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第三章 自衛隊の在り方(前)
第一部
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「うぁぁぁぁあああああ!!!」
目が覚めた。平時であれば、起床喇叭が鳴らされていないのに上体を起こすのは御法度だ。
「あ……うぁ゛……」
苦しみの中、漏れ出た声が響いている。察するに、誰かが何かしらの被害を被ったのだろう。
この状況、流石に平時とは言えないであろう。
私が葛藤の末、起き上がろうと決意した瞬間、壁外駐屯地に甲高い笛の音が響いた。高いが故、響いた。
「北門に敵襲!!」
誰かの、腹から出した声が嫌でも耳に入ってきた。この台詞、映画でしか聞いたことが無い。
「新渡戸さん……」
杉田も起きたようだ。か細い声で、私の苗字を言った。
すると、電話のベルが鳴った。一人でも幹部が居る部屋には必ず設けるようにした、連絡用有線内線電話だそうだ。
掛け布団を無造作に捲って起き上がり、受話器を取った。
「混成団本部。第一中隊長を願う」
「中隊長です」
混成団本部から、私宛に電話のようだ。
「混成団長より、第一中隊の部隊展開命令。北門半包囲掩体壕に展開と暫定。送れ」
「展開、了解。非常呼集はしたか?同時に、現状の掌握がしたい。送れ」
「間もなく、非常呼集の吹奏を行う。今、北門に負傷者有りの報告。その確認の為、普通科警衛を先遣。並びに警衛当直であった90式戦車が駐屯地外に前進し、斥候の任に就いている。尚、敵情は現在も掌握していない。送れ」
「了解。感謝する。終わり」
受話器を戻した。
程無くして、どこからか非常呼集の喇叭が吹奏された。
訓練でしか聞いた事の無い喇叭。まさか、実戦で、しかも襲撃を受けた上で聞く事になるとは……。
戦闘服に着替える十数秒。
さっき聞いた情報を整理すると、まず最悪なのが敵情が不明だという事。そして、やはり北門に負傷者が存在する。彼らの救出の為、フル装備で一日中待機している警衛が出向いた。他にも警衛部隊に配属されていた90式戦車……果たして、防衛省が異世界なんていう危険な場所に高価でハイテクな物を寄越すのか?
私はまだ腑に落ちないが、着替え終わったので、非常時の集合場所に向かった。基本的には、異世界とか関係無く駐屯地には非常時における集合場所が決まっている。ただ、非常呼集喇叭を吹奏されるだけでは何処に集まったら良いのか分からないから、いちいち伝える必要がある。非常に非効率的、無駄。
ここ、壁外駐屯地の集合地は、二棟の隊舎に挟まれた駐車場だ。
「新渡戸さん!」
廊下を走りながら、杉田が私を呼んだ。何事かと、進行方向を向きながら返事をした。
「何処に集合でしたっけ?!」
はぁ……こういう馬鹿がいるから、困る。だから、訓練をおざなりにしてはいけないのだ。
馬鹿の杉田と共に外に出た。二棟の隊舎は、向かい合う形で出入口が設けられている。
私は集まりつつあった第一中隊と向き合った。
少しして、先月から駐屯地に待機していた先任上級曹長が隣に来た。宇野興太陸曹長だ。指揮経験が断然薄い私を補佐して下さる。
「新渡戸中隊長。あんたがしっかりと意識を持たな、隊が乱れることになりますからね」
「承知しています」
宇野陸曹長の方言が抜けきらない助言は、いつも簡潔で初歩的ではあるが重要な事だ。
「全隊、揃いました」
宇野陸曹長が言った。
同時に、後方支援隊の73式中型トラック、通称中トラも到着したようだ。中トラには、小銃や無反動砲等の火器が積載されている。
部隊の戦闘力には、勿論、小銃や装甲車等の兵器、そもそもの隊員の数といった有形的要素も然る事ながら、隊員の精神面や指揮官への忠誠心、そして士気といった無形的要素も関係してくる。
