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第一章 防衛省を揺るがす事件
第三部
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「新渡戸隊長」
私を呼ぶ声が聞こえた。この声は、杉田だ。
「そういえば、こんな大部隊で行くっていうインパクトで忘れていましたけれど、行方不明者捜索の災害派遣でしたよね?」
「その通り」
私は、食堂で頂いたコーヒーを飲みながら答える。
「ライトニングと、何とかって言う護衛艦は、海上で消えてますよね?」
「あー、そういえばそうだね」
ズズっと、コーヒーを飲む。熱くて火傷しそうだ。猫舌は辛い。
「なんで、海難者を陸上自衛隊が、更にこんな大部隊で救助しに行く必要があるんですか?」
………
言われてみればそうだな。私は今まで、実弾と装備を携行するという事だけを考えていた。しかし、杉田の言うとおりだ。
私は、コーヒーカップを近くのテーブルに置いた。
杉田達には言っていないが、海上に磁場の歪みを見つけた。そこに向かえ。そう、連隊長はおっしゃっていた。
だが、だが……そうだ。何故、海上の調査のために陸上自衛隊が出動しなければいけない。泳ぎだって、教育隊から水泳を訓練している海上自衛官のほうが断然上手い筈だ。陸地があるような海域に向かわないと陸上自衛隊の存在意義が分からない。
成り行きでここまで来てしまったが、疑問点が多すぎた。提起する気になればいくらだって出せるだろう。
しかも、遭難者を見つけたがための災害派遣ではない。
"磁場の歪みへと向かう"、という事を災害派遣という名目でこじ付けているだけだ。
何のために、磁場の歪みへと向かうのか。
何という皮肉かは分からないが、回答するはずの人がかなりの疑問に押しつぶされそうになっている。
「ありゃりゃ……新渡戸隊長が黙り込んじゃった。これは……国家、いや世界の陰謀なのか!!」
連隊長に聞きに行こう。
「あ! ちょっと! 新渡戸たいちょー!? ねぇ、無視ー?」
狭い艦内を歩いている。
「たいちょー……? 新渡戸隊長? にーとーべーさーん」
杉田はわざわざ、歩いている私の前に顔を出してきている。流石に鬱陶しい。
「杉田……何で、ついてきたの?」
「え……そりゃあ、暇……だから?」
杉田は、自分でも分かっていないような顔をして答える。
私は深いため息をついた。
もうこれ以上、厄介なことを持ちたくない。いや、厄介の塊を持ちたくない。杉田といると、何かと面倒なことが起こる。
私が着隊してからというもの、同性というだけでよく絡んでくる。その度に厄介ごとを生むという事は立証済みだ。
ほら。やっぱり。海上自衛官の二人組が、前に立ちふさがった。最近の自衛隊には、国防の意識を持ってないやつが多すぎる。いや、平和になったと言うべきか。
そもそも、私が言えた口じゃない……。
「そこのお嬢さん達」
「お、おじょ?!」
杉田は本気で動揺しているが、わざとのようにしか見えない。
意外とこういうことには慣れてないのかな?
