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第55話 交渉人再び
しおりを挟む部屋に戻るとミーティは声を出しながらマイさんとひらがなの書き取りをしていた。
「おかえり~」
「オカリー」
なるほど順調そうだ。字を学ぶこともなかったのか楽し気に見える。勉強をがんばる良い子には美味いものを食わしてやらねばなるまい。
「晩御飯何にしますか?」
「買い出しに行ってくるっす!」
アイリさんとノアさんも飯を食わせる気に満ち満ちていた。護衛がどうこうの話になるので買い出しもお任せだ。異世界鳥肉はあるのでクリームシチューの具材をお願いした。
二人を送り出した後、クリームシチューも一人暮らししてから食べてないなと、こってりクリーミーなシチューに思いをはせているとインターホンが鳴った。
「オーナーと交渉してきました。立ち退き料が20万円アップの120万円です。どうです?この辺で首を縦に振ってみては?」
「いえ、ですから立ち退きには応じません」
軽薄な弁護士が再びやってきた。今日はスーツの女性も連れて二人でやってきていた。
「あまり強欲なのは良くないですよ。分かりました。私の独断になりますがもう10万円アップの130万円で決めましょう。いいですね?」
「いえ、何度も言っていますが……」
「いい加減にしてください!こちらにも考えがありますよ!」
「はぁ……」
今日も話が通じない。考えがあるならとっとと出して帰ってほしい。
「お待ちください」
スーツの女性がずいと前に出てきた。
「立ち退きの意思はないということでよろしいですか?」
「はい。何度も言っているのですが……」
「この下級市民風情が!強請るのも大概にしろ!」
弁護士を背中でガードしたスーツ女性の、冷ややかな視線がヒートアップしている弁護士に突き刺さっていた。
「黙りなさい。この度は大変失礼いたしました。後日改めて謝罪させていただきます。本日はこれにて失礼させていただきます」
外に出て再び深く下げているスーツ女性の頭の向こうでは顔色が悪くなった軽薄弁護士が見えたが、自分の知ったことではないのでとっととドアを閉めた。
「はぁ……」
「市議会議員秘書ですか、次はまともそうな感じですね」
「……だといいんですけど」
自己紹介でもらった名刺をアユミさんが確認する。興味もなかったので名前すら見ていなかった。気分の悪い人たちに関わるだけ時間の無駄だ。
女性陣が作ってくれた晩飯のクリームシチューはほっとする味がした。自分は米のご飯にかけて食べる派だったが、トーストをつけて食べる派が多数派だった。ミーティもパン派だ。飢餓状態からいきなり食べるとリフィーディング症候群で死亡するリスクもあるとネットで見ていたのだが心配なさそうで一安心だ。もりもり食べてほしい。
迷宮街へ行くのは少し時間を置くことにしたため、スキル取得はしばらくお預けだ。
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