指揮官や上官の訓示等は、決してその者の欲求を満たす為のものでは無いのだ。
「これから、先の戦闘とは比にならない命のやり取りが予想される。教練を思い出せ!恐れるな!以上解散!以後、小隊長統制とするが、別命あるまで待機。無線で各小隊に作戦を伝達する。留意せよ!」
隊員達は、二度目の戦いを前にしても神経質にはならず、相変わらずの返事をしてくれた。
正直、襲撃と知らされて、みんなが死への恐怖に支配されていたらどうしようと、逆に私が神経質になっていた。けど、この反応を見る限り、信用してもよさそうだ。
教練の通りに。敵なんかに恐れちゃ駄目。
後方支援隊から私は、9mm機関拳銃とそれの予備弾倉等を受け取り、装備を整えた。今夜の銃は、いつも以上に重い。
後方支援隊からの銃器受け取りが進む中、ビルブァターニ派遣隊に完全配備された広域多目的無線機、通称広多無に通信が入った。私に渡ったのは携帯用Ⅰ型、つまり背負い式の無線機だ。
「こちらHQ、第一中隊長。送れ」
「HQ、送れ」
すぐさま応答した。
連絡先は「HQ」、本部である。自体が急すぎてまだ戦闘指揮所が開設されていないのであろう。暫くは混乱が続きそうだ。
「巻口だ。第一中隊は、駐屯地を防衛せよ」
作戦における重要な『目的』が示された。
「尚、敵情は不明。よって、北門半包囲掩体壕に前進しつつ敵情把握に努めよ。見付け次第、情報の共有を行うこと、並びに前進の可否を中隊長統制とする」
そして『目的』を達成する為の『目標』だ。戦いは、この2つが明確でないと勝つ事はまず無いという事は歴史が証明している。
「第一中隊長、了解。下達する」
駐屯地を防衛する為、敵兵が何処に散布するのかを確認、その後にHQ、若しくは戦闘指揮所が戦術の判断を行う。
目が覚めた。平時であれば、起床喇叭が鳴らされていないのに上体を起こすのは御法度だ。
「あ……うぁ゛……」
苦しみの中、漏れ出た声が響いている。察するに、誰かが何かしらの被害を被ったのだろう。
この状況、流石に平時とは言えないであろう。
私が葛藤の末、起き上がろうと決意した瞬間、壁外駐屯地に甲高い笛の音が響いた。高いが故、響いた。
「北門に敵襲!!」
誰かの、腹から出した声が嫌でも耳に入ってきた。この台詞、映画でしか聞いたことが無い。
「新渡戸さん……」
杉田も起きたようだ。か細い声で、私の苗字を言った。
すると、電話のベルが鳴った。一人でも幹部が居る部屋には必ず設けるようにした、連絡用有線内線電話だそうだ。
掛け布団を無造作に捲って起き上がり、受話器を取った。
「混成団本部。第一中隊長を願う」
「中隊長です」
混成団本部から、私宛に電話のようだ。
「混成団長より、第一中隊の部隊展開命令。北門半包囲掩体壕に展開と暫定。送れ」
「展開、了解。非常呼集はしたか?同時に、現状の掌握がしたい。送れ」
「間もなく、非常呼集の吹奏を行う。今、北門に負傷者有りの報告。その確認の為、普通科警衛を先遣。並びに警衛当直であった90式戦車が駐屯地外に前進し、斥候の任に就いている。尚、敵情は現在も掌握していない。送れ」
「了解。感謝する。終わり」
受話器を戻した。
程無くして、どこからか非常呼集の喇叭が吹奏された。
訓練でしか聞いた事の無い喇叭。まさか、実戦で、しかも襲撃を受けた上で聞く事になるとは……。
戦闘服に着替える十数秒。
さっき聞いた情報を整理すると、まず最悪なのが敵情が不明だという事。そして、やはり北門に負傷者が存在する。彼らの救出の為、フル装備で一日中待機している警衛が出向いた。他にも警衛部隊に配属されていた90式戦車……果たして、防衛省が異世界なんていう危険な場所に高価でハイテクな物を寄越すのか?