「俺らが、艦内をくまなく案内してあげるけど……どう?」
全く。お前ら、いつのナンパ師だよ。
私は今、かなりの疑問で頭が痛くて、杉田がずっと喋ってるからストレスが溜まって………。
「あなたたち……階級は?」
「俺は二等海尉」
「海曹長」
「成程……」
私は、わざとらしく不敵な笑みを浮かべた。
「どうだ。意外と階級が高いだろう」
どうやら、相手方は気付いていないようだ。
「だったら……お前らに悲報だ」
「え?」
「あ?」
「この事は、艦長にでも伝えておこう」
二人組は固まった。
「この新渡戸愛桜二等陸佐、杉田一等陸曹にナンパした罰だ」
「二佐……に、二佐殿でしたか!! たたた大変! 失礼いたしました!」
「謝ったって、結果が変わるわけじゃない。ま、せいぜい次の転属で飛ばされないことを祈るんだな……あ、そもそも転属なんてしないかもね」
一人は、泣き目になっている。
「そ、それって……」
私と杉田は、それに答えることなくこの場を後にした。
……無駄な時間になってしまった。尉官までなって全く。そもそも、私って二等陸佐、佐官クラスに見えないのかな…
色々あったけど、取り敢えず本部管理中隊がいると思われる部屋に到着した。
四回ノックする。
「中央即応連隊第一中隊隊長、新渡戸愛桜二等陸佐。連隊長殿に用があって参りました」
ドアを開けると、
本部中隊の隊員たちが一瞬静まり、見合った。
そして、弾倉に弾を込めていた一人の隊員が他の隊員に聞いた。
「隊長は?」
「隊長は確か……艦長の所に行ったんじゃありませんでしたっけ?」
すぐに答えを出してくれたようだ。
だが、その事を私に伝えようとしてくれたのか、話し合っていた隊員の一人がこちらに向いた途端、喇叭の音が響いた。
この喇叭なら聞いたことがある。出港用意の合図だ。
《出港用意!!》
艦内放送も流れた。
《報せる。陸自中即連第一中隊長、施設中隊長、第十二特科隊第一射撃中隊長、第一戦車大隊第二戦車中隊第一小隊長は、士官室に集合せよ》
艦がゆっくりと動き始めたような気がしたとき、また艦内放送がなされた。
各隊を指揮する者を集めるようだ。ようやく、説明を受けることが出来るのかもしれない。
「召集がかかったようなので、勝手ながら失礼致します。ありがとうございました」
私は、脱帽時の敬礼を行い、退室した。
艦の内部は、狭いからか妙な圧迫感を覚える。ガスタービン特有の音も相まっている。頭の中のイメージとしてある産業革命、スチームパンクのようだ。
当然ながら、士官室が何処にあるのか分からない。私は、海上自衛官に場所を聞き、士官室へ向かった。
私を呼ぶ声が聞こえた。この声は、杉田だ。
「そういえば、こんな大部隊で行くっていうインパクトで忘れていましたけれど、行方不明者捜索の災害派遣でしたよね?」
「その通り」
私は、食堂で頂いたコーヒーを飲みながら答える。
「ライトニングと、何とかって言う護衛艦は、海上で消えてますよね?」
「あー、そういえばそうだね」
ズズっと、コーヒーを飲む。熱くて火傷しそうだ。猫舌は辛い。
「なんで、海難者を陸上自衛隊が、更にこんな大部隊で救助しに行く必要があるんですか?」
………
言われてみればそうだな。私は今まで、実弾と装備を携行するという事だけを考えていた。しかし、杉田の言うとおりだ。
私は、コーヒーカップを近くのテーブルに置いた。
杉田達には言っていないが、海上に磁場の歪みを見つけた。そこに向かえ。そう、連隊長はおっしゃっていた。
だが、だが……そうだ。何故、海上の調査のために陸上自衛隊が出動しなければいけない。泳ぎだって、教育隊から水泳を訓練している海上自衛官のほうが断然上手い筈だ。陸地があるような海域に向かわないと陸上自衛隊の存在意義が分からない。
成り行きでここまで来てしまったが、疑問点が多すぎた。提起する気になればいくらだって出せるだろう。
しかも、遭難者を見つけたがための災害派遣ではない。
"磁場の歪みへと向かう"、という事を災害派遣という名目でこじ付けているだけだ。
何のために、磁場の歪みへと向かうのか。
何という皮肉かは分からないが、回答するはずの人がかなりの疑問に押しつぶされそうになっている。
「ありゃりゃ……新渡戸隊長が黙り込んじゃった。これは……国家、いや世界の陰謀なのか!!」
連隊長に聞きに行こう。
「あ! ちょっと! 新渡戸たいちょー!? ねぇ、無視ー?」
狭い艦内を歩いている。
「たいちょー……? 新渡戸隊長? にーとーべーさーん」
杉田はわざわざ、歩いている私の前に顔を出してきている。流石に鬱陶しい。
「杉田……何で、ついてきたの?」
「え……そりゃあ、暇……だから?」
杉田は、自分でも分かっていないような顔をして答える。
私は深いため息をついた。
もうこれ以上、厄介なことを持ちたくない。いや、厄介の塊を持ちたくない。杉田といると、何かと面倒なことが起こる。
私が着隊してからというもの、同性というだけでよく絡んでくる。その度に厄介ごとを生むという事は立証済みだ。
ほら。やっぱり。海上自衛官の二人組が、前に立ちふさがった。最近の自衛隊には、国防の意識を持ってないやつが多すぎる。いや、平和になったと言うべきか。
そもそも、私が言えた口じゃない……。
「そこのお嬢さん達」
「お、おじょ?!」
杉田は本気で動揺しているが、わざとのようにしか見えない。
意外とこういうことには慣れてないのかな?
