうかという時間に突然訪れたのは、分厚い名刺に弁護士とあったが随分と軽薄そうな男だった。一人暮らし用の部屋の契約となっているので玄関先で一人で対応していたのだが肩透かしをくらった気分だった。こやつ……理詰めで説得してくるのかと思いきや弁護士のくせに金の話しかしない。

「貰えるものは貰える時にしっかり貰うのが賢い選択ですよ」

「はぁ」

「今時、ネットでもっといい家もすぐ見つかりますって。まずは行動です。機を見るに敏ですよ!」

「すいませんが引っ越す気はありません」

「そんなつれないことを言わずに考え直すべきですって。今だけですよ100万円」

「いえ、本当に引っ越すと困るので」

「しょうがないですねぇ。家主さんに立ち退き料の値上げ交渉してみますよ。でもあまりゴネられるとこちらにも考えがありますからね」

「はぁ。とりあえず立ち退きに応じる気はありません」

「……ご意向は伺いました。スケジュールがおしているので今日のところはこの辺で。それでは」

 それまでは貼り付けたような胡散臭い笑顔だったが表情が消え失せ、閉じられたドアの音の大きさが彼の不機嫌さを物語っていた。

 ちょっと前にアユミさんが連れてきてくれた弁護士さんによると、通常は半年1年は猶予を持たせて立ち退き交渉をするものでこんなに急かして立ち退きを迫るのはよっぽどの事態らしい。アユミさんの見立てでは実際に改装などを行うわけでもなく、揺さぶりやブラフに近いとのことだったが終始お金の話しかせず、どうせお金が欲しいんだろ的な上から目線の嫌悪感が凄い。話が通じない弁護士ってどうなんだ?


「どうでした?なんとなく聞こえていましたけど」

「なんか感じ悪そうな人っすねー」

「一方的に、ゴネて立ち退き料をせびる人認定された気がします」

 なんだか降って湧いた話でゴタゴタしてしまったので全員そろっての迷宮行きはなくなり、マイさんとアイリさんはお仕事に出掛けて行った。入れ替わりで今日の見張り当番はアユミさんとノアさんの色んな意味で比較的安心感があるお二人だ。

「もうちょっと揉めるか懐柔案があると思ったんですけどねぇ……」

「なんかの勧誘話みたいだったっす」

 思案顔のアユミさんと能天気なノアさんだが、一応アユミさんが連れてきてくれた弁護士さんと理論武装はしていたのだ。想定していた問答集のほとんどが特に使わなかっただけで。
 オーナーチェンジで改装するなどという理由だけで立ち退きを強要できるほど日本の法律は甘くなかった。たとえ裁判となろうが住んでいる人のほうが大分有利なのだ。それを事前に知れたのは気持ちの面で大きかった。

「じゃ早速9層行きましょう!」

 立ち退き話でうやむやになっていたがマイさんアイリさんと9層レベリングしたのが大層羨ましかったらしいアユミさんだ。

「いえ、その前に晩飯にしません?」

「そういえばお腹空いたっす!」

「晩飯前にと思ったんですけどしょうがないですねぇ。でも迷宮に潜るので軽めにしておきましょう」

 そんな朝飯前みたいに言われても同意しかねる。アイリさんは迷宮行きにノリノリなのだがノアさんはそうでもない様子なのだ。メンタル維持のためにも腹は満たさねばならぬ。

「軽め……なんかあったかな。素麺でいいです?」

 茹でるのに時間がかからず、めんつゆで手間なく食べれるのだが一回食べると存在を忘れてしまう素麺が棚に眠っていた。暑い夏にもらっても茹でるのがしんどいんだよね。そういえば動画サイトで焼き塩素麵レシピを見て作ってみようと思ってたんだった。

「なんでもOKっす!」

「茹でるだけですしね。すぐ出来ますしね!」

「異世界食材も使って焼き塩素麵にします」

「「おおー!」」

 なんだか盛り上がってきたので動画サイトを見ながらみんなで作ってみたのだが、物足りなくなってもう一回作って食べた。これは素麺を眠らせておくのはもったいない。保存もきくし買い溜めしておこうと心に誓った。

 ちなみに満腹まで食べたせいで全然軽くなかった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

処理中です...