私はまだ腑に落ちないが、着替え終わったので、非常時の集合場所に向かった。基本的には、異世界とか関係無く駐屯地には非常時における集合場所が決まっている。ただ、非常呼集喇叭を吹奏されるだけでは何処に集まったら良いのか分からないから、いちいち伝える必要がある。非常に非効率的、無駄。
ここ、壁外駐屯地の集合地は、二棟の隊舎に挟まれた駐車場だ。
「新渡戸さん!」
廊下を走りながら、杉田が私を呼んだ。何事かと、進行方向を向きながら返事をした。
「何処に集合でしたっけ?!」
はぁ……こういう馬鹿がいるから、困る。だから、訓練をおざなりにしてはいけないのだ。
馬鹿の杉田と共に外に出た。二棟の隊舎は、向かい合う形で出入口が設けられている。
私は集まりつつあった第一中隊と向き合った。
少しして、先月から駐屯地に待機していた先任上級曹長が隣に来た。宇野興太陸曹長だ。指揮経験が断然薄い私を補佐して下さる。
「新渡戸中隊長。あんたがしっかりと意識を持たな、隊が乱れることになりますからね」
「承知しています」
宇野陸曹長の方言が抜けきらない助言は、いつも簡潔で初歩的ではあるが重要な事だ。
「全隊、揃いました」
宇野陸曹長が言った。
同時に、後方支援隊の73式中型トラック、通称中トラも到着したようだ。中トラには、小銃や無反動砲等の火器が積載されている。
部隊の戦闘力には、勿論、小銃や装甲車等の兵器、そもそもの隊員の数といった有形的要素も然る事ながら、隊員の精神面や指揮官への忠誠心、そして士気といった無形的要素も関係してくる。
指揮官や上官の訓示等は、決してその者の欲求を満たす為のものでは無いのだ。
「これから、先の戦闘とは比にならない命のやり取りが予想される。教練を思い出せ!恐れるな!以上解散!以後、小隊長統制とするが、別命あるまで待機。無線で各小隊に作戦を伝達する。留意せよ!」
隊員達は、二度目の戦いを前にしても神経質にはならず、相変わらずの返事をしてくれた。
正直、襲撃と知らされて、みんなが死への恐怖に支配されていたらどうしようと、逆に私が神経質になっていた。けど、この反応を見る限り、信用してもよさそうだ。
教練の通りに。敵なんかに恐れちゃ駄目。
後方支援隊から私は、9mm機関拳銃とそれの予備弾倉等を受け取り、装備を整えた。今夜の銃は、いつも以上に重い。
後方支援隊からの銃器受け取りが進む中、ビルブァターニ派遣隊に完全配備された広域多目的無線機、通称広多無に通信が入った。私に渡ったのは携帯用Ⅰ型、つまり背負い式の無線機だ。
「こちらHQ、第一中隊長。送れ」
「HQ、送れ」
すぐさま応答した。
連絡先は「HQ」、本部である。自体が急すぎてまだ戦闘指揮所が開設されていないのであろう。暫くは混乱が続きそうだ。
「巻口だ。第一中隊は、駐屯地を防衛せよ」
作戦における重要な『目的』が示された。
「尚、敵情は不明。よって、北門半包囲掩体壕に前進しつつ敵情把握に努めよ。見付け次第、情報の共有を行うこと、並びに前進の可否を中隊長統制とする」
そして『目的』を達成する為の『目標』だ。戦いは、この2つが明確でないと勝つ事はまず無いという事は歴史が証明している。
「第一中隊長、了解。下達する」
駐屯地を防衛する為、敵兵が何処に散布するのかを確認、その後にHQ、若しくは戦闘指揮所が戦術の判断を行う。
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