「俺らが、艦内をくまなく案内してあげるけど……どう?」
全く。お前ら、いつのナンパ師だよ。
私は今、かなりの疑問で頭が痛くて、杉田がずっと喋ってるからストレスが溜まって………。
「あなたたち……階級は?」
「俺は二等海尉」
「海曹長」
「成程……」
私は、わざとらしく不敵な笑みを浮かべた。
「どうだ。意外と階級が高いだろう」
どうやら、相手方は気付いていないようだ。
「だったら……お前らに悲報だ」
「え?」
「あ?」
「この事は、艦長にでも伝えておこう」
二人組は固まった。
「この新渡戸愛桜二等陸佐、杉田一等陸曹にナンパした罰だ」
「二佐……に、二佐殿でしたか!! たたた大変! 失礼いたしました!」
「謝ったって、結果が変わるわけじゃない。ま、せいぜい次の転属で飛ばされないことを祈るんだな……あ、そもそも転属なんてしないかもね」
一人は、泣き目になっている。
「そ、それって……」
私と杉田は、それに答えることなくこの場を後にした。
……無駄な時間になってしまった。尉官までなって全く。そもそも、私って二等陸佐、佐官クラスに見えないのかな…
色々あったけど、取り敢えず本部管理中隊がいると思われる部屋に到着した。
四回ノックする。
「中央即応連隊第一中隊隊長、新渡戸愛桜二等陸佐。連隊長殿に用があって参りました」
ドアを開けると、
本部中隊の隊員たちが一瞬静まり、見合った。
そして、弾倉に弾を込めていた一人の隊員が他の隊員に聞いた。
「隊長は?」
「隊長は確か……艦長の所に行ったんじゃありませんでしたっけ?」
すぐに答えを出してくれたようだ。
だが、その事を私に伝えようとしてくれたのか、話し合っていた隊員の一人がこちらに向いた途端、喇叭の音が響いた。
この喇叭なら聞いたことがある。出港用意の合図だ。
《出港用意!!》
艦内放送も流れた。
《報せる。陸自中即連第一中隊長、施設中隊長、第十二特科隊第一射撃中隊長、第一戦車大隊第二戦車中隊第一小隊長は、士官室に集合せよ》
艦がゆっくりと動き始めたような気がしたとき、また艦内放送がなされた。
各隊を指揮する者を集めるようだ。ようやく、説明を受けることが出来るのかもしれない。
「召集がかかったようなので、勝手ながら失礼致します。ありがとうございました」
私は、脱帽時の敬礼を行い、退室した。
艦の内部は、狭いからか妙な圧迫感を覚える。ガスタービン特有の音も相まっている。頭の中のイメージとしてある産業革命、スチームパンクのようだ。
当然ながら、士官室が何処にあるのか分からない。私は、海上自衛官に場所を聞き、士官室へ向かった